「ありがとう ありがとう」と何度も何度も繰り返す妻


呼吸をするのも苦しいはずなのに


何で今言うのだろうと思い


「うんうん 喋らなくても大丈夫だよ」


そんな会話をした1時間後 彼女は息を引き取った


 2021年10月3日 AM4時32分


いつかはこの時が訪れると覚悟はしていた



子宮平滑筋肉腫 ステージⅣb


完治する癌ではなかった


いい状態を保ちながら寿命を伸ばす


そんな絶望的な告知を受けたのがちょうど1年前だった


3回の手術


過酷な抗がん剤治療


といっても治る訳では無いので延命治療と言った方がいいのかも


床にしゃがみ込み抜けてしまった髪の毛を拾いながら


「抜けちゃったなぁ」とポツリ


その姿は見ていられないほど辛かったが一緒に抜け落ちた髪の毛を泣きながら拾った


それでも抗がん剤の副作用の影響が弱まった時期には外に散歩に連れ出したりして、日常と同じような過ごし方をした日も多々あった


近所の公園 何の変哲もない住宅街を数十分歩いてるだけなのに一緒にいられる時間がとても愛おしく また心を穏やかにさせた


旅立つ2ヶ月前 3度目の手術の後


もう治療は辞めたい 辛い思いをしてこの先何があるのだろうと そして身辺整理をしたいと


「いろいろやってくれたのにごめんね」


「生きているというよりただ生かされている」


「もう限界なんだよ」 と



在宅医療を始めて1ヶ月


君は逝ってしまった


ありがとうの言葉を残して



オレからも伝えよう



ほんとに今までありがとね