今日のテーマは
『上方落語巡礼記』
今回紹介する上方落語に縁の地は。
「天王寺」
上方落語を紹介していて、天王寺という地名が出てこない噺の方が少ないですね(´•ᴗ• ก )՞ ՞。
それくらい大阪を代表する場所です。
今まで取り上げなかったのは 、色々ありすぎて迷ってました。
沢山ある天王寺の話の中で一番代表的なのは、やはり『天王寺詣り』でしょう。
大変な「愛犬落語」になってます。
今日はブログ五年目を迎えたということで、とっておきの人情噺を紹介します。( ᴖ ·̫ ᴖ )
三代目桂米朝作の『一文笛』です。
本当は文字起こしにしたいですが、頑張って粗筋にまとめてみました💦。
桂ざこば師匠が演じながら男泣きしたあの噺です… :(˘•̥ㅁ•̥˘ ):。
。。。。。。
『一文笛』
天王寺さんへ参拝へ向かう商家の旦那が、西門近くの茶店でスリの秀(ひで)から声を掛けられる。
秀
『お願いがございます。あんさんの提げているいる煙草入れを十円で譲っていただけまへんやろか……』
スリの仲間のサブが煙草入れを狙ってつけていたが抜き取る隙がなく、あきらめて抜き取る権利を仲間の辰(たつ)に一円で売った。
辰も抜き取れずに権利を二円で隼(はやぶさ)に売った。
隼も煙草入れを抜き取れずに秀が三円で権利を買ったという。
旦那
「へえ~、そういう事もあるんかいな」
驚き半分、感心半分。
『わしも旦那の後をつけて合邦辻(がっぽうがつじ)、逢坂とやって参りましたが、なぜか旦那の身体には隙がおまへん。
天王寺さんへ入られたらもう抜き取ることもできないと思うてここでお声をお掛けしました。仲間たちが抜き取れなかった煙草入れを見せて自慢してやりたいと、こんなお願いを・・・』
すっかり秀の話を信じ、自分には隙が無いとスリまでに褒められた旦那は気分もよく、
「折角打ち明けてくれはったんやさかい、ほな十円で買うてもらいまひょ」
と秀から十円もらって懐から財布を取り出して中に収めた。
『こういう話は、どうぞご内聞に・・・おおきにありがとさんで・・・さいなら』
と立ち去った。
「・・・不思議なことがあるもんやな、何人ものスリがわしの腰の物を抜けんとは、まあ悪い気もせんな。あんな古い煙草入れが十円になったし・・・」
と、何気なく懐に手をやると財布がない。
もう後の祭り、煙草入れも財布も盗まれてしまった。
『・・・これがスリの兵法、戦術、極意、芸術や。
重要無形文化財、人間国宝もんやで・・・」
と、自慢たらたらで、ペラペラと喋っていると、今は堅気になっている兄貴分がやって来た。
兄貴分
「お前さっきから偉そうなことばかり言っているようだが、なんで角の駄菓子屋から「一文笛」取ったんや?あれはお前の仕業やろ」
『あぁ〜何やそないな事かいな、あれはな
子供らがみな面白そぉに騒いでんのに、一人だけちょっと離れたところでな、みすぼらしぃ着物、洗いざらしの着物を着て、散髪がボサボサに伸びた痩せぇた子ぉが一人、離れて立って見とぉんねや。
指くわえて見てたけど、みんながあんまり面白そぉにしてるもんやさかい、自分も遠慮しながらそばへ寄って行て、一本笛を抜き取ってこぉ見てたら、あの婆……。
おら、あっこの婆、前から顔見ただけでムカムカするよぉな婆やで〜。
恐い顔してその笛をシュ~ッと引ったくって「銭のない子ぉはあっち行てんか!」
と、こない言ぃよった。
ムカ~ッときてな、おのれの小さい時の姿見るよぉな気がして「この婆ァ〜」と思たさかい、通りしなにあの笛ちょっと一つ取って、あの子どもの懐へ放り込んで帰って来たんや。
それがどないぞしたんか?』
「後先考えず馬鹿な事してくれた……。
その後、どうなったと思う……
子ども、懐へ手ぇ入れたら買ぉた覚えのない笛が出てきた「おかしぃなぁ」と思たけど、そこは子どもや、口へ持っていってピィと鳴らした。
ほなその子が笛をピーピー吹いているのを、婆アが捕まえて、
”お前に買ぉてもぉた覚えはない、さては盗ったな盗んだな、泥棒、盗人!”
