1991年、日本のヒューマンドラマ映画。

監督・主演は竹中直人。

竹中直人の初監督作品である。

 

主人公の助川助三(竹中直人)は、かつてはそれなりに名の知れた漫画家であった。だが近年は仕事も減り、たまに執筆の依頼が入っても、自ら「芸術漫画家」を自称しているプライドがあるため、断り続けている貧乏な日々を送っている。

 

妻のモモ子からは漫画を描けと時になじられるが、助川は全く描こうとはしない。

 

そこで助川は漫画以外の新たな道を模索するが…。

 

つげ義春の原作がモチーフとなっているが、つげの他の作品「退屈な部屋」「日の戯れ」などが、助川夫妻の過去のエピソードとして使用されている。

 

ナレーションは竹中直人によるもので、最後に「僕、無能ー!」と素っ頓狂に叫ぶのも特徴。映画内容は原作を忠実に再現することにこだわり、これにはつげ本人も相当驚いていたという逸話が残る。

 

竹中直人は、大好きな役者の一人である。

というか、「怒りながら笑う男」や、その他の奇抜な笑いで「この人は一体?」という感じであった。

その竹中が、監督をするというので、一人で盛り上がっていた。

 

蓋を開けてみると、想像以上に面白かった。

ボクにはストライクど真ん中であった。

 

今でも、

・採石した石を抱えオークションに参加するが、結局石はひとつも売れず、家族で絶望する。

・知人の鳥屋のおやじは、飼育の難しい和鳥のみを扱っている。そして助川はその鳥屋の話を鵜呑みにして、「鳥師」として夜に実際に羽ばたく。

・偶然立ち寄った骨董屋で見つけた壊れたカメラを修理したところ思わぬ高値で売る事ができた。これに味を占めた助川は妻の不安をよそに中古カメラの販売を始める。

などなどの「無能の人」の姿が目に浮かぶ。

 

いやぁ〜、当時は笑ったり感動したりだったが、今では自分を映画にしたような気がしてきた。

ボクも「無能の人」だったようだ。

 

星5つ満点で4はあげても良い映画だったと思う。