前回で紹介したパンフレット『東宝御案内』の昭和136月号(No.55)に掲載されていた、宝塚歌劇団公演以外の興業内容、演劇、外国映画、東宝邦画などを紹介します。昭和初期がどんな時代だったのかを知る手だてとなります。


 

 

p.10:有楽座での公演内容

演目は『戦国の密使』『かさね』『大いなる審判』歌舞伎レヴュウ『義経千本桜』

左:雲野かよ子、右下:市川寿美蔵(後の寿海)


 

 

p.12:邦画:『田園交響楽』『四つ葉のクローバー』

『田園交響楽』は「アンドレ・ジッドの同名小説を、北海道に舞台を置き換えて映画化した作品」(出典:キネマ写真館・日本映画写真データベース)。主演は当時17歳だった原節子で、彼女の出演第17番目の作品。映画の中で演奏されるベートーヴェンの交響曲第6番『田園』は、NHK交響楽団の前進である新交響楽団が演奏しており、指揮は小澤征爾の師である斉藤秀雄。


 

 

p.13:洋画『恋の挽歌』


主演はクラーク・ゲーブル。『風と共に去りぬ』はこの2年後に公開された。

 


 

p.14:邦画『エノケンの法界坊』


東宝映画が設立されたのは前年の1937年。その年に多くの俳優が東宝へ移籍したが、その中の一人が榎本健一。『エノケンの法界坊』では喜劇の神様とも言われた斉藤寅次郎監督がメガホンをとっている。

 

 

 

p.15:邦画『牧場物語』『軍用列車』

「『牧場物語』は、日本文化中央聯盟と東宝映画が提携して製作した映画。日本文化中央聯盟とは、松本学が中心となって設立した文化団体で、「八紘一守(はっこういちう)」の精神の宣揚につとめた」(出典:高橋新太郎『集書日誌61p.21)。

 

『軍用列車』は、聖峯映画(韓国)制作、東宝配給の映画。「朝鮮鉄道の運転士が、軍用列車を中国のスパイから守る宣伝映画」(出典:福岡市総合図書館映像ホール・シネラ)。 

 

 

 

p.16:邦画、雑誌『エスエス』6月特大号

上の写真は『逢魔が辻』のスナップ写真。原作は大佛次郎。

河原崎長十郎、中村翫右衛門などの前進座団員がユニット出演。「この時期、映画やラジオドラマへの出演が続くことで前進座は、当時五万円の余剰金が生みだし、創立六年目の19376月に、吉祥寺に創造と生活の場を統合した世界でも珍しい『前進座演劇映画研究所』をつくった」(出典:前進座の歴史

 

『エスエス』は、東宝が発行していた月刊PR雑誌。ステージとスクリーンの英単語の頭文字「エス」から命名された。


 

次回は、昭和137月東京公演についてです。

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