むくりと床から起き上がるとベッドに目を向ける。

綺麗に布団は畳まれており、その上には置手紙があった。


【昨夜はお世話になりました。先に行ってます。  杉下】



「まじかよ・・・」


亨はため息をついて髪をぐしゃぐしゃと

掻いた。彼にしてみれば十分な早起きだっただけに

ショックが大きい。


いっつもこうだ、と思いつつリビングに

向かうと亨はビックリした。

朝食が用意されてたからだ。



「うわ・・・」


驚嘆しながら杉下お手製の朝食を

味わって警視庁に向かった。

それにしてもあくびが止まらない亨。

杉下と同じ部屋で寝ていると思うと

中々寝付けなかったらしい。




「おはようございます」


特命に入ると伊丹と杉下が何やら話している。




「いい加減にしてください・・・。私はともかく

 私情で振り回すのはカイトが可哀想だ」


「伊丹さんのおっしゃる通り、僕は彼にヒドイことをしています」



なんだか気まずくなった亨は何にもなかった素振りで

笑顔を作って大きく挨拶をした。


「おやよーっす!あれ、伊丹さん?」


「カイト・・・。・・・とにかく警部殿、そうういうことで」



きっ、と伊丹に睨まれたが杉下はいつものように

紅茶を注いでそれを啜った。

亨は知らないフリをして

「何はなしてたんです?」と聞くと

杉下は澄ました顔で「大したことではありませんよ」

と言った。


「そうですか・・・」




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「もう俺、心折れそうです・・・」



例によって「花の里」に亨は来ていた。

月本幸子は怪訝そうに「どうしたんです?」と尋ねた。


「・・・杉下さんはさ、俺の気持ち知ってて知らないフリしてたんだって」


「え!?そ、それはないですよ、杉下さんに限って・・・」


「それがあるんです」


亨は深ーいため息をついてビールを

ぐいと飲んだ。亨は自分の気持ちが弄ばれているようにしか

思えなッかったが、それを口にしないのは杉下右京という人物を

しんじているからだ。


昼過ぎに伊丹から「お前は満足してるのか」ときかれ

彼は「してるワケじゃあれません、でも満足しなきゃいけないんです」

と答えた。一方的な想いは一方通行だということを

自身でわかっていたからでのアンサーだった。









To be continued.......