ブログを訪問していただき、ありがとうございます。
出版のコーディネートやプロデュースをさせていただいている、
Suemiです。
noteはこちらです。
ホームページ「Imagine×Imagine」イマジン イマジン
Suemiのプロフィール
・・・・・・・・
noteをはじめました。
といっても、
いまはまだ、長いプロフィールのような文章をアップしただけで、
それ以降は、
使い方がわからず停滞していますが、
時間が許すようでしたら、ご覧ください。
・・・・・・・・・・・・・
不定期になるかも知れませんが、
小説の連載をはじめてみます。
感想は、
suemi.watanabe@gmail.com
までお願いします。
・・・・・・・・
プールサイド・ストーリー No.5
2006年1月 インドネシア バリ島
立ち上がると、
ケンの家族がゆっくりと近づいてくるのが目に入った。
ケンの両親は、とても若そうに見える。
お母さんのユリエさんは腰のところにワンポイントのタトゥーが、
お父さんのタダシ・イシクラは、
両腕も含め、上半身のほとんどに黒いタトゥーが入っている。
ふたりのあとを追うように、
ケンのおばあちゃんが赤ちゃんを抱いてやってきた。
五人でやってきたケンの家族は、
二週間の予定でバリ島に滞在している。
タダシさんが、短めのボードをビーチ・ベッドの脇におろした。
プールに飽きたら、ときおり波乗りに出かけるためだ。
彼らはこの五年ほど、毎年この時期に長期間滞在し、
しかも、滞在中のほとんどの時間をプールサイドで過ごしている。
多くの日本人は、
旅行自体が短期間のためか、
滞在しているあいだ、ほとんどの時間を観光とショッピングに当てる。
プールサイドに来たとしても、
滞在中に二時間か三時間いれば長いほうだし、
なかには、プールサイドなのに水着にもならないで、
洋服を着たまま、
ぼくに記念写真だけを頼み、すぐに出かけてしまう旅行者も少なくない。
そういった印象が強い日本人のなかで、
ケンの家族のように、
ほとんど毎日プールサイドに顔を出すのは、ごく少数だ。
彼らは今回の滞在でも、
雨の止み間をねらって一時間でも二時間でもプールサイドに顔を出し、
雨が降りはじめたら走って部屋に戻る日々を繰り返していた。
「おはようございます。元気ですか」
ぼくは、みんなに挨拶をした。
ケンの家族は、
みんな同じようににっこりと微笑んだ。
ぼくは、
浮き袋を両手で握りしめながら、
勇気を振り絞ってプールに飛び込もうとしているケンにカメラを向けた。
「撮るな、バカ!」と言って、
ケンが、プールの水をすくってぼくにかけた。
ぼくはカメラに水がかからないよう、咄嗟に背中を向けた。
束ねていた黒髪に水がかかり、
着ていた赤い「フォト・サービス」のポロシャツが濡れた。
ぼくは笑った。
「バカって、なんですか」
タダシさんが無言で笑った。
ビーチ・ベッドにタオルをかけているほかの家族も、ただ笑っていた。
小説「プールサイド・ストーリー」バックナンバー
