さて、今回ご紹介するのは、三大ジャズ女性ヴォーカルの一人、カーメン・マクレエ(Carmen McRae)です。

私は、残りの二人(サラ・ヴォ―ン、エラ・フィッツジェラルド)と比べると、あまり聴いたことがないのですが、ご紹介しておく必要があると思って、記事にしました。

代表的な作品を。ジャケットはこちら。
グレート・アメリカン・ソングブック(完全盤)/カーメン・マクレエ
¥2,800
Amazon.co.jp
どれくらいの規模のライブなのか、精確な数値は分かりませんが、聴いてみると分かるように、非常に、観客と、演奏者の、一体感がある、ハートウォーミングな作品です。(ライブ盤です)

大体、ジャズというのは、テンポが後乗りというか、クラシックと違うものですが、この方の場合、更に、ワンテンポ(二分の一テンポ?)遅い感じで、初めて聴いた時は、相当戸惑いました。「次の音は出てくるのか?」と、不安になるくらいでした。

それで、このアルバムは、二枚組で、一枚目が20曲、二枚目が18曲と、イントロダクションなども含めてですが、コスト・パフォーマンス的にも、充分、聴いてみる価値はあると思います。(注:ボーナストラックを含めて)

1972年に、二枚組のレコードとして、発表されたようですが、当時流行っていた、カーペンターズの「遙かなる影(邦題)」(原題は、「Close To You」)もカヴァーしたかと思うと(二枚目に入っています)、セロニアス・モンクに捧げたバラードがあったり、勿論、「East of the Sun」(and West of the Moon)などのスタンダードもあったり、とにかく、てんこ盛りの内容です。海の幸を尽くした海鮮丼で、具の種類が数えきれない位ある、といった感じでしょうか(笑)

私の見方(聴き方?)からすると、エラ、サラ、と比べると、ちょっと、癖に慣れるまでに時間がかかるような気がします。

しかし、ジャズを勉強されていて(私も勉強中ですが)カーメン・マクレエを、丸ごと学んでしまいたいという方には、全盛期というか、円熟期を迎えた、マクレエのこのアルバムは、ライブという親しみやすさと、上述した、選曲の多彩さなどに於いて、お勧めの一枚(二枚?)です。彼女自身「自分の音楽生活の最高傑作」と言ったようですし。

誤解のないように言っておきますが、彼女の歌い方の癖というのは、モンクのピアノ演奏みたいなもので、オリジナリティが溢れているという意味であって、テクニックの稚拙さを意味するものでは全くないので、その点、ご理解下さい。

それで、「これからの人生(邦題)、原題は、What Are You Doing the Rest of Your life?」(一枚目)が、他のアーティストと聞き比べるのに、私は非常に参考になりました。

例えば、以前ご紹介したクリス・ボッティのアルバムにスティングが参加しているバージョンや、映画「追憶」で有名な、バーブラ・ストライサンドのバージョンや、はたまた、エヴァンスの「枯葉」という、ややマイナーなアルバムのインスト・バージョン、などと比べても、さすが、「バラードの女王」と呼ばれただけあって、一ひねりも二ひねりも加えながら、それでいて、原曲へのリスペクトを失っておらず、かつ、独自のテクニックで、硬軟よろしく、歌いこなす、これには、脱帽しました。

このアルバムも、途中のイントロダクションや、観客とのちょっとしたやり取りなどを含めて、このライブの雰囲気を丸ごと味わう方がいいと思ったのと、曲数の多さとで、全曲はご紹介致しませんが、決して、期待を裏切らないアルバムだと思います。

彼女の、曲間のトークからしても、非常に人柄がよく、来てくれた観客に、至福の時を味わってもらおうという、真摯な姿勢が、如実に表れています。

まだお聴きになっていない方は、上記のジャケットの上のアマゾンのリンクから試聴できますので、是非、お聴きになってみることをお勧めします。曲名を見ても、名曲の数の多さにお気づきになるはずです。

以上、拙文でしたが、三大ジャズ女性ヴォーカルの一人について、少しでもイメージが湧いたとしたら、光栄です。

今回も、最後までお読み頂き、誠に有難うございました。