何ともすごい映画である。
作品構成は一見単純だ。
ゾンビ映画をワンカットで撮りそれを生放送する企画と、その作品の制作過程を1ヶ月さかのぼってコミカルに描く。
ただこれだけなのだが、そのディテールまでのぞき込むと、実はこれが一筋縄ではいかない。

まず驚かされるのは、冒頭延々と続くB級ゾンビ映画。
これが本作の幹となる劇中劇なのだが、実に37分間ワンカットで見る者に攻めてくる。
ワンカットだからシーンによっては雑に見えたり、どうにも腑に落ちないシーンなど、観客は様々な印象を受けるだろう。
このワンカット映画がエンドロールを迎えると、本作が本格的に始まるという寸法だ。
さかのぼること1ヶ月前。
このワンカット映画の企画が立ち上がり、監督をはじめとするスタッフ陣、そして出演者達が決まっていくが、さらに重要なのは、監督の妻と娘…。
そして迎えるクランクイン…。

30分のワンカット映画を今度はその裏側から、つまりスタッフとキャスト側から観客達はのぞき見るのである。
もう、そこからは冒頭の37分間で抱いた疑問や腑に落ちなかったことが、きもちよく解決していき、一種の快楽に近い感覚を覚えるほどだ。

本作をひと言で言えば、ゾンビ映画を劇中劇に添えたドタバタコメディー。
しかし、本作が持つ緻密さは、凡百の映画を簡単に凌駕する。
これは偏に脚本が非常によく練られているからに他ならない。
そして巧みな編集が見事なスピード感を生み、観客を至福の空間へ誘ってくれている。
東宝でも松竹でも東映でもなく、マイナーなインデペンデント・プロダクション、そして制作費は300万の低予算。
それでも、完成度の高い映画は作れることを本作は見事に証明している。

文句なしの傑作である。
☆☆☆☆☆(星5つ、満点)【7月6日、7月15日、7月30日、8月4日、8月14日、8月22日、10月6日観賞】
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上映後のイベントでは、みんなでファンサービスニコニコ
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プログラムにサインをしてもらったグッド!