学生時代、アルバイトをしようと思って新聞店を訪れた。新聞配達のアルバイトをしようと思い立ったのである。品川の新聞店であったと思う。
 その新聞店を訪れると、店の人が、あんたには出来ない、金が欲しいならあげると言ってお金を貰って帰って来た。
 
 高校を卒業したぐらいか、アルバイトをした。設備屋さんで。軽井沢でのハツリがその内容である。給料日になると、思いのほか沢山入っていた。
社長さんが言った。ゆくゆくは世のためになる人だ。頼みますよ。

 28歳になるまで職には就かなかった。その間どうしていた。伯母さんがお小遣いをくれた。

 父の後援会長は立派な人だった。元旦に執り行われた組合の新年総会の道すがら、自宅に寄られた、そして、既に成人になって久しい自分に多額のお年玉をくれた。

 忘れられない思い出がある。
 保険も保険会社も知らずに保険会社に入った。入説の案内が来て、あわてて四季報をめくった。出ていない。焦った。それもそのはず。保険会社はその当時、ほとんどが相互会社であった。株式会社の情報誌、四季報には載っていない。
 そんな会社に入ったが3カ月の入社研修は凄惨を極めた。厳しいものであった。与えれれた地区から契約を頂かなくてはいけない。
 その後も、管理職になった後も時々そのような研修が行われた。
しかも、その契約には条件あって高額契約でなくてはいけない。
 そんな研修のある日、アパートを訪れると契約をしてくれるという人が現れた。お話を伺っていると、高額契約ではない。そこで、丁寧にお断りした。すると、夕方に来てほしいという。
 その、夕方訪れると、高額保険には入れないが、せめて夕食を食べていってくれというのだ。ありがたかった。見ず知らずの者に。
 その後そのお宅を訪ねることはなかったが、研修最終日がきた。
 尋ねたがおられなかった。花束に礼状をそえて置いてきた。

 
 祖母は織治という。その祖母が言っていた。おまえは金に困らない。

 先祖の功徳によって永代居士が約束されている。
  
 恩に報いる道は何か。その時は何時か。


 祖母、織治は欲の深い人であった。そのためか、祖母の額にはこぶがあった。(遺伝か、自分の後頭部にも大きなこぶがある)
 そんなある日、乞食が家にやって来て飯をくれと言った。何を思ったか欲深な祖母は乞食にむすびを恵んだ。すると、その乞食は、あんたはいい人だ、と言って、あんたにこれをあげると言った。そして、それをこぶに当て呪文を唱えた。すると、こぶは消えてしまった。

 こぶのおばさんと村では有名であった。そのおばさんのこぶが消えてしまった。村では噂になった。そして、村人は訪れた。
 祖母は一部始終を話した。村でイボのある人はいた。その人たちがイボを取って貰いたいとやって来た。
 欲深だった祖母は乞食から貰った神さん?(本体は石?お札?)を患部にあて呪文を唱えた。イボは何時しかなくなったとのことである。

 それから何十年がたったのであろう。自分が小さい時でも、イボをとってほしいと村人がやってくると、祖母は呪文を唱え神棚から取り出したあと、患部にそれを当て呪文をとなえていた。その後どうなったかは知らない。
 自分に左手薬指にもイボがあった。しかし、今はない。祖母の呪文が効いたのか、イボコロリンが効いたのか、それは分からない。
  
 処分されなければ、実家の神棚には、紫のちりめんに包まれた"神さん"がある。中身は見たことがない。