「疑惑がぬぐい去られ、うみを完全に出し切るまでは」と3月の大相撲春場所中止を発表した日本相撲協会。65年ぶりの異例の決断だが、八百長問題の調査は長期化を免れない様相で、今度いつ、力士の姿を土俵で見られるかは分からない。通算最多勝の春場所での達成を目指していた大関・魁皇(38)は「個人的なことはもう一切考えられない」と話し、現役力士を代表してファンに謝罪した。評議員会のため国技館に集った親方らも一様に苦悶(くもん)の表情を見せた。地元・大阪では春場所中止の波紋が一挙に広がり、角界正常化を願う声があちこちから聞こえた。
魁皇は6日午後に国技館で行われた評議員会に力士代表として出席し、春場所中止を告げられた。その後、報道陣の質問に答えた。
通算最多勝まであと10勝に迫る魁皇。春場所中止に「正直、残念なことだと思うとともに、やっぱり大阪で待っていてくれているファンの皆様には本当に申し訳ない」と心情を吐露。また「理事長からは今回のことがいかに大変なことかを説明していただいた。その通りだと思って、このことをしっかりと受け止めて、これから行動していかなければいけない」と決意を見せた。八百長問題には「もう本当に正直驚いたし、すごく残念なことだと思った」とうつむいた。
春場所は88年に初土俵を踏んだ原点とも言える場所。何度もけがをしながら重ねた白星は1035。春場所に元横綱・千代の富士が持つ歴代1位の1045勝の更新が期待されていた。だが「個人的なことはもう全く考えることもないし、これからどうしていくかということだけを考えなければいけない」と角界の危機への対処を優先する考えを見せた。
関取最年長の大ベテラン。ブランクが体力維持に与える影響は少なくないが、「もちろん不安もある。やはり今までに経験のないことだから。またいつか相撲が再開される時まで、しっかり稽古(けいこ)をして、しっかり体調管理をして、相撲の信頼回復のためにどうするのかも考えていきたい」と気丈に語った。
ファンには「またいつかはこの土俵で相撲を取れるようしっかりとやっていきたい。それまでしっかり見守っていただければと思います」と頭を下げた。
評議員会に出席した親方らは、戸惑いと怒りの表情を見せた。
湊親方(元前頭・湊富士)は「仕方がない。反感というか、世間の目は厳しいでしょう。本当にはっきりと片を付けないと次に進めない」と危機感を示した。「力士養成費など、その場所がないとどうなるのかというのが一番の心配。でも出してもらわないと、毎日生活しているのだから」と不安を口にした。
高田川親方(元関脇・安芸乃島)は「若い衆はみな涙ながらに一生懸命稽古している。かわいそうで涙が出る」と怒りをにじませた。八百長には「自分のように命がけでやってきた人間から考えると、今でも信じられない。そんなことをするやつは今すぐやめてほしい」と責め立てた。再生については「一刻も早く清廉潔白にするしかない」と誓った。
弟子の十両・千代白鵬が八百長を認めた九重親方(元千代の富士)は報道陣に囲まれ、厳しい表情をいっそうこわばらせて「何もない」とだけ言って会場を立ち去った。八百長が行われた当時、協会理事長だった武蔵川親方(元横綱・三重ノ海)も「このあと発表するから」と質問には一切答えず、足早に立ち去った。
<毎日新聞より>