先日発生した、首都高速美女木ジャンクションでの多重衝突事故。車三台が炎上し3人の尊い人命が奪われた。大概こういう高速上の大事故は、追突が起因している。半世紀前、東名道・厚木インターで幼い姉妹が焼死した多重事故も、渋滞の最後尾に漫然運転していたトラックがノーブレーキで突っ込んだ上の惨劇だった。

 

今回も圏央道への分岐で、大概スピードを落とした車列が続く美女木ジャンクションでの惨劇も、速度を落とした車列に、トラックがノーブレーキで突っ込む事により起きた。しかも逮捕された運転手は、当日38度近い高熱を出し、本来なら交代の乗務員に後退させねばならないところ、運送会社の運行管理者が、事実上そうした事をスルーして無理やり当該乗務員を勤務につかせた可能性が高い事が、その後の警視庁の調べで明らかになって来た。

 

更にその前は、首都高速・多摩川トンネル内でタクシーが横転、乗務員と同乗していた出光興産関連企業の旅客1名が死亡したが、何とタクシーの乗務員は、事故を起こす前に病死していた可能性が高いと言う。私も乗務前に点呼は受けるが、最近新人がわんさか入って来てるため、上記のトラック運送会社の通りスルー状態になって来てるのが怖い。

 

こうした多発する公共従事ドライバーの相次ぐ大事故に、元トラックドライバーで現在モビリティ問題を中心に寄稿しているモビリティ・フリーライターの橋本愛喜さんは「明らかに管理側とドライバーとのコミュニケーション不足・信頼不足。しかも歩合制のドライバーは、休めば減給となるため、体調不良を申告しない傾向にある。これで何が2024年対策済みと、政府は胸を張っているのか。」と、怒りのコメントをSNS上に寄せている。

 

一般にトラック・タクシーの乗務員が重大事故(車両横転以上の重大事案)を起こすと、警察だけでなく国土交通省・地方運輸支局の査察官、厚生労働省・各地方労働局の査察官に踏み込まれ、会社の管理書類一切合切を持ち去られる(今回の様な複数人死亡者発生事案の時は、本庁から担当官が飛んでくる場合がある)。しかも、許可なく事業を再開する事は許されない。最悪、倒産する羽目に陥る。乗り切ったとしても、風評被害で行く先は同じだ。

 

しかし思う。何故公共に従事するドライバー職は、こうも社会の底辺と見なされるのだろうか。何か一つつまらないミスをしても、風船の如く大きな扱いをされ、更に体調不良で休もうものなら「何で休むのか?」と詰問され、さらに医師の診断書を持って来いと言われる始末。私が昨年脳梗塞で入院する羽目になった際も、病院に入院中の携帯にまで督促の電話が掛かって閉口してしまった。

 

長年表の勤務でハンドルを握る私は、以前少しでも体の変調を感じると「今日は絶対乗りたくない。乗って人を殺したら、元もこうもない。」と遠慮せず管理者に事情を説明して、休ませてもらった。だが業界が活況に沸いてる今、少しでも休めば、次回乗務は整備が行き届いてない車を廻されたり、、無線配信数を減らされるなど嫌がらせを受ける。それがイヤで無理やり体調が悪そうなのに、乗って行く若手をよく見る様になった。私の脳梗塞も、こうした無理やり働かせ放題が発病の一員になったのではないかと考えている。

 

そうした悪しき慣行が、好況に携わる人達の働く環境を悪化させ、昨今問題化してる「公共バスの大幅減便」「JR在来線『みどりの窓口』閉鎖による混乱」を引き起こす原因の一員になってるのではないか。

 

「公共従事者の働かせ放題」は、昨今の教員不足にも影響を落としている。勤務超過費を増やすだけで、現場の人員を増やさない・・・これでは、カネで口封じし教職員に問題を丸投げしてる国の構図が、良く透けて見える。

 

昔は国鉄職員がストライキをすると「あいつら既得権益みたいにストやってる」と批判されたものだが、今日「ストをするなどご法度」と見られている公共従事者が、相次いで職場を離脱しているのも、見方に寄れば「シュプレキコールなきストライキ」と言えるのではないだろうか。海外では、公も民間も華やかに横断幕を広げ大声を出し、自らの主張を行っている。そうした事が「悪」とみなされる日本では、長い不況から抜け出せず、sr帰任天下をだれにさせるかだけ論じられ、結局公共従事者がババを引くと言う構図が続いて来た。

 

しかしそうした事も、もう終わりなのかもしれない。労働貴族や一部の小金持ちのご機嫌を取るため、好況がタダ働きされるのも、もう限界を超えてしまってるのかもしれない。

 

よりよい「公共サービス」を受けたければ、公共従事者の休みを増やすか、霞が関のエリート官僚並みに給料を増やすかのどちらかだ。いや、この際思いっきり休ませてもらった方がいいのではないか。