2021年、アメリカ、フランス、カナダのカミング・オブ・エイジ映画。

 

主人公は家族の中で自分だけが聴覚のある女子高生で、漁業の仕事を手伝いながら歌手になるという夢を持つ。

 

女子高校生のルビー・ロッシは漁師の家に生まれ、朝3時に起床して父や兄と漁船で海に出る日々を過ごしていた。

ルビーの家族は全員が聾唖者で、一人だけ耳が聞こえるルビーは、幼い頃から家族の通訳として欠かせない存在だった。

 

音楽教師のヴィラロボスはルビーの才能に気づき、奨学金を得てバークリー音楽大学に進む道を勧めた。

 

発表会でデュエットを組む予定のマイルズとも親しくなるルビー。だが、同じ頃に家族は、搾取する仲買人から離れて魚を売るために、新事業を起こそうとしていた。通訳としてますます家族に頼られるルビー。

 

通訳の仕事と音楽のレッスンの両立が図れず悩むルビー。マイルズとデートする時間も欲しい。ある朝ついに、無断で漁を怠けてしまうルビー。だが、聾唖者だけで出漁した父と兄は沿岸警備隊に通報され、罰金の上に、必ず聴者を乗船させるよう命令を受けてしまった。悩んだ末に進学を諦めるルビー。

 

合唱サークルの発表会に参列するルビーの家族。ルビーは見事な歌声を披露するが、家族にそれは聞こえない。しかし、ルビーの思いを汲み取った父フランクは、ルビーをバークリー音楽大学の試験会場に送り届けた。家族の為に手話を交えて歌うルビー。試験に合格したルビーを、家族は笑顔で大学生活へと送り出すのだった…

 

ルビーが、発表会で歌うシーンがある。

そのシーンが、聞こえない家族の立場にたった「音」で我々の心を突き刺す。

つまり、無音なのだ。

 

しかし、彼女の歌声はシッカリとハートに響くものであった。

そう、素晴らしかったのだ。

 

この映画、話題が話題を呼び、数々の賞を受賞し、遂にはアカデミー賞の作品賞・脚色賞・助演男優賞を受賞した。

 

しかし、「聴覚障害者の表現の向上に貢献するという意味でこの映画の存在に興奮し、可能ならば更に良い表現のための機会が増えて欲しい」と述べつつ、「映画が聴覚障害者とコーダの経験をいかに否定的に描写しているかに非常に不安を感じた」と評した評論家や聴覚障害者がいることも忘れてはならない。

 

こういう映画、必ずやイチャモンつける人がいる。

しかし、多くの賞をゲットした時点で、この作品を制作した人の勝ちである。

 

いい映画であった。