2021年作品。シアン・ヘダーという女性監督作品。

アカデミー賞の作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門にて受賞された、名画である。

 

女子高校生のルビー・ロッシは漁師の家に生まれ、朝3時に起床して父や兄と漁船で海に出る日々を過ごしていた。ルビーの家族は全員が聾唖者で、一人だけ耳が聞こえるルビーは、幼い頃から家族の通訳として欠かせない存在だった。

 

歌うことが大好きで、高校の合唱サークルに入るルビー。音楽教師のV先生はルビーの才能に気づき、奨学金を得てバークリー音楽大学に進む道を勧めた。

 

発表会でデュエットを組む予定のマイルズとも親しくなるルビー。だが、同じ頃に家族は、搾取する仲買人から離れて魚を売るために、新事業を起こそうとしていた。通訳としてますます家族に頼られるルビー。

 

通訳の仕事と音楽のレッスンの両立が図れず悩むルビー。マイルズとデートする時間も欲しい。ある朝ついに、無断で漁を怠けてしまう。だが、聾唖者だけで出漁した父と兄は沿岸警備隊に通報され、罰金の上に、必ず聴者を乗船させるよう命令を受けてしまった。悩んだ末に進学を諦めるルビー。

 

合唱サークルの発表会に参列するルビーの家族。ルビーは見事な歌声を披露するが、家族にそれは聞こえない。しかし、ルビーの思いを汲み取った父フランクは、ルビーをバークリー音楽大学の試験会場に送り届けた。家族の為に手話を交えて歌うルビー。試験に合格したルビーを、家族は笑顔で大学生活へと送り出すのだった…

 

この映画、実は金曜ロードショーというテレビ番組で放映されていた。もちろん観なかったのだが、ある程度数字の取れる映画を放映するのはやむを得ないと思うのだが、それにしてもコンテンツを選んでほしい。

 

映画館では、ルビーの発表会での歌声が聞こえないシーンを、延々と無音で表現していた。凄くシーーーンとしており、聾啞者の「聞こえない」が切実に伝わってきた。

 

「シーーーン」が悪いことばかりではないのは、この映画を映画館で観た人は分かってくれると思う。

しかし、テレビで観た人には、きっと分かってもらえない。

テレビでも分かるという人の「分かる」とは、映画館で観た人とは「違う」のである。

 

この「違う」が、映画館で「観た」というライブ感かも知れない。