母はとんでもなく晴女だ。
小学校の教員をしていたのだが、
遠足レベルの行事では
ほとんど雨にあったことがないらしい。
(運動会や修学旅行などの全校規模の行事に関しては
校長によるところが大きいらしいのだが)
一方、私は雨女傾向がある。
いつもというわけではなく、天気のよいときもあるが、
運動会も遠足も雨のときがわりとあったし
高校の修学旅行(船旅で屋久島に行った)に関しては
船長さんが「私の経験上過去2番目に揺れました」
というほど荒天だった。
もちろん私だけのせいではないのだが、
自分が関わる行事のときに、という視点で見ると
雨のときがわりとある。
そんな二人が、週末に旅行することになった。
母もピアノが好きなので
フジコ・ヘミングさんのコンサートに行く、
というのを目玉にして
2泊3日の東京旅行を計画した。
金曜の15時半頃に飛行機で 伊丹→羽田
品川のホテルに泊まって土曜にコンサート、
もう1泊して日曜に帰宅、というスケジュール。
木曜日。
「今日の夜から激しい雨」という予報。
曇天ながらも穏やかな空で、
本当かな?と予報を疑うくらいだった。
機内持ち込み可能な大きさの
キャリーケースを持っていなかったので、
梅田に買いに行く。
軽くていいものがあったので購入。
そのまま引いて帰った。
そのときも雨は降っていなかった。
夕方になると(自宅にいたが)雨の音。
予報通り雨だ、とは思ったがそれほどでもなく、
明日は早いからと22時くらいに眠りに就いた。
金曜日。
朝から雨が降っている。
降ってはいるが"しとしと"と形容するのが適切な、
いわゆる普通の雨に見えた。
しかし雨は雨なので、
「これは晴女伝説も破られたか」と思いつつ支度する。
午前中は仕事なので、
パッキングしたキャリーケースを引きながら職場へ。
職場に着くと、
かなりの線状降水帯がくるという情報が入ったので
来るのは必須ではない、という状況だった。
(私はその連絡を見ていなかった)
確かにJRも計画運休を発表していたし
昼以降になるとかなり降水量が増える、
と気象庁も繰り返していた。
1時間ほど仕事をして職場をでる。
こういうのは早い方がいい。
電車も混まないうちに移動しよう。
伊丹空港に到着。このとき10:30頃。
JAL側のターミナルに行くと、すでにちょっとだけ不穏な感じ。
普通の平日よりはロビーにいる人の数が多い。
(以前伊丹空港で働いていたことがあるのだ)
不安そうに電光版を見る人たち、その視線の先には
たくさんの○の中にところどころ△や×の入り混じった表示。
とりあえず現金をおろし、状況を観察する。
どうやら北海道方面の飛行機が遅延しているようだ。
チケット購入、変更の列にはまだそれほど人は多くない。
母は自宅の最寄駅からリムジンバスに乗って空港に向かっている。
最寄駅から空港までの直通の本数は多くないので、
直通というところを優先して
早めの便で来ることになっている。
母の空港に到着する予定時刻は11:02。
東京行きの飛行機は
現状ではきちんと飛んでいるようだが、
これもいつ欠航になるかわからない。
時間が遅くなればなるほどその可能性は高くなるだろう。
チケット変更ができるなら、早急にしてもらう必要がある。
とりあえずロビーで母の到着を待つ。
母は、私は14時頃到着すると思っているから
(早く行くとLINEしたが既読になっていない)、
驚くかもしれない。
11時を過ぎて、
ビジネスマンと観光客が入り混じっているJALのロビーで
バスの到着場所や通路をじっと見る。
しばらくすると、エスカレーターで上に行く人の中に
母に似た人を発見。
電話を鳴らすと手提げカバンを探っているから
概ねまちがいないだろう。
果たして電話は通じ、
エスカレーターでロビーに下りてきてもらった。
座っていた席に母を座らせ、
すぐにチケットカウンターの列に並ぶ。
変更ができるかどうか尋ねてみたところ、
「本来は変更不可のチケットだが
いまは台風が来ているので変更許可がでている」
とのこと。
すぐに変更してもらい、
12:30分頃発の飛行機のチケットを手にすることができた。
いまこの瞬間だけ、台風に感謝した。
スタッフさんは大変だけど
本当にありがとうございます、と心の中で唱え、
いつもの2倍くらいお礼を言った。
母も驚きよろこび、
すぐに保安検査場に行って手荷物検査を済ませた。
晴女というのは天気が晴れということだけではなく、
行事に差し障りがなく進むあるいは
差し障りがあったとしてもスムーズにものごとが進む
可能性を秘めている人のことではないか。
母を見ていてそう思った。