皆様、明けましておめでとうございます。お休みを頂戴して、充電して、帰って参りました。本年も、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

さて、今年(2010年)の最初の記事は、「Miles Smiles」というアルバムについて書こうと思います。

冒頭に「笑うマイルス」と書いたのは、ちょっとしたウィットで、このアルバムの邦題が、「笑うマイルス」となっているわけではありません。国内版のタイトルも、「マイルス・スマイルズ」となっています。

しかし、当の本人のマイルスが、恰好よく言えば、「韻を踏んだ」のですし、もっと、フランクに言えば、「自分の名前でダジャレを作った」のですから、マイルスを神のように思っている方には、御不快だったからもしれませんが、私の無邪気な冗談ということで、ご諒解下さい。

ひとまず、ジャケットを。
Miles Smiles/Miles Davis
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さて、いよいよ本題に入りますが、この作品は、マイルスが、エレクトリックに向かう前の最後の時期のアルバムの一つです。

「In a Silent Way」(1969年)、「Bitch's Brew」(1970年)といった、ジャズ界において、先陣を切って、エレクトリック楽器を取り入れた、「純ジャズ」ではないジャンルの音楽を、マイルスは後年作るのですが、それらについては、また後日お話しするとして、1966年に発表されたこのアルバムは、モダンジャズの大傑作の一つと言っても、過言ではないと、個人的には思います。

パーソネルは、テナーサックスがウェイン・ショーター(Wayne Shorter)、ピアノが、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ベースがロン・カーター(Ron Carter)、ドラムスがトニー・ウィリアムズ(Tony Williams)、そして、当然、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)が、トランペット、となっています。

この面子は、以前ご紹介した、「Round About Midnight」等の、コルトレーンやレッド・ガーランドなどで構成されたクインテットとは、異なっており、「第二期クインテット」と呼ばれています。

完成度の高さから、「黄金クインテット」とも呼ばれるようですが、私は、その呼称については、あまり詳しくありませんし、コルトレーンやレッド・ガーランドがいた頃(「第一期クインテット」)も、時代こそ違うものの、同様の評価を得てしかるべきと思います。

それで、このアルバムですが、マイルスの音の数が、エレキの時期より多いですね。

一曲目の「Orbits」では、マイルスの力強いソロの後に、ウェイン・ショーターのソロ、引き続いて、ハンコックのピアノソロ、そして、全員で演奏して、フィニッシュに至ります。

二曲目の「Circle」は、マイルスが、トランペットにミュートをつけて、出だしから、「この音はマイルスだ!」と、聴けば分かる音で演奏しています。そして、ショーターの、マイルスからバトンを渡されて、見事にその意思を解釈した演奏が、そしてまた、ショーターからバトンを渡されたハンコックが、抑制的ながら、自由な解釈で、ピアノソロを取っています。その後、マイルスの、お馴染みのミュート演奏となります。比較的、曲自体が、大人しい曲です。

三曲目の「Footprints」は、上の二曲と比べると、メインテーマ(音の)がはっきりしています。私は、このメインテーマというか、サビが、妖しげで、結構好きです。

揃って、メインテーマを演奏した後、マイルスのトランペットが「炸裂」します。
あとは、上の二曲と同じ展開で、エレキの時期とは違う、マイルスの「純ジャズ」とご紹介した所以は、そのあたりにもあります。
ハンコックのソロの後、メインテーマが繰り返され、ドラムスがクローズアップされます。そして、ベースが少しだけ、ソロ(?)を取って、この曲は終わります。

四曲目の「Dolores」では、トランペットとサックスの短い共演の後、再び、マイルスのソロが見事に展開されます。その後の展開は、上記と同様で、四年後には、あの「Bitch's Brew」を発表したとは思えない程、形式にもこだわった演奏となっています。

五曲目の「Freedom Jazz Dance」」の冒頭は、マイルスとショーターが絡み合います。いかにも、ジャズセッションという感じで、好感が持てます。そして、マイルスのソロ。これが、ドラムスと、リズム感溢れるプレイを展開していて、ロックの影響を感じさせます。その後の、ショーターも、ハンコックも、前衛的な感じすら漂う演奏を繰り広げています。
最後に、再び、マイルスとショーターの音が絡み合いますが、実に、すかっとする、演奏です。

最後の六曲目の「Gingerbread Boy」は、アルバムの最後にふさわしい演奏内容となっています。さすが「帝王」マイルスの、セルフプロデュース能力はすごいものがあると、感心してしまいます。
「純ジャズ」そのものの、マイルスのソロが、ドラムスとベースのテンポの良いリズム作りに乗って、展開されたかと思うと、今度は、ショーター。ハンコックも負けじとアドリブ。「This is Jazz」と言いたくなる程の、熱いセッションです。最後は全員参加で、ファンキーなサビ(?)を冒頭同様、繰り返して、終わりとなります。
(最後にマイルスの声も入っていますよ!)

以上、長々と、アルバムの内容説明をして参りましたが、少しはイメージが湧いたでしょうか?

ダジャレっぽいタイトルとは異なって、ジャズのメインストリームのお手本とも言える内容ですので、是非、実際にお聴きになってみて下さい。

今回も最後までお読み頂き、誠に有難うございました。今年も、皆様のご支援の程、宜しくお願い申し上げます。