1997(平成9)年と言えば「北拓・山一ショック」が起き、俗に言われる「平成金融危機」が勃発した年だったが、その引き金を引いたとされるのが、同年7月にタイで勃発した「アジア金融危機」である。

 

当時欧米とタイをはじめとするアジア諸国との金利差は大きく(加えて当時対ドル交換レートを固定化するアジア通貨も多く)俗に「アジアの時代」と代表される言葉の通り、アジアへの金融シフトが起き、欧米企業・金融当局者は危機を迎えていたと言われる。

 

そこで欧米のヘッジファンドが、タイの通貨・バーツをターゲットに「バーツ売りドル買い」を大規模に行った。タイ金融当局は必至に外為市場でバーツの急落を押さえようとしたが、一説に20兆円もの金融資産を動かすと言われるヘッジファンドにもろくも破れタイの国家予算は破綻寸前に追い込まれる。対応を巡って、タイ政局は混乱。同年12月、変動相場制へ移行させられた。何の効果的な対策を打てず、欧米ヘッジファンドに事実上の降伏。後に「タイの失敗(失策)」と揶揄される。

 

その衝撃がその後、韓国・マレーシアなどにも飛び火し、遂には日本でも、先ほど紹介した「北拓・山一ショック」や、長銀(日本長期信用銀行)や日債銀(日本債券信用銀行)など「戦後日本金融の根幹を成す金融機関」が次々倒産(破綻などと言葉を変えてるが、要するに潰れた事)し、欧米系の金融機関の支配下に入った。

 

いま「タイの国家予算破綻寸前」の状況が、日本である。急激な円安で、一部の労働貴族や金融ファンド関係者だけがあぶく銭を食らい、99%の国民は、実に24ケ月連続で実質賃金マイナスの生活を強いられている。そうした小市民がいま「生活保護」や「福祉給付」に相次いで駆け込み、地方自治体の中には、24年度の予算が殆ど底を突くところも出て来ている。

 

いわゆる「インバウンド経済効果」など無きにも等しい。たたき売りされた日本は、海外の格好の食い散らし場となり、観光地では一般住民が公共交通を利用出来なくなる「観光公害」が一向に止まらず、国民の不安・不満は限界に達している。

 

そもそも「通貨安誘導」は、危険極まりない金融政策であることが、1994(平成4)年のメキシコ金融危機で浮き彫りになったにも関わらず、それを好き好んで「見せ掛けの経済拡大策」に利用した安倍政権下の経済政策は、断罪されてもおかしくない。にも拘らず、未だ現政権・及び日銀当局は一向に政策を改めようとしない。

 

日本の歴代政変のきっかけが、海外からの圧力による国内混乱によるもである。「大政奉還」「第二次世界大戦敗戦による帝国政府崩壊」も、全てがそうだ。ならば、今の混乱をきっかけに、国民本位の新政府樹立の動きがあってもおかしくはない。

 

日本は、またしても「タイの失敗」を繰り返すのか?。それとも「新政府」を打ち立てて、欧米に対抗出来るのか?。

 

正に正念場だ。