2019年、「男はつらいよ」の記念すべき50作目で最終話。
監督は山田洋二。
出演は、吉岡秀隆、渥美清、倍賞千恵子、前田吟、後藤久美子、浅岡ルリ子など。
吉岡秀隆を最初に書いたのは、訳がある。
満男(吉岡秀隆)がストーリーの軸になってから、この映画が跳ねたからだ。
つまり、レベルが格段に上がったのである。
「寅さん」ファンに怒られそうであるが、ボクもファンである。
しかし、満男が恋に悩み、生きることに苦しむ姿を、誰しもが自分に投影し、涙するのは、横にいる「寅おじさん」が一言だけ言ってくれるという凄い存在だからである。
例えば、「男はつらいよ 寅次郎物語」のラストシーン。
見送りに来た満男に、寅さんは参考書でも買えと千円札数枚を渡し、カバンを受け取る。
満男 「おじさん」
寅 「何だ?」
満男 「人間てさ」
寅 「人間? 人間どうした?」
満男 「人間は何のために生きてんのかな?」
寅 「何だお前、難しいこと聞くなあ、ええ?」
寅、しばし考える。
寅 「うーん、何て言うかな。ほら、ああ、生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない、ね。そのために人間生きてんじゃねえのか」
満男 「ふーん」
寅 「そのうちお前にもそういう時が来るよ、うん。まあ、がんばれ、なっ」
話を戻そう。
この「お帰り 寅さん」では、オープニングを桑田佳祐がカバーしているのが映る。
ここでもう、ヤラレタ人も多いのではなかろうか。
イズミちゃんと満男の空港での別れのシーンでは、2人はキスをする。
しかし、その流れが自然で、がんばれっという気持ちになる。
ちなみに、寅さんに新しいカットは出てこない。
想い出のシーンとして、登場するのである。
この映画、長男と2人で観にいった。
当時は女房とも別れており、気を遣った長男は付き合ってくれたのだろう。
寅さんの言う通り、いいことがあったという想い出である。