サーキットは1周5.554km、決勝レースは55 周で行われる。トワイライトレースの今週末にはソフ


トコンパウンド(プライム)とスーパーソフトコンパウンド(オプション)の2種類のドライタイヤが持ち


込まれた。スタート時の天候は晴れ、気温26度、路面温度33度のドライコンディションだった。


スタート時のタイヤにソフトを選んだのは9番グリッドのケビン・マグヌッセン(マクラーレン)、10番


グリッドのジャン-エリック・ベルヌ、11番グリッドのセルジオ・ペレス、12番グリッドのニコ・ヒュルケ


ンベルグ(ともにフォース・インディア)と、ピットレーンのレッドブル勢だった。


今季最後のシグナルが消えると、鮮やかなスタートダッシュを決めたハミルトンが出遅れたロズベ


ルグをかわしていく。3番グリッドのバルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)も大きく遅れをとり、オープニ


ングラップが終わった段階でのトップ10はハミルトン、ロズベルグ、フェリペ・マッサ(ウィリアム


ズ)、ジェンソン・バトン(マクラーレン)、キミ・ライコネン、フェルナンド・アロンソ(ともにフェラー


リ)、ダニール・クビアト(トロ・ロッソ)、ボッタス、ヒュルケンベルグ、ペレスとなった。


グロージャンはこの時点でドライブスルーペナルティを消化している。


ハミルトンはロズベルグとの差を徐々に広げながら先頭をひた走る。5周目前後からピットインの


動きがさかんになるも、メルセデスとウィリアムズは周回を続け、4番手に上がったボッタスの後ろ


にプライムスタートのヒュルケンベルグ、ペレス、ベルヌ、リカルド、マグヌッセン、ベッテルが続い


た。


10周目が終わったところでハミルトンとボッタスがピットへ。ロズベルグにはプッシュの指示が飛ぶ


が、次のラップにタイヤ交換をこなしたロズベルグが戻った位置は、やはりハミルトンの後ろだっ


た。


これで4番手に上がったヒュルケンベルグだが、1周目にマグヌッセンをコースオフさせたとして5秒


のストップ・アンド・ゴーペナルティが発令されている。14周目に入ったところでマッサがピットイン


し、再びハミルトンとロズベルグが隊列を率いる形になった。


16周目にヒュルケンベルグと可夢偉が初回のピット作業を行い、ヒュルケンベルグはペナルティ


分をピットボックスで静止した。同じ周回に10番手クビアトがターン21でストップし、そのままレース


を終えた。


ロズベルグは何とか戴冠の希望をつなごうとファステストラップを塗り替えるが、トップのハミルト


ンがそれに反応して2.5秒ほどのギャップをキープする。2人の7秒後方にマッサ、そこからさらに


17秒後方にリカルドという布陣でレースは中盤を迎えた。


日が沈んだアブダビの空は青から濃紺へと変わっていく。隊列の前方ではロズベルグがタイヤを


ロックさせてコースオフするも、体勢を立て直してハミルトンの4秒後ろに戻る。しかし、ロズベルグ


はERS(エネルギー回生システム)のトラブルに見舞われ、見る間にペースを落としていった。


ハミルトンより3秒遅いペースで苦しい戦いを強いられたロズベルグは28周目にマッサにパスさ


れ、3番手に下がる。2回目のタイヤ交換がさかんになってきたこのタイミングで、17番手を走って


いたパストール・マルドナド(ロータス)のマシンリア部分から白煙が吹き出し、続いて大きく炎が


上がった。


マルドナドはコース脇にマシンを止めたが、セーフティカー出動には至らず、イエローフラッグが振


られる間に撤去作業が完了した。


31周目の最後にラップリーダーのハミルトンが2回目のピット作業を終え、コース復帰後はパワー


不足に苦しむ僚友をかわしてマッサの後ろ、2番手につけた。