ちゅうて大声で泥棒呼ばわりして長屋の親の所へ引きずって行ったんや。
その子の家は、母親は亡く、もと侍で士族の父親は病身で貧乏な家や……。
父親はてっきり子どもが盗んだ物と思い、子どもの言うことには耳も貸さずに、
”盗人するような子に育てた覚えはない、出て行け!”の一点張り。
長屋のもんが謝ってやっても聞くよぉな親父やあらへん、子どもがな、泣いて「覚えはない」と言ぃ訳しても、現に懐から笛が出てきたんやさかいしゃ~ないがな。
子どもは大声で泣く泣く出て行ったが、しばらくして泣き声がしなくなった……。
路地で変な音がしたんで、みなが飛び出してみたら、可哀そうに……子どもは井戸に身を投げたんやで……。
すぐに引き上げて息は吹き返したが、まだ寝たきりや。
おい、お前、何ぞえぇことでもしてたよぉに思てんのと違うか?
子どもが可哀そうと思ったんなら、……可愛そうと思うんやったら、何でたかだか一本の笛を銭払うて買うてやらんねん!
それが盗人根性って言うんや!
子供が死んだら……お前……どないすんねや?」
『えっ・・・すまん・・・勘弁してくれ』
と言ったかと思うと懐から匕首を取り出し、右手を敷居の上に乗せ、ポーンと指を二本切ってしまった。
止める間もなくびっくりしている兄貴分に、
『すまん兄貴。俺、今からスリやめる。堅気になる!
わしゃ盗人よりほか、何にも知らん人間や。
今日から万事頼む』
「よし分かった……。お前だけの人間や、どんなことがあっても一人前の男にしてみせる、じきに医者行け医者へ、でな、血が止まって始末してもろたら、あしたでも明後日でもえぇ、うちへ来い、何ぼでも相談に乗ったるさかいな……。」
一方の子どもはまだ生死の境をさ迷っているような状態だ。
翌日、長屋の連中は酒屋の伊丹屋へ往診に来た洋行帰りの威張った、金持ちしか診ない医者をおだてて、騙すようにして長屋に連れて来て診てもらった。
医者は入院させてあらゆる手立てを尽くさなければ八割方死ぬだろうとの診立て。
その費用は二十円の前金払いと言う。
兄貴分からこの話を聞いた秀は
『その医者、もう帰ったんか?』
「いや、帰りにまた伊丹屋に寄ってまた蔵出しの酒飲んどるがな」
これを聞くと秀は飛び出して行って、しばらくすると息をはずませて戻って来て、
『・・・兄貴、何も言わんとこの金で子ども入院さしたって。四、五十円はあるわ!』
「・・・お前、この財布どないしたんや」
『酒屋から医者、酔うてふらふら出て来やがったんで、わしも酔うたような格好して、すれ違いしなに、・・・こうチョットもろて来たんやがな。
この金で子どもを入院させて命がもう大丈夫ちゅうまで……見逃してくれ、頼むは!』
「そら、命にかかわる事やさかい、見逃すも見逃さんもないが・・・しかしお前は名人やな。右指二本も切り飛ばして、ようこんだけの仕事がでけるとは・・・」
『兄貴。実はわい、ぎっちょやねん』
。。。。。。。
えぇ〜( ᴖ ·̫ ᴖ )いかがでしょうか
桂米朝作の人情噺です。
最後のドンデン返しのため、悲劇が用意されています。
だから、『一文笛』は見事に落語なのだと思いますね。
最近、東京でも『一文笛』を演る方は増えましたが、どうも皆さん、「悲劇」=「佳い人情噺」で演じているように思えます。
片や、米朝師はしばしばリアリティを捨てても、「笑い」という本来の素材の楽しさを優先させてらっしゃる。
確かに落語はリアリティだけで演じると大半が悲劇になって笑えなくなると思います😊
合邦辻は、四天王寺の西に位置し、奈良街道と下寺町筋が交差するT字の辻で、大坂市中の南端にあたります。
(しゅんとくまる)とを一つにして、芝居にしたのが有名な『摂州合法辻』の浄瑠璃です。
(☆写真は一部お借りしてます)
ではまた次のブログでお会いします