〈7話〉

人事課長によるとすぐに求人をだすように指示が出たとのこと。



御礼とともに少し光明が見えました。

部下を呼び今までの経緯を話します。私の事もです。いつも憎まれ口を叩く、女性職員も神妙な面持ちで聞いていました。

「Aさんが残っても戦力としては期待出来ないし、期待してもいけないので取り敢えず、土曜日の体制を組もう!」と前向きに議論です。

ひとしきり方向感を纏めて会議を終えた時にその職員が

「Aさん いるだけ迷惑ですよ。何もしないで中にいるだけなら、針の筵にしてやりますよ。」( ̄□ ̄;)!!




4月1日 辞令交付。。

当初の通り、Aさんの後任辞令を受けました。そして別室で○○長に面談。


はじめに部下の昇格の御礼をいい、その後○○長がお好きなゴルフの話しをしたところで、今回の中途採用の御礼を申し上げました。

「どうしても必要なら当然でしょう。」


そして私の事を話しました。

まだ初期の段階なのでほとんど日常生活には問題ない事などを伝え、当面は業務に支障をきたす事はないと説明。○○長もうなづかれます。

ストレスを溜め込むのが一番良くないので、これからはゴルフを再開するなど、気分転換をうまく図っていきますと言うと

「AさんはM沢さんの学校の先輩でもあり、出身銀行も同じ。そう言う事もあってより厳しく当たったのかもしれませんね。


Aさんはよく顔をだしてくれたり、ゴルフの話をしてくれました。でもそれだけですよ。
(本人は)何か言っているようですが、Aさんは嘱託になっても私の直轄という事はありませんから。あくまでもM沢さんの指示に従ってもらいます。

今は本人がどうしてもと言うので出勤日数を4日にしていますが、来年は3日にするつもりです。
これからは若い人に引っ張ってもらわないといけませんから、是非頑張って下さい。」

少し喉のつかえが取れた気がしました。



職場に戻りました。


午後2時過ぎに嘱託となったAさんも本部から戻ってきました。すると「ちょっといいかな?」と。

応接に入ると○○長に会う前に人事部長に会って、なぜ人の補充をしてくれないのか、文句を言っておいたからと言いました。

「部長は失礼にも、「分かっていないのはあなただ。」と言ったので言い合いになったよ。」

と同じことを繰り返し話します。


一瞬、間が空いたところて私から

「実は昨晩夜、人事課長から連絡がありまして、中途採用がokとなりました。」と伝えると

その元上司は今まで見た事のないような顔になり、鳩が豆鉄砲を食らったような赤くなった顔で

「えっ?」とだけ。


続けざまに私が人事課長に今の状況を説明し、○○長に昨日掛け合って頂いた結果が昨晩出た事、既に求人票がでていることを説明するとともに、昨日のうちにこのような動きをしていることを報告しなかったことを詫びました。

「でも人事部長何も言っていなかったし。そうだ課長が部長を通さずに直に○○長と交渉したのか?でもそうだとすると、これからは課長がキーマンだな!」

「○○長も何も言ってなかったぞ。知っていたらお礼もしたのに。。」

ただひたすらしゃべりまくります。でもその顔は威厳の欠片もなく、単に狼狽する哀れな初老の男のそれでした。


その後、○○部長が来られたのでAさん

「これからのこと話したらどうだ?一緒に(別室に)行くか?」と言う言葉を聞こえないふりをしたら、仕方なく一人で○○部長に声を掛け、別室へ。

それが終わったところで○○部長と私が改めて別室へ。


そこでは側面支援を頂いたお陰で、人の補充が認められたことのお礼を言いました。




さて、辞令を受けてから3日が経ちました。

前はあれほど自分の席が変わることを嫌がった元上司。部下にPCの移設をさせ(これが一日仕事で、部下は仕事が滞った!と嘆いていましたが、笑)、職員とスタッフのいるシマに移りました。

また今朝はこんなこともありました。

タイムカードの位置が1番上から一番下に移っていましたが、今は私のタイムカードが一番上です。
でもそれに気付かず、私のカードをとって打鍵。

「あっ!ゴメンゴメン。M沢君のタイムカードの上に押しちゃったよ。ついクセだな。」

因みにタイムカードを入れ替えたのは私ではなく、「針の筵よ!」といっていた女性職員でした。(笑)





今回のことは再び考えさせられました。

あれ程嫌で去った銀行と同じ姿がそこにはあったからです。

上司に媚びへつらい、ご機嫌とりに終始する銀行員。そしてその上司は可愛がっているように見せておきながら、その部下の賞味期限が切れると冷たく切り捨てる。。

それと同じだと。そして今、同じ職場に残った上司の姿に憐れみすら感じます。



一方で人との関係の大切も気付きました。

人事課長は1年半ほど、同じ部で仕事をしていました。
私がその元上司のことを打ち明けたのが彼です。そしてその彼が○○長に私の言ったことを伝えてくれていたからです。

○○長が「(Aさんは)私の直轄のように言っている」というのは正に私が彼に言った言葉だからこそ、分かりました。


そして自分が職場を去る時は地位に執着せずに風のように皆の前から消えて行こうと、決心したのでした。


「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」