ロズベルグはボッタスにも抜かれて4番手に下がり、35周目に2度目のタイヤ交換へ向う。次の周


回でボッタスがピットインし、得点圏内のオーダーはマッサ、ハミルトン、リカルド、ボッタス、ペレ


ス、ヒュルケンベルグ、ロズベルグ、ベッテル、バトン、アロンソとなった。


周囲より明らかにペースの遅いロズベルグはずるずるとポジションを失い、40周目には8番手に。


ロズベルグは問題がさらに悪化したと無線で訴えている。


この頃、ソフトを履いている周囲とは異なる戦略でスーパーソフトタイヤを装着したヒュルケンベル


グがポイント圏外から次々とポジションを上げ、ライコネンやアロンソらを抜いてロズベルグの後


ろ、8番手につけた。チームメイトのペレスも42周目にスーパーソフトタイヤに交換し、12番手から


隊列を駆け上がっていく。


暫定ラップリーダーだったマッサも44周目にソフトからスーパーソフトへ交換、ファステストラップを


塗り替えて9秒以上前のハミルトンを追いかけ始める。また、5番手を走行していたベッテルも47周


目にスーパーソフトタイヤに履き替え、そのチームメイトである3番手リカルドも翌周に同じ作業を


完了した。


2戦の欠場を経て最終戦の舞台に戻ってきたケータハムのために懸命にレースしていた可夢偉


だが、45周目にピットで今季の戦いに幕を引いた。


マッサは確実にハミルトンとのギャップを削っていくが、ハミルトンもそれに応じてペースアップす


る。対するロズベルグはスーパーソフトを履いたライバルたちに為すすべもなく抜かれていき、ポ


ジションは13番手。上位勢が1分45秒から46秒台で走行している状況で2分台までタイムを落とし


ていた。


2周を残した段階でロズベルグにはピットインの指示が飛ぶが、本人は最後までレースすることを


希望し、3秒差で走行するハミルトンとマッサに道を譲りながらも走り続ける。


最後はマッサを2.5秒後方にとどめたハミルトンが、優勝という最高の形で自身2度目の選手権制


覇を達成した。マッサとボッタスのウィリアムズコンビが2位と3位で表彰台に上っている。4位リカ


ルドからバトン、ヒュルケンベルグ、ペレス、ベッテル、アロンソ、ライコネンまでがポイントを獲得。


11位のマグヌッセン以降、ベルヌ、グロージャン、そして14位に下がったロズベルグとエステバン・


グティエレス、エイドリアン・スーティル(ともにザウバー)、スティーブンスが完走を果たした。

 参加台数の変更によって5台が脱落するよう設定されたQ1が開始すると、フォース・インディア


セルジオ・ペレスに続いて、小林可夢偉のチームメイトとして今週末にグランプリデビューした


ケータハムのウィル・スティーブンスがピットレーンを後にする。


レッドブル以外の陣営が順次タイムアタックに入り、ソフトタイヤをチョイスしたフェラーリ、ウィリア


ムズ、マクラーレン、そしてペレス以外はスーパーソフトを履いていた。


タイムシートの頂点に立ったのはハミルトンで、0.1秒遅れのロズベルグに次いでウィリアムズの


バルテリ・ボッタスが3番手につける。ウィリアムズの2台はソフトでの走行を続けたが、フェラー


リ、マクラーレンらはソフト側のタイヤに切り替えた。レッドブル勢は残り5分で始動している。


セッション終了直前にケビン・マグヌッセンとジェンソン・バトンのマクラーレンコンビが3番手と4番


手に飛び込んだ。しかし、最後にスーパーソフトへ切り替えたマッサが3番手にジャンプアップして


いる。


後方ではザウバーのエイドリアン・スーティルがラストアタックでノックアウト圏外に脱出し、16番手


グロージャン以下、エステバン・グティエレス(ザウバー)、パストール・マルドナド(ロータス)、可夢


偉、スティーブンスがQ1で予選を終えた。


