試合を翌日に控えた会見で、吉田弘監督は「決勝トーナメントに進めるかどうかという意味で、明


日はぜひ勝ちたい」と語り、対戦相手の注意すべき点として「日本と同じく組織的でまとまってい


ること。そして前に17番の大きい選手がいて、スピードもあること」を挙げている。


 17番というのは、FWのハンナ・ウィルキンソン。身長176センチというのは、今回のニュージー


ランド代表で最も高身長だ。履歴を見ると、前回のU-20W杯にも出場しており、昨年のW杯ドイ


ツ大会、そして今年のロンドン五輪にも出場している、バリバリのA代表である。ニュージーランド


はスイスとの初戦に2-1で勝利している。この時のシステムは4-3-3で、ウィルキンソンは右


のウイングであった。ニュージーランドといえば、男女ともに大きく蹴って前線で競り合うような牧歌


的なサッカーのイメージがあった。ところが、オーストラリアが2006年にAFC(アジアサッカー連


盟)に転籍し、代わってニュージーランドがオセアニア代表としてFIFA(国際サッカー連盟)主催の


大会に出場するようになると、彼らは世界のトレンドを肌で知るようになり、徐々にではあるが自国


のサッカーにそのメソッドを取り入れるようになった。その傾向は女子に特に顕著だ。北京五輪とド


イツW杯で日本と対戦した経緯もあり、最近のニュージーランドはポゼッションとパスワークを重視


するサッカーへの転換を図っている。実際、スイス戦での彼女たちは、想像していた以上にパスサ


ッカーを重んじるチームになっていて、いささか面食らった。吉田監督が語った「日本と同じく組織


的でまとまっている」とは、そういう意味であろう。もっとも日本の指揮官は「昔の方が日本にとっ


ては嫌だった」ともコメントしている。


 フィジカルに勝るチームが、なでしこのようなテクニックとパスワークを身につけたならば、間違い


なく脅威である。だが今のニュージーランドは、そこまでの段階には至っていない。メキシコ戦でゴ


ールを決めた猶本光は「17番はスピードがあるけど、ハマ(浜田遥)のサイドだから大丈夫。サイ


ドが空く傾向があるので、サイドチェンジで揺さぶれば1対1で抜ける場面もある」と冷静に分析。


また、1トップでの起用が濃厚な道上彩花も「前の試合でもフィジカルの差は感じなかったので、


自信を持ってやっていきたい」と、意欲的な姿勢を見せる。どうやら選手に気負いはなさそうだ。


 ニュージーランドに対して、もちろん過度の余裕は禁物だが、それでも普通に戦えば十分に勝機


が臨める相手である。ここでしっかり勝利して、早々に決勝トーナメント進出を決めたいところ。ヤン


グなでしこの第2戦、キックオフは19時20分だ。