中小食品企業の衰退とネアンデルタールの絶滅と似ているか  

 技術士(農業部門) 鈴木 修武 (鈴木修武技術士事務所) 

両者が似ているかは、個々の企業により違うが衰退または倒産の防止には外部の力が必要である。「絶滅の人類史」(更科功・NHK出版新書)や「ヒトとイヌがネアンデルタール人(以下ネアン人と略)を絶滅させた」(著パット・シップマン、訳柴田氏・原書房)を読んで日本の食品企業の現状を考えた。中小の食品企業は著しい衰退があるが、その原因はなにか。多分、生き残っている食品企業は、なにか特徴があるのと外部のパートナーがいる。それはヒトとイヌの関係に似ていると言える。ホモサピエンス(以下ホモ人と略)とネアン人はある時代を共存していた。

1.ネアン人とホモ人の食糧確保と生活はどんなことか

ネアン人は言葉が喋れて、石器も火も使い、家族単位の小人数で生活していた。ホモ人は同じように言葉、道具、火などを使っていたが、大きな違いが家族単位より大きな集団で暮らしていたこと。ホモ人は今も地球上に生存している。その違いはなにか。家族単位と集団単位であるに加え、ホモ人は新製品開発力がある。石器の発達能力はすごく、それは付け替え刃のできる細石刃やヤリに着けた投槍器などに表れている。オーストラリアのアボリジニ(ホモ人)は、ブーメランを用いて食糧確保をしている。マンモス展(日本科学未来館)では、1.2万年前のイヌのミイラが展示されていた。イヌを使うことにより狩りが容易にできる。約4000年間、両者が共存したが、ネアン人は段々と食糧確保が難しくなり、スペインの端で絶滅した。絶滅の原因はなにか。仮説として、・寒冷な環境の変化・ホモ人が殺した。・ホモ人が子沢山で繁栄して負けた・集団的な情報収集能力で負けた。以上のことからネアン人は、恐らく、情報収集能力と新製品開発力で劣り、7勝8敗でジリ貧になり絶滅したと思われる。

2.中小企業はどうすれば、生き残れるか。パートナー(例えば、技術士)の必要性? 

この20年くらい身近な市場を見ていると倒産や閉店が多い。しかし、スーパーやコンビニなどに行って昔関係した会社の商品に会うとうれしい。米菓の〇〇製品、△△製品、揚げ玉の○○などで特徴のあるロングセラー商品である。独自開発した商品もあるが、外部の知恵を借りた製品が多い。技術士や専門家などの外部の力である。これは上の例の人間とイヌの関係に似ていないか。筆者の専門分野では、同じ油の使い方でも、天ぷら、フライ、カラ揚げにより使い方が違う。ポテトチップでは真空フライヤーを使うと良いし、揚げ米菓では回転率を良くすることが必要である。炒め物では、野菜炒めと焼きそば、チャーハン炒め、焼き肉炒めについて言えば、機械、炒め温度や油も違う。ドレッシング類は、種類が多く、処方箋の作成には苦労したし、油も吟味しないと酸化も違うので賞味期限に直結する。

機械メーカーの顧問をしていたときに、食品業界を知っていた筆者は、原材料の使い方や特性、工場などの現場事情や業種別の個別事情や食品別の衛生管理を助言したことを思い出した。食品業界は、業界別に特殊な事情がある。例えば、水産業界のわかめ製造では、わかめの攪拌においてはまとまりつきや塩による機械損傷も考慮を要する。キムチの攪拌では、人手による作業は、攪拌による体力がいるので撹拌機のニーズがあり、しかも粘り着くような攪拌の解決と目配り知恵に必要であった。ジャガイモサラダは、ジャガイモを崩さずに攪拌する。ふりかけは、塩や調味料と海苔は比重さがあり攪拌は難しいことから粉粉混合は短時間に攪拌すると良い。食品の業種にも多種多様な素材あり、それぞれ別のノウハウが必要となる。

2023年のifia/HFE JAPANで無料相談をした。同僚のF氏とある企業の若い研究者の相談に乗った。〇〇物質をイモ類から抽出して機能性食品を製品化できないかという。カラムの選定からシリカの選定やその価格など製造条件は容易に助言でき、機能性食品の申請方法など助言もできたが・・。技術的な側面より経済的な側面を考えていなかった。私も若い時は同じであった。開発に数回失敗するとむしろ技術よりも市場性やライバル品、顧客のニーズにあうか。売れるか売れないかを同時に考慮するが大事である。上記のテーマであるが、この業界は国内より海外が競争になる場合が多い。中国などから安い製品がでれば瞬く間に製造中止になりかねない。また、このテーマが社長ルートか課長ルートによって予算の獲得ができるか左右する。商品開発には、技術的な側面と経済的な側面を俯瞰する心得が大切であると助言した。  上記 食品化学新聞 掲載記事を記載する。

写真1横浜の庭 姫じゃくなげ(今はない)

写真2 尾瀬 トキソウ

写真3 尾瀬 しらかば 昔写した写真

 写真4 植物園 スイレン

以上