Q1と同様に5台の予選順位が決するQ2が始まるも、すぐに動くドライバーはいない。やや間を置


いてからペレスが出陣し、1台、また1台と暗さを増しつつあるアブダビの空の下に駆け出していっ


た。


やがて全車がコース上に集ってタイムアタックに挑んだが、マクラーレンの2台はタイムを出さず


にピットに帰還。マクラーレン陣営には燃料搭載でミスがあった模様だ。


タイヤは全員がスーパーソフトを選択しており、まずはハミルトン、ロズベルグ、ボッタス、マッサ、


ダニエル・リカルド(レッドブル)が上位に並ぶ。ハミルトンのみが1分40秒台に到達していた。


終盤にはメルセデス勢と3番手リカルド以外が自己ベストを塗り替えるべくコースイン。 ウィリアム


ズの2台がロズベルグを上回り、最終的には1分40秒920を記録したハミルトンを先頭に、マッサ、


ボッタス、ロズベルグ、リカルド、バトン、アロンソ、ダニール・クビアト(トロ・ロッソ)、セバスチャン・


ベッテル(レッドブル)、キミ・ライコネン(フェラーリ)がQ3にコマを進めた。


11番手マグヌッセンからジャン-エリック・ベルヌ(トロ・ロッソ)、ペレス、ニコ・ヒュルケンベルグ


(フォース・インディア)、スーティルがここでノックアウトされた。


Q3のトップバッターはボッタスで、フェラーリ以外の面々がそれにならう。ほどなくしてアロンソも走


行を開始したが、ライコネンはガレージに残っていた。


タイヤのバイブレーションを訴えていたハミルトンはターン20で若干ふくらみ、ロズベルグのタイム


に0.3秒の遅れを取る。初回のタイムアタックの結果、ロズベルグ、ハミルトン、マッサ、ボッタスと


続き、リカルドとベッテルのレッドブルコンビが5番手と5番手に入った。


Q3の最後にはライコネンを含む10名全員がタイムアタックをスタート。セクター2まで最速のペー


スで来ていたボッタスは自己ベストを縮めるも、ハミルトンには届かず3番手につける。ロズベル


グが自らの記録した暫定ポールタイムを塗り替える一方、2人の後から来たハミルトンはわずか


にミスを犯して、ロズベルグに0.386秒の差で2番手にとどまった。


タイトル獲りには優勝がほぼ必須のロズベルグが1分40秒480を刻んでポールポジションを獲得


し、ハミルトンがその隣に並ぶ。 3番手以下はボッタス、マッサ、リカルド、ベッテル、クビアト、バト


ン、ライコネンと続き、コースオフして最後のアタックを完了できなかったアロンソが10番手という


形で予選は決した。

 いよいよ迎えた2014年のスーパーGT最終戦。タイトル争いに大いに注目が集まるこのレースを


見届けようと、快晴の下ツインリンクもてぎに詰めかけた多くのファンが見守る中、13時に栃木県


警の白バイ、パトカー2台が先導しパレードラップがスタート。気温16度、路面温度23度という状況


でフォーメーションラップがスタートしていった。


 GT500クラスは、ポールポジションのMOTUL AUTECH GT-Rがきっちりとスタートを決め、S


Road MOLA GT-Rが2番手に続くが、波乱はその後方で1周目から起きた。4番手スタートで、ラン


キング首位のPETRONAS TOM'S RC Fと、5番手スタートのカルソニックIMPUL GT-Rが130R出


口で接触! カルソニックはS字でコースアウトを喫し、PETRONASはコース上に残ったもののフ


ロントをやや壊し、2周目以降ペースが上がらず。後方からKEIHIN NSX CONCEPT-GTをはじめ、


中団グループに詰め寄られる展開となってしまう。


 一方で、トップのMOTUL、S Road、そして3番手のウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTは


