霞門村に暮らす片山優(横浜流星)は、美しい村の山に建設された巨大なゴミの最終処分場で働いていた。母の君枝(西田尚美)の作った借金の返済の一助とするため、優は処分場が極秘で行っている産業廃棄物の不法処理に従事していた。ある日、幼なじみの美咲(黒木華)が東京から戻り、優が働くゴミ処分場で働くこととなった。優と美咲は幼少の頃、一緒に能を楽しんだ仲だ。広報に配属となった美咲は、処分場のPR業務に優を起用することを提案。優はPRに多忙の日々を送っていたが…。
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 山あいの寒村にそこはかとなく漂う閉塞感が、物語の舞台・霞門村を強く印象づけている。寒村には不似合いな巨大なゴミ処分場が何とも不気味な佇まいで山の中腹に鎮座しているが、この処分場がこの村における諸悪の根源であり、そこに働く優と美咲の人生に大きな影を落としていく。
 理不尽な力関係の象徴として村長とその息子、反社の男が存在するが、非力な象徴として優と美咲がいる。村には多くの村民たちが能面をかぶり行進する奇祭があるが、みな同じ表情の能面は、村民たちを象徴している。
母 親の借金を返済しながら無益な生活を送る優は、その一方でかつて父親が犯した事件ゆえに村民たちから白眼視され、八方塞がりで窒息寸前の生活だ。
 しかし、東京から戻ってきた美咲と接することで、少しずつ心は開かれ明るさを取り戻す。
東京で苦しい生活を送ったであろう美咲が、苦しむ者同士として優と呼応する描写が秀逸だ。横浜流星と黒木華の演技が見事な化学反応を起こし、2人の世界に自然と引き込まれる。
 鑑賞後、観た者に重くのしかかる本作だが、閉塞的な寒村に起こった特殊な事象ではなく、この霞門村が日本の縮図であると捉えると、重いとばかり言ってはいられない、まさに必見の問題作だ。
 なお、エンドロールが終わると短いワンシーンがあることを付記しておく。

 

☆☆☆☆(星4つ)【4月23日観賞】