夫の不倫が発覚した時、

私は妊娠中で臨月を迎えた頃でした。



とにかく、この子を無事に産むまでは、どうにか持ち堪えないといけない。



私が生きる気力を失ってはいけない。



そうやって、この子を守りお腹の中で育てることが、今一番大事なことだと決めました。



出産後、無事に産まれてきてくれた我が子を眺めていると、夫への怒りはどんどんどんどんマグマのように溢れ出してきました。



ある日用事があって電話をかけてきた母が、私の様子がいつもと違うことに気づいて、「何かあったの?」と聞いてきました。



言わないでおこう。と思ったのも束の間、悔しい!時いう気持ちが溢れ出してきて、なんで私がこんな目に遭っているのに、いつも「いい人面」している夫は何事もなかったかのようにこれからもいい人として過ごせるの?おかしい!