No.0099
(酬恩庵一休寺)

今日のテーマは

『上方落語巡礼記』

大坂の「船場(せんば)」にまつわる落語を紹介していこうと思います。

大坂の町人文化の中心となった所で、船場言葉は江戸時代から戦前期にかけて規範的・標準的な大阪弁と見なされていたそうです。

さてその船場にまつわる落語とは……。


『立ち切れ線香』


落語というより、小説を読むようになると思いますが、それを承知で文字に起こしますのでご了承くださいm(_ _)m

「朝の連続落語小説(´>∀<`)ゝ」

始まります(笑)


。。。。。。


……そぉいう所には、世間知らずの若旦那、カ~ッとのぼせたら何をするや分からんといぅよぉな……


若旦那

『子ども、定、定吉!』

定吉

「へぇ」

『ちょっとおいで』

「えぇーッと、あっちに用事が……💦」

『おいでっちゅうねん!』



「あのぉ「きょう、若旦那のそば行たらいかん」言われてまんので……」

『誰がそんなこと言ぅたんや?』

「番頭はんに言われて……」


『番頭が何やいな、わしが呼んでんねんやないか。こっちおいでっちゅうねん!』

「辛いなぁ……」

『番頭の言ぅことが聞けて、わたしの言ぅことが聞けんのか?』

「そぉいぅわけやないんでやすけど……」

『入り、そこ座り。きょう親類ご一統(いっとぉ)集まったはるなぁ、お前そばへちょっとお茶運んだりしてたやろ、どんな話が出たんや知ってるやろ?  わたいのことで皆……  』


「「そ、そのことは言ぅたらいかん」いぅて、かたがた番頭はんに……💦」

『番頭が何やっちゅうねん!』

「つ、辛いなぁ「言ぅたらいかん」言われてまんねん!」

『わしの言ぅことが聞けんちゅうのか?』

「違い、違いまんねん💦。番頭はんに「必ず言ぅことならん」いぅて、五十銭もろた義理はないけど……」


『五十銭もろたんか? 安い義理やなぁ定吉。番頭が五十銭くれたんやったら、わたしゃ一円あげるがな!』

「一円おくなはんのか、ほなあんたに落ち札や!」



『これ、頼母子(たのもし)みたいに言ぅてんねやあらへんがな。

な、言ぅてみ。言ぅたらやるがな』

「言ぅてしもてから、くれなんださかいいぅて警察へ訴えるわけにもいかんし、もぉこの節はどなたはんに限らず現金で願ごとります。」


『何を言ぃくさる。必ずやるちゅうたら必ずあげる、安心して言ぃ!』

「きっと一円おくなはるか? ほな言わしてもらいますけど、きょうはご親類ずっと皆さんお集まりでんねん……」

『そら言わいでも分かったぁるがな。わたしの話が出てたんやろ?』


「きょうは女衆(おなごっ)さんもあの部屋へは誰も入れん、わたいだけがお茶運んだりお菓子運んだりしてお世話しとりましたんで、呼ばれたらじきに入れるよぉに部屋の外に座っとりましたんで、わたしよぉ聞ぃて知っとりまんのんで……」

『ほんで、どんな話出てたんや?』


「一番始めに口切らはったんがここの親旦さんでんねん……

「きょうは皆さん方お忙しぃのにお集まりいただきまして、ありがとぉございました。

話といぅのはご承知でもございまっしゃろが、うちにあの金食い虫がわきました……」

若旦那、あんたのことだんねんで、お金食べはりまんのんか? お札はよろしぃけど、銀貨やなんか歯に悪い。」



『しょ~もないこと言ぅねやあらへん、それからどないしてん?』

「で……「親の言ぅことを聞かずに無算講(むさんこ)にお金使こて困りますので、もぉいっそのこと勘当をしょ~と思いましたけど、跡取り息子のこってございますので一存でもでけませんので、皆さん方に集まっていただきまして、ご意見をお聞かせ願いとぅございます」

ちゅうて親旦さん言ぃはりましてん。」


「ほな、一番先に口切らはったんが京都の旦さんでんねん」

『京のオジキどない言ぅてん?』

「「おまはんの手元に置いとくさかいあかんのや。わたしが京へ連れて行く」言ぅて……」

『そぉか。京のオジキちゅうのはな、話分かんねん。

うちの親父とえらい違いや。若いときにひと通り遊んできた人やしなぁ、しばらく京都行ってこぉかなぁ。京はえぇで〜、四季にえぇとこや、祇園、先斗町、島原……』


「何を言ぅたはりまんねん、そんなんと違いまんねやで「働かす」言ぅてはりまんねやで!」

『働かす?』

「「あの子に、高瀬の綱引きさせる」言ぅたはりました。あんた、高瀬の綱引きて知んなはれへんやろ? わたし京都に親類があるんでよぉ見て知ってますわ。」


「木屋町のとこに高瀬川ちゅう川が流れてまんねん、そこを高瀬舟といぅ底の浅い舟が上り下りしてまんねん。

下りは流れに乗ってスッと行きますけどな、これを上へ引ぃて上がるのは人間が引ぃて上がりまんねやで。

そらえらい仕事だっせ〜、犬走りのとこ肩から引き綱ちゅうのん引きましてな「えいッ、えいッ、えいッ、えいッ」夏は暑いし冬は寒(さぶ)いしえらい仕事だっせ〜。」


『ほなわしゃ、その高瀬舟の綱引きすることに決まったんか?』



「決まりかけたんだ……、ほんだら丹波の旦さんがな「京みたいな所へあの子連れて行ったら何するや分からん、田舎のほぉがえぇ。わしが丹波へ連れて行く」言ぅて。」


『そぉか〜いや丹波のオッサンの腹分かったぁんねん、向こぉに”おもよ”いぅ娘がいとんねん、ぶっ細工な子ぉやねんこれが。

縁遠い子ぉでなぁ、従姉妹がみな次々片付いていくのにいつまでも残ってて、オッサンえらい気にしてんねん。

わしを連れて去(い)んで娶(めあ)わせよちゅうて、田舎はかなんなぁ……』


「そんな陽ぉ気な話と違いまんねやで!「野良へ出て働かす」言ぅて」

『野良仕事?』

「「野良へ出す」言ぅたはります「牛追わす」言ぅたはりました「ちょ~ど買いたてでまだ博労したない気の荒ぁい牛がおるさかい、それをあの子に追わす」言ぅて

「なかなか慣れたもんでも言ぅこと聞く牛やないねんさかい、あいつはイラチやさかい『言ぅこと聞かん』言ぅて怒って牛の尻でもひとつしばいたりしたら、角にかけて突き殺してしまいよる。いっそ片付いてえぇやないか」」


『ほなわしは、牛の角にかけられることに決まったんか?』


「決まりかけたんでんねん……。ほなら兵庫のお家はんが……」

『兵庫のオバキが?』

「「そんな牛の角にかけて殺すやなんて惨たらしぃ、血ぃ見るだけでも嫌やおまへんか!。

そんな要らん息子はんやったらわたしが連れて帰る」」


『女だけに、やっぱり言ぅことが優しぃわ、なぁ〜。兵庫のオバハンとこはな、須磨に別荘があんねや、えぇうちやで〜。あそこは釣りができるさかいなぁ、しばらく兵庫行て須磨の別荘で釣りを……』

「釣りはさしてくれはりますわ、そない言ぅたはりました」

『おっ、せやろ!  わしが釣り好きやちゅうこと知ってるねん。』


「そぉ「あの子、釣りが好きやから釣りさす」ちゅうて「壊れかけた船があるさかい、それに乗せて嵐が来るなぁといぅよぉな日を選んで沖ぃ出す」と……

「ほな嵐に遭ぉてひっくり返ったら、あの辺にフカがぎょ~さんいとぉるさかい、それに食われてしもたら葬式する手間も何にも要らん。これが一番片付きがえぇ」

ちゅうたら皆さん……

「それがえぇなぁ~!」」



『女ごが一番えげつないねやがな!。ほなわしゃフカの餌食に決まったんか?!』


「決まりかけたんでんねん……。ほなら、番頭さんが出て来はりましてな……」


。。。。。。


えぇ〜( ᴖ ·̫ ᴖ )米朝師匠の独特の語り口が伝わりましたでしょうか?

難しいもんですね💦

口調や間合いまでは文字に起こすのが難しいです。‪(´•ᴗ• ก )‬՞ ՞


「頼母子(たのもし)」

頼母子講は、地域の結び付きが強い場所で人々がお金を出し合い、金銭や生活に必要な物品を融通するために結成されました。💸💰


頼母子講は、関東地方では無尽(むじん)あるいは無尽講(むじんこう)、関西地方では頼母子(たのもし)あるいは頼母子講(たのもしこう)と呼ばれることが多いです。( ᴖ ·̫ ᴖ )


「無算講(むさんこ)」
大阪弁の「むさんこ」は、無茶苦茶、めちゃくちゃ、すごくという意味です。物事が多い時や大きい時に使われます。


さて、若旦那の運命はどうなる事やら……。


ではまた次のブログでお会いします