こんにちは、ご訪問頂き有難うございます(^^)


37回目になりますが、「旅もの」というからには地名が沢山出てきます。(ノ˶>ᗜ​<˵)ノ

皆さんの頭の中で「今この辺かな〜」と思いながら聞いていただくと面白いと思います。


さてシリーズで紹介している上方落語

『伊勢参宮神乃賑』(いせさんぐうかみのにぎわい)、通称『東の旅』です。


今日はその『うんつく酒』

この噺は江戸では『長者番付』という噺になってます(*^^*)

最初にお断りですが『』の部分はかなり長いので短くまとめてます。


お馴染みの喜六と清八は伊勢参りの最中。


清八『おい……、おい……て、おかしぃ具合やないかしっかり歩かんかい。フラフラ・フラフラと顔の色もよぉないが、どぉしてん?』

喜六「もぉ具合が悪ぅてなぁ、往生(お~じょ~)してんねや。」


『ははぁ~分かった、夕べの酒やな。しょ~のない男やで、あの宿屋の酒、何ちゅうもん呑ましやがってん、俺ひと口呑んで吐き出そかと思たがな。

あの悪い酒をばしょ~もないおなごを捉まて、ウダウダ、ウダウダ言ぃもってだいぶ呑みよったが、気ぃ付けや旅先やで、二人が旅してお前がもしも患うちゅなことあったら、おら困るやろ。薬持ってへんのんか?』


安物の酒で二日酔いをした喜六の為、たまたま見かけた造り酒屋で迎え酒をしようということになった。


「こんにちわぁ」

《あぁビックリした、えぇ具合にウトウトとしてたがな……、

見慣れん人じゃが、何じゃな?》

「お前とこ酒屋やなぁ」

《はぁはぁ、ご覧の通りの造り酒屋じゃ》

「そや思て来たんや。造り酒屋ではやなぁ、一合二合ちゅな酒は売らんわ」

『当たり前じゃがな、居酒屋と間違ごぉたら困る。痩せても枯れても造り酒屋じゃ、一合二合ちゅな酒が売れるかい。』


「さぁ、そらちゃんと心得てるわ。かたまった酒買おと思て来てんで」

《「かたまった酒」とは嬉しぃことを言ぅてくれる、まぁ掛けとぉくれ。何ぼほど買ぉとくなさる?》

「そぉやなぁ、五合(ごんごぉ)どや、五合」

《何ぼじゃちぃなさる?》

「五ん合ぉ、五合とかたまったら売るやろ。」


《何を言ぅのじゃアホ、造り酒屋じゃでうちは。居酒屋と間違ごぉたら困るっちゅうねがな、五合や一升てな端(はした)酒が売れるかい》

「あそぉか、一升も端酒か。ほたら二升か三升(さんじぉ)やったら売るか?」

《二升や三升、一斗や二斗ちゅな端酒は売れんわい。去(い)んどぉくれ。》


「そぉすっと親っさん、何ぼやったら売ってくれんねん?」

《そぉやなぁ、どぉ少のぉても馬に何樽(なんだ)、何ぼ車、船に何艘なら買ぉてもらおかい》「ふ、船に何ぞぉ? 兄貴来てくれ!」


『そっち寄ってぇ、そっち寄ってぇ、お前のものの言ぃ方が悪い、俺に任しとけ……』


とは言ったものの、挙句には「馬に何荷、船に何艘」などと主が言い出したため、とうとう清八の堪忍袋の緒が切れた。


『何を? 船に何艘? けッ、ドうんつくが!』

《あれ?「ドうんつく?」怒んなしたなぁ。》


「うんつく 」とはアホ。間抜け。という意味の大阪弁。語源は「運尽く」からでしょうか。

造り酒屋の親父は罵倒されてるのはわかっても、意味を知りません   


『「怒んなしたなぁ」何(なん)ぬかしてけつかんねん。怒らんといられるかい、これが……。われとこが造り酒屋やと思やこそ、俺ぁ下から頼んでんのじゃい、ドうんつくめが。