序盤から後方に大きなマージンを築く。4番手集団はその後も波乱含みで、KEIHINが8周目に


PETRONASをパスするも、直後にKEIHINはトラブルが発生。ピットに入ってしまう。


 その集団の中で、グイグイとポジションを上げてきたのは、PETRONASのチームメイトである


KeePer TOM'S RC F。タイトルの可能性を残すアンドレア・カルダレッリがアグレッシブな追い抜き


をみせ、11周目にはPETRONASの背後の5番手へ。13周目にKeePerはPETRONASとのトムス勢


同士のバトルを制し、4番手に浮上していった。


 53周の決勝レースで、注目されたのはピット作業。ドライバー交代は当然全車が行わなければ


ならないが、タイヤ無交換という作戦を採りピット作業時間を縮めるのではないかという推測が


あったからだ。しかし、ポジションを上げ最初にピットに向かったKeePer TOM'S RC Fは4本交換。


その後も序盤の上位陣はいずれも4本交換を行っていった。


 しかし、レース中盤になると上位陣にトラブルが。2番手を争っていたS Road MOLA GT-Rは黄


旗中の追越があったとして、10秒のペナルティストップをとられてしまう。また、3番手を走っていた


ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTも、ピットイン時の再始動でストールを喫しタイムロスし


てしまった。


 一方でトップのMOTULは大きなマージンを築いていたこともあり、29周を終えピットに向かうとロ


ニー・クインタレッリから松田次生に交代。トップをままコースに戻っていく。2~3番手がトラブルに


見舞われたことでポジションを上げてきたのは、早めにピットインを行ったKeePer。そして関口雄


飛から脇阪寿一に交代し、タイヤ無交換作戦を敢行したWedsSport ADVAN RC Fが表彰台圏内


につけていった。


 これでKeePerにも逆転チャンピオンの可能性が浮上し始めたが、MOTULが首位のままならば


チャンピオンはMOTULのもの。息詰まる終盤戦を迎えたが、その背後で激しい表彰台圏内の戦


いを展開したのは、寿一のWedsSport ADVAN RC Fとミハエル・クルムのD'station ADVAN GT-


R、そして伊沢拓也のウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT。ベテランの技を駆使した見応え


ある大バトルを3台で展開した。


 トップのMOTULは、そんな争いを後目に完璧なレースで最後まで首位を守り、そのままチェッ


カー! 見事大逆転で新規定初年度となる2014年のチャンピオンを松田次生/ロニー・クインタ


レッリが獲得した。松田次生は悲願のGT500初チャンピオンで、マシンを下り思わず涙。クインタ


レッリは、スーパーGT歴代タイとなる3回目の王座獲得。ニスモのドライバーズチャンピオン獲得


は2008年以来となった。2位はKeePer TOM'S RC Fとなったが、チャンピオンには届かず伊藤大


輔/アンドレア・カルダレッリ組はランキング2位という結果となった。3位は、3台のバトルを制した


ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTが獲得。伊沢拓也は代役参戦の仕事をきっちりとやっ


てのけ、3メーカーが表彰台を分け合う結果となった。D'stationが4位、5位はペナルティから追い


上げたS Roadという結果に。タイヤ無交換作戦を敢行したWedsSportは6位でチェッカーを受け


た。


 GT300クラスは、ポールポジションスタートのGAINER DIXCEL SLSがホールショット。OGT


Panasonic PRIUSが続くが、まだタイヤが冷えているであろう1周目の3コーナーで、ランキング首


位の片岡龍也駆るグッドスマイル 初音ミク Z4がプリウスのインへ。タイトルを確かなものとするべ


く、2番手に浮上していく。ただプリウスはペースが速く、ビヨン・ビルドハイムのGAINERの後方で


初音ミクZ4、プリウスのバトルが展開された。


 チャンピオンを争うGAINER、そして初音ミクZ4が上位を争う中、ランキング3位のStudie BMW


Z4は序盤中団での戦いを強いられる。しかし、いち早く14周を終えるとピットへ。荒聖治からヨル


グ・ミューラーに交代し、タイヤ無交換作戦で挽回を狙っていった。


 一方、後方からグイグイと順位を上げてきたのは、山内英輝駆る10号車GAINER Rn-SPORTS


SLS。首位のGAINER DIXCEL SLSと同じパッケージをもつ10号車は、序盤に早くも5番手へ。僚


友11号車の王座獲得をサポートするべく順位を上げていく。素晴らしいペースを披露した山内


は、24周目には初音ミクZ4をもパス。さらに、山内同様素晴らしいペースを披露したリチャード・ラ


イアン駆るAudi R8 LMS ultraも初音ミクZ4をかわしていった。


 ポジションを落としたグッドスマイル 初音ミク Z4は、26周を終えるとピットに戻り、片岡龍也から


谷口信輝に交代。一方、大きなマージンを築いたGAINER DIXCEL SLSは、28周を終えビルドハイ


ムから平中克幸へ。これでGAINERが首位を守り、一方の初音ミクZ4はチャンピオンの条件であ


る3位以上が必要に。速さをみせるGAINERの10号車、アウディらの動向に注目が集まった。


 しかし全車がピット作業を終えると、GAINERの11号車が首位、プリウスが2番手に。初音ミクZ4


が3番手という順位となる。ただ、初音ミクZ4の背後につけるAudi R8 LMS ultraがペースが速く、


さらにその後方にはGAINERの10号車が。谷口にとって、チャンピオンの条件である3位を守る戦


いがチェッカーに向けてスタートしていった。


 トップのGAINER DIXCEL SLSが完璧なレース運びで首位を守る一方、谷口駆る初音ミクZ4の背


後には、藤井誠暢駆るAudi R8 LMS ultraがヒタヒタと接近する。チャンピオン争いを左右する3位


争いにサーキット中が注目した。


 しかし、GAINER DIXCEL SLSが優勝を飾りOGT Panasonic PRIUSが2位でチェッカーを受けた


背後で、3位を守り切ったのはグッドスマイル 初音ミク Z4! GAINER DIXCEL SLSの平中克幸/


ビルドハイム組と谷口信輝/片岡龍也組が78点で同ポイントとなったが、優勝回数の差で谷口


/片岡組がチャンピオンに。ふたりはともに2回目のチャンピオンで、GOODSMILE RACINGにとっ


ては2011年以来の王座となった。Studie BMW Z4は最終的に7位でチェッカーを受けている。