『泥に咲く花』    なゆた

 

生まれながらに

薄暗い泥の底に命を紡ぐ

それは宿命と呼ぶものなのか

 

まだ一度として

燦々と降り注ぐ陽の光を

見たことがない

 

なぜに私は

冷たく濁った底で

芽吹いたのか

 

汚泥のなかにあって

従わぬ心は

光へと手を伸ばす

 

それは精一杯の

運命への反逆

恋焦がれる光を求め

 

暗い土を抜け

一筋に茎を伸ばせば

生温かい水が心地よく沁みる

 

水面を泳ぐ光の粒たちに

挨拶を交わしながら

眩い高揚に揺らめいている

 

もう少しで

水のおもてに出る

 

黙々と天を目指す

ひとつの夢が

すぐそこにある

 

大きく深呼吸をし

緑の葉を誇らしく広げ

命の高まりを吸い込んでいく

 

ぽっかりと

水面に葉を漂わせ

薄紅の花をほころばせる

 

夢は

泥の底でなお

光を探し続けた

根の記憶なのだ

 

 

ただ、うらら

風に揺れながら

花は凛と咲いている