眠れずに
机を鳴らす指先も
少し遠慮の大部屋の夜


  ゆるゆると流れる時間
  ただただに落ちる滴を数えるばかり


    浮き世との隔壁なのか
    ベージュ色薄いカーテン風も通らず


熱もなく痛みもなしに横たわる
吾が内臓は静かに病める


  薄く見る天井の影問うてみる
  なにが平常
  どれが日常


    唄えども声にならざり風に消ゆ
    また諦めが枯葉と去りぬ


喧騒はノイズとなりて吾残し
ただ往き過ぎて点景となる


  身の内は見えぬが故の夢現(ウツツ)
  希望の置き場探し彷徨う


    足元の悪さに焦り立ち止まる
    己知らずの望みが過ぎて


下り坂
転げて落ちる病坂
往き着く処
まだ先であれ


  さらさらと濡らす雨緑色
  雪となるのか夕雲はグレイ


    時折に覗く青空くすんでも
    やがての春よ
    いずこに潜む


見下ろせば一夜で白くなりにける
弥生三月名残の雪か


  暖かい冬とはいえど冬は冬
  息白くなる
  降る時は降る


    数えれば
    月を跨いで四十日(シジュウニチ)
    未だ溜め息は病床にあり