今日のテーマは
『上方落語巡礼記』
今回紹介する上方落語に縁の地は。
「清水」
清水寺(清水さん)の出てくる落語は沢山あって、意外に長編が多いのですが、『殿集め』という実に洒落た話があります。
桂米朝
「清水の舞台飛び」という言葉は、例えば前回の『愛宕山』でも……
「昔から言ぅ清水の舞台飛び、わたい、この大きな傘で今からフワフワ~ッと降りて行って小判みな取ってきます。」
というように出てきます。( ᴖ ·̫ ᴖ )
思い切ったことをやる時に、清水の舞台から飛んだつもりで、と言うたのは、あそこへ上がって下を見ると……
「ここから飛んだらどうなるやろ……?」
ということを、百人が百人とも考える。
それでこう言う言葉ができたんでしょうね〜。
٩(๑>∀<๑)۶
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京で一・二を争うような大金持ちの娘が、いついっか清水の舞台から飛ぶ、という噂が、いつの間にか立ちました。
さあ、えらいことになる。
清水さんは上も下も、ことに下の方では、上から娘がパァーっと飛び降りるというので超満員。
境内から、どこから、ぎっしり人間で埋まってしまいます。
それを当て込んで、物売り店が出る。
お寺では「そんなこと知らん」というのですが、京中に噂が広まって人が集まってくるので、どうすることもできません……。
。。。。。。
『殿集め』
京都のご大家の娘さん、歳が十八で評判の別嬪さん。
この娘さんが何を血迷ったのか、「清水の舞台から飛び降りる」 という噂が立ち、口から口へと広がって今日はその当日。
清水寺境内は一目飛び降りるところを見ようと大勢の群衆、それも男ばかりで熱気むんむん。皆それぞれに勝手なことを言っている。
見物人一
「十八の別嬪の娘はんが、今日この清水の舞台から、パ~ッと飛びはりまんのん?。こら楽しみでんなぁ、女子(おなご)やさかいフンドシはしてませんわなぁ〜」
見物人二
「ほんまに飛び降りはるやどうか、わて知りまへん」
「そら殺生だっせー。わたいわざわざ仕事休んで見に来てまんねんで」
「ほな、仕事行きなはれ!」
「けど、仕事行たとたんに飛ばれてみなはれ、こんな悔しいことおまへんがな。
ほんで、その十八の娘はん清水の舞台から何で飛ばはりまんのん?」
「わたいが想像するところでは親の眼病のため・・・」
「たかが親の眼病なんかで娘はんが飛び降りまっか?」
見物人三
「もし、もし、黙って聞いとったらようそんなええ加減なことを。眼病やおまへん。
病気は病気でも横根(よこね)だす」
見物人一
「横根なんてもん女子にもかかりますか?」
見物人三
「そらあんた、男でも女ごでも皆かかりまんがな」
見物人二
「横根になったからちゅうて、何で娘さんこの清水の舞台から飛ばなあきまへんねん?」
見物人三
「あれ、高い所から飛んだら、痛さ知らずに膿(うみ)がみな外へ飛び散りまんねや。
八里四方へ走ってる馬を越して飛び散りまっせ!。
”横根八里は馬でも越すが……”ちゅうてね」
見物人四
「横根の膿なんて汚いもんが飛ぶのやあらへんで。
娘さんの夢枕に立った仙人から”お前は空を飛べる”と、お告げがあったんや。
それから娘さん空飛んで見たいと思うようになったが半信半疑で、もし飛べずに落ちても安全なように噂を流してこんな大勢集めたんや。
別嬪で軽い娘さんなら我も我もと手を差し伸べて抱き止めてくれるという算段や」
壮士
『これこれ勝手なことばかり言いよって。眼病でも横根でも空飛びでもないわ
患いは患いでも恋患いじゃ!』
見物人四
「あぁ、なるほど、どっかの若旦那に惚れたか片思いとか、親が許してくれへんとか・・・」
『そうではない相手は壮士じゃ。つまりこの、国家の行く末を案じ、我が身を国体のために捧げんとする・・・早い話がこの我輩じゃ!』
見物人一
「はっはっは、十八の娘はんがあんさんに?」
『黙れ!間違いなく娘御は我輩に惚れておる。恐らくどこぞで我輩が演説する雄姿をかいま見たのじゃろ』
見物人二
「じゃあ仮に娘はんがあんさんに一目惚れしたとして、何で飛び降りなきゃいかへんので?」
『おそらく親の決めた意に沿わぬ縁談でもあるのじゃろ』
見物人三
「ほな、これからどなしやはります?」
『一旦娘御にはこの舞台から飛び降りさせ、それをば下で我輩が大手を広げしっかりと抱き止める。
すぐに蘇生させれば娘御はわしの首っ玉へかじりつくであろう。
吾輩は娘御の家の婿養子に入って一件落着、目出度し、目出度しじゃ』
まあ、こんな調子でみんな好き勝手なことを言って盛り上がっていると、さあ、いよいよ娘さんがお供の女中を連れて本堂へ参拝して、舞台の上に登場した。
下でがやがや騒いでいた連中は波を打ったように一瞬静かになって舞台を見上げて思い出したように、
見物人
「よぉ、待ってました。眼病でっか?横根でっか?空中散歩?それとも恋患い~?」
壮士のおっさんも毛深い腕を一ぱいに広げて待ち構えている。
すると娘さん、舞台の上からゆっくりと群衆を隅から隅まで眺め回して、くるりと後ろを向いてそのまますたすたと帰り出して、お供の女中に、
「これだけ殿御を集めても……良い男はいないものじゃなあ」
。。。。。。
えぇ〜( ᴖ ·̫ ᴖ )いかがでしょうか
とっても人騒がせな話です(笑)( ᴖ ·̫ ᴖ )
「病気は病気でも横根(よこね)だす」
これが当時は一番傑作なギャグなんですが、今の人には分かりにくいです💦。
「横根」は「硬性下疳(こうせいげかん)」という病気で、両方の足の鼠径部(そけいぶ)に、固い塊りができて、ウミがそこにたまる。
医者へ行けば切ってくれるんですが、痛い。
そんな時、高い所からポーンと飛んだら、その衝撃でひと思いに横根が切れる。ウミが吹き出したら治ります。
それで、「横根を患ったら思い切って高い所から飛び降りたら良い」、と昔は素人療法でよく言うたんだそうです。( ᴖ ·̫ ᴖ )
「清水の舞台」
清水の舞台の高さは地上約13メートル。
4階建てのビル相当の高さだそうです( ・ ◊ ・ )
檜の板がおよそ410枚敷き詰められた舞台は畳にすると100畳分にあたる広さ。
しかも急斜面の崖に建っています。
この立派な檜舞台を支える為の工夫は細部に至り、先人の知恵と技術の結集となっていて、見所満載なのです。⸜( •⌄• )⸝
釘を1本も使わず組み上げられた木造建築なのに、高い強度と耐震性を保っている。
どれだけたくさんの参詣者がこの舞台上に集まっても、何百年間というもの底が抜けたという話は聞いた事がありませんもんね。٩(ˊᗜˋ*)و
各時代の名もなき大工さん達が延々と受け継ぎ守ってきた舞台は、今、怒濤のように押し寄せる観光客にもびくともしません。
ほんまに昔の人は偉かった! 日本が誇る伝統技術のひとつです。٩(๑>∀<๑)۶
(☆写真は一部お借りしてます)
ではまた次のブログでお会いします