モノと花火と観覧車 -2ページ目

酒のつまみになるライター

モノ選びをする際、

そのモノを眺めながら酒が飲めるかどうか、

いうなれば、そのモノ自体が酒のつまみになるかどうか、それは1つのポイントになるかもしれない。


例えば車好きなら、自分の愛車を眺めながら酒を飲めるという方も多いだろう。

カメラ好きなら、愛機の手入れをしながら酒が飲めるだろう。

私の趣味の分野であれば

靴なら、オールデンのコードバンに刻まれたシワや、エドワード・グリーンのストレートチップの磨き込まれた爪先を眺めながらとか

時計なら、ベルアンドロスの重量感あるフォルムやIWCの腕時計の秒針の動きを眺めながら

デニムジャケットなら、LeeストームライダーのLee独特の青への移り変わりを眺めながら

そして、

レザージャケットの革の馴染み具合いや、カシミアセーターの経年変化した柔らかな風合いを眺めながら

とかしながら飲む酒は、いつもの店で飲む酒とはひと味違うと感じることもあるだろう。


私が持っているもう20年以上使っているデュポンのライター、

これも個人的につまみになるライターだ。


私は、このライターを磨きながら、キズの一つ一つを

「あぁ、このキズはあの時についたヤツだな…」

などと古い記憶を辿りながら飲むのは、自分なりの一人の時間の楽しみ方なのだ。





男の鞄について

男の鞄、とくに仕事以外で使う鞄はなかなか難しい。


カッコよくて機能的で、スーツの時もジーンズの時もスウェットの時も短パンの時も、バイクに乗る時もクルマの時も、どんなシーンにでも合う鞄となると1個の鞄で賄えるはずはないだろう。


私も、妻に負けないくらいの数の鞄が家にある。


そんな数々の鞄の中で今1番活用しているのは、

コレだ・・・


VANの紙袋・・・ではなく、

表面は特殊な加工をされ、裏にはナイロンの生地がはられてある れっきとした紙袋風の鞄だ。

ちょうど私が生まれた頃の1960年代の日本では、
「アイビー」とか「みゆき族」とか、それがどんなものかちゃんとは知らないが、
その頃のファッションとして、VANの紙袋を小脇に抱えるスタイルが流行っていたそうな。

その紙袋を現在のVANが、れっきとした鞄として復刻したのがコレだそう。

私はVANの世代ではないし、VANの商品を買うのはこれが初めてだ。
たまたま妻の買い物に付き合ってデパートを歩いていた時に通りかかったVANのショップにディスプレイされていたこの鞄に一目惚れして購入したのだが、
この鞄、カジュアル全般になんとなく似合うような気がしている。

ビシッと決めた時のスーツには厳しいが、バンソンのライダースにも、マクレガーのドリズラージャケットにも、フランクリーダーのジャケットにも、ニードルスのトラックジャケットやトラックパンツにも、イートウツのワイドパンツにも、軍パンやジーンズにも、
なんとなく似合うような気がしている。

まあ自分で思っているだけで、誰にも言われたわけでないから「知らんけど」と付け加えておこう。


ベスパでしか見れない風景

元号が昭和から平成になってすぐの頃、

22歳の私が買った白いベスパ100ヴィンテージは、それから30年以上の月日が流れた今も我が家のガレージにいる。


それだけを聞けば、

そのベスパは私の人生の相棒のバイクとなった

と思われるかもしれないが、

そのベスパの総走行距離は、

現在僅か7500キロ。


新車で買ったときからトラブル続きで

その大半をガレージの中で不動車として過ごしてきた。


今のバイク屋にお世話になり始めた8年前から、ようやくまともに動くようになった。


そのバイク屋に通い始めた頃の私は

バイク屋のオヤジに嫌われていたように思う。

人間よりもバイクが好きなオヤジは、

動かないベスパを汚れたまま放ったらかしにしていた私を客として扱ってくれなかった。


最初は、とにかく無愛想で怒ったように接客された。

しかし、

バイクだけは好きなオヤジは、私のベスパを丁寧に修理してくれた。


それからも何度もバイク屋に通った私に、徐々にオヤジは心をひらいてくれた。


どんなに古いバイクでもピカピカにしないといけない、人間はケガしてもバイクは壊すな

そう考えているオヤジは、私にバイクの磨き方から塗装、手入れの仕方、修理の仕方など色々教えてくれた。

そして、

こんな話もしてくれた・・・


「ベスパには、ベスパでしか見れない風景がある。」


私はオヤジに、

「その風景は、どうしたら見れるの?」

と尋ね返した。すると、


「ここから琵琶湖まで走れば見れる。」



あれから数年、

片道70キロ離れた琵琶湖までベスパで走る機会はなかった。

そして私も50代後半になり、このまま又数年がすぎればベスパで琵琶湖なんて気力はなくなるのではないか・・・

そう思った私は、去る11月3日一念発起して琵琶湖まで走ることにした。


当日は、日本晴れでほぼ無風の最高のバイク日和

午前10時に出発。

梅田から国道1号線をひたすら東に走った。


ベスパ100ヴィンテージは、アクセルを回し続ければ最高速は70キロ以上出る。

しかし、そのスピードを出すと前後ドラムブレーキのベスパ100ヴィンテージはなかなか止まれない。

だから50キロでゆっくり左側車線を走った。


出発からおよそ3時間後

琵琶湖に到着した。


私の目に見えたベスパからの琵琶湖は、

乗用車で見る琵琶湖と何も変わらなかった・・・


私は、蕎麦屋で蕎麦を食い

ベスパでしか見れない風景が何なのかわからないまま帰路についた。


再び1号線を今度は西に向かう。


京都市内を過ぎ、京都府から大阪府に変わる頃、

晴天の空にあった太陽は斜め45度のあたりで徐々に夕日に姿を変えようとしていた。


私を乗せたベスパ100ヴィンテージが、その穏やかな秋の太陽に包まれた時、

国道の両側には田園風景が広がるそんな場所で、

私は「ベスパでしか見れない風景」を見たような気がした。


それは、

ベスパの低い限界性能でのロングドライブの不安感と、あの独特の揺れ、音、匂いの中で見た風景、

それこそが、他の乗り物では味わうことのできない風景

そう感じたのだ。


完全に日が沈んだ午後6時過ぎ、 ベスパ100ヴィンテージは我が家のガレージに私を連れて帰ってくれた。


私の見た風景が

バイク屋のオヤジが言う風景だったかどうか、

それはオヤジに答え合わせをしてもらわないでおこうと思う。

間違えていたらイヤだから。