2020.8.31

 

 近々大幅に改訂される高等学校学習指導要領では、高校の国語科の科目名が大きく変更される。

  現行 ー 国語総合、国語表現、現代文A、現代文B、古典A、古典B

  改訂 ー 現代の国語、言語文化、論理国語、文学国語、国語表現、古典探究

 

 新課程の内容は徹底して「実用重視」である。これまでの現代文授業の大半を占めていた文学鑑賞や高邁でペダンチックな評論文の読解を大幅に削減し、契約書や科学読み物等、現代の社会生活で実際に読む必要のありそうな文章や資料を教材にして、その内容を正確に読み取る力の育成が主眼となっているのだ。

 この方向性は1999年版学習指導要領から強く打ち出されてきたものだが、かなり徹底された内容となっている。そして新課程の実施に先駆けて、もうすぐ実施される新共通テストの試行問題ではその思想が鮮明に打ち出されている。

 

 実を言うと私は、その方向性におおむね賛成している。

 下記の書物で激しく批判されているような、これまでの一般的な国語教育の在り方については、私も大いに疑問を抱いてきたからだ。

 とは言うものの「実生活で役に立つような国語教育」をどう行うか、というのはなかなか頭の痛い難問ではある。

 

  [過去の記事]

第66話 2017.10.11

 

『まともな日本語を教えない勘違いだらけの国語教育』 有元秀文著 合同出版 2012年

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上記広告記事の内容紹介
  【引用開始】
日本人ぐらい国語教育に時間とエネルギーを注いでいる国民はいない。しかも、その効果は最悪と言わざるを得ない。文科省がピラミッド構造で全国を支配し続ける限り、日本の国民は成長しないだろう。現状の国語教育に疑問を持ち、変えようという意志のある方は、本書で提案する国語教育の再建策を読んでいただきたい。 
  【引用終了】
 
 タイトルからして禍々(まがまが)しい本である。
 
 著者の有元秀文(1949~)は、
 国語教育にかかわって42年。高校教員15年、文化庁調査官5年、国立教育政策研究所の研究調査官22年というご経歴である。
 日本の国語教育の様々な理論や流派、、そしておびただしい数の実践例について彼ほど知悉している人間は他にはいないであろう。
 
 タイトルに偽りなく、国語教育の現状についてのラディカルな批判と再建策の提案が、あふれるような熱い憂憤の情によって書かれている。
 
 その文体は下記のごとく過激で挑発的である。
 子供達に、教科書の文章も批判的に読む力をつけるべきだと説く個所で記されている文言はこんな調子で書かれている。
 
   【引用開始】
 私は漱石の『こころ』が大嫌いだ。理由は、解決可能なことを解決せず自殺する登場人物が嫌いだからだ。私は太宰治の『走れメロス』が嫌いだ。なぜなら友だちを人質にして死ぬかもしれないような状況を美化する設定がおかしいと思うからだ。私は新美南吉の『ごんぎつね』が嫌いだ。なぜならごんは死なないでたくましく生きるすべがあるからだ。
   【引用終了】
 
 いろいろ考えさせられる本だった。
 やはり私たちは文部科学省が提唱するアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)を中心とした授業改善に真摯に取り組んでいかねばならないということなのだろう。
 
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