こんな田舎ではなぁ、このぐらいの酒屋をば蔵元とか、また大酒屋と言ぅか知らんけども、大阪ではなぁ、そんなことは言わんねで。このくらいの酒屋なら箒で掃いて淀川へ放り込むほどあるわい、ドうんつくめが。何かしやがんねん』


さんざんに罵倒し、喜六を引き連れ帰っていく清八。


頭に来た主は、隣室に割り木で武装した若い者を待機させ、

《おらよっぽど腹が立ったんじゃ。今のやつ、この庭へ引き戻すさかい、戻ったらかまわんさかい割木で殴り倒せ。死んだかて俺が引き受けた、構わん》


番頭に二人を連れ戻すように命令した。


そんな事とはつゆ知らず、番頭に騙されて戻ってきた二人は突然やさしくなった主の出す酒に舌鼓。

《うまいか?》

「うまいなんて、こんなうまい酒」

《うまかったら結構じゃ、腹いっぱい呑んどけ…。なぁ、その酒が、お前ら二人の末期の酒じゃ!》

「ま、末期の酒っちゅうと?」

《バタバタ騒ぐな! やい、お前ら用意がよかったら出てこい!》


「末期の酒じゃ」と言われた時には時すでに遅く、なだれ込んできた若い者に十重二十重に取り巻かれてしまった!


《おらぁ歳取って、今はこぉして仏のよぉになってるがなぁ、若い時分には随分極道もして匕首(あいくち)の下くぐってきた人間じゃわい。いろいろな間違いもこしらえて妙ょ~な言ぃ草も言われたが、わいらみたいなケッタイなこと言われたことないのんじゃ。


俺の顔見て「ドうんつく」ちぃやがったな、どぉいぅわけで俺が「ドうんつく」や? その「ドうんつく」の因縁を説け。そのおのれ、説き方によったら、この庭は無事で出られると思うな! 「ドうんつく」の因縁を説け!》


予想外の事態にガチガチになってしまう喜六。代わりに清八が立ちあがる。


『ほぉそぉか……、ドうんつく言ぅた。それが為にこんな大仰なことしてんのんかい。

よし、説いて聞かしたら。お前も俺を見違ごぉとんねんな、俺はこんなひ若い人間やけど、これでも大阪へ帰ったら兄貴とか親分とか人に言

われてる人間じゃい。匕首の二十本や三十本、おらぁ決して恐れはせんで。


怖おぉて言ぃ訳すんねやないねやさかい「聞かしてくれ」とぬかすさかい聞かしたら。聞きさらせ!』


『親爺、われの後ろに紙に書いて張ったぁるもん何や?』

《これは日本の長者番付じゃ。》

『長者番付? 大坂ではそれを『うんつく番付』と言うんじゃ!』


――たとえば三井家。初代は元巡礼だったが、ある時ひょんな事から化け物屋敷に宿泊することになり、化け物の正体であった金銀財宝を手に入れ一大財閥を築きあげた。ーー


『運が付いたんじゃ。呉服屋してバッタリとーへたったらそれまでやが、ドンドン・ドンドン・ドンドン繁盛した、運に運に運に運が付いたさかいに日本一の長者となったんじゃ。』


『それで大阪では三井のことを長者とか金持ちとか言わんねん「ド運付く」とこぉ言ぅのじゃ。嘘やと思うな、三井のしるし「井桁」の中に「三」の字が書いたぁるなぁ、井戸の底から三千両の金が上がって、それが元手であれ

だけの長者になったので「井桁に三」が三井のしるしじゃ、分かったか。』


『われとこかてそやろが、始めからこんな立派な造り酒屋やなかろが、われの親父か爺か曾爺か知らんけれども、些細なとこからやってきたのが、運に運に運に運が付いてこれだけの立派な造り酒屋になりさらしたんじゃ。

