夜更かしが好きだった。
夜、しーんとしている時間に起きていることに喜びを感じた。
中学生のときは、午前4時まで起きていることもあった。
次の日も学校があるにもかかわらず。
そんなことは関係ない、といわんばかりに。
でも、不思議なことに、何をしていたのかは思い出せない。
パソコンもなく、テレビを見るわけでもなく。
自分の部屋にあったのは、少しの本とマンガ、あとは勉強道具だけだったのに。
覚えているのは、時々、そっとベランダに出て空を見ていたこと。
星空のときもあった。
曇って、真っ暗なときもあった。
少し空が白んでいるときもあった。
漠然と、これから自分はどうなるのだろうと考えていた。
父と母が寝静まっていることを思い、こんなすてきな時間によく寝られるものだと思っていた。
大人になってわかった。
あのときは、可能性があり、責任がなかった。
社会人になってから、夜明けに居合わせたことはない。
明日の仕事のことを思う。寝なければいけない、と感じる。
そう感じればこそ、可能性のなさと責任を感じる。
ただ明日のことのみを思う。
その悲しさに、ときどき泣きたくなる。