われとこそれで「ドうんつく」ちゅうてやったんじゃ「長者」ちゅうてやったんじゃ。長者言われて腹が立つのんかい? ドうんつくッ!』


《やぁ~、これはどぉも堪忍しとくなされ、もぉ田舎もんの悲しさじゃ「ドうんつく」と言ぅたんで悪いこと言ぅたかと思たんじゃ。

えらい勘違いしました、どぉぞ堪忍しとくなはれ、このとぉり謝る》


この清八の詭弁を主はすっかり信用。迷惑をかけたとペコペコ謝ったうえ、酒のたっぷり入った瓢箪をお詫びの品だと言って渡してくれた。


『そぉか、すまんなぁ親っさん、こんな立派な瓢箪注ぎに。ほなまぁこれだけはちょ~だいするで。どぉもありがとぉ、さよなら。』


。。。。。。。


『早よ来い!』

「あぁ怖わぁ~、こわぁ~、わいもぉ今日はあかん思たがな。命助かった。けど、わいが「兄貴、兄貴」と言ぅて立てるだけのお前値打ちが

あるなぁ、お前偉いなぁ。お前がペラペラ~ッとしゃべったんであの親爺が、ペコペコお辞儀しやがって謝って瓢箪注ぎの酒までくれよったんや。お前は偉いなぁ、改めてわしゃ感心したが、何か、あれホンマのことか?」


『何がい?』

「「何がい」て、お前「三井のドうんつく」のいわれ」

『そんなことホンマか嘘か分かるかい』

「「分かるかい」て、お前ペラペラッと言ぅたやないかい」


『あれは俺が大阪で落語聞きに行たら、噺家があんなこと言ぃよったんじゃ。なぁ、それを俺が覚えてたんや。』


「おぉ、噺家があんなこと言ぃよったか……、そぉすると、噺家ちゅうやつはタメんなること言ぅなぁ」


『噺家はタメになること言ぅで、噺家っちゅなもんはなぁ、ゲラゲラ・ゲラゲラと笑ろて聞ぃてたかてあかんねで、味おぉてあんじょ~聞くと、落語といぅものはゆぅにゆわれん味のあるもんやさかい、えぇか、お前も大阪へ帰ったらなぁ、浄瑠璃や芝居そんなことやめて、落語聞け。』


「そぉするとも。そぉか、落語がそれほどタメになることとは、俺は思わなんだが……、ほなまぁそぉいぅことにするわ」


『そぉせぇ、そぉせぇ。』


何とか店を脱出した二人が、巧くいったと話し合っていると後から酒屋の主が追いかけてくる。


《あんたたちも、頑張って働いてうんつくにならなあかんで!》


酔っていた清八は思わず


『うんつくは嫌いじゃ!!』


《あー、これだから貧乏人は困る》



えぇ〜( ᴖ ·̫ ᴖ )いかがでしょうか!

今回も清八の詭弁でピンチを切り抜けたようです。٩(๑>∀<๑)۶


「どうんつく」を説く場面で「三井家」の話をしてますが、噺家さんによって色々です。鴻池善右衛門やお馴染みの成功者の一代記を話します。

冒頭にも書きました通り『』の中なんですが、かなり長いのでここでは纏めてしまいましたが、詳しくは落語を聞いていただくか、明日の『笑うてなんぼ』で紹介しますのでそちらをご覧下さい。(笑)


清八の詭弁は、まるで落語の中で落語を演じてるようです‼️

これだけ流暢に話されたら造り酒屋の親父も納得するでしょう⁉️


現在地を推測すると、この次の話に「榛原(はいばら)宿」「榛原の追分」を通って来ますので、地図では一番左の辺りだと思われます。






この後は『初瀬街道』→『伊勢街道』へと続いて行きます。


ではまた次のブログでお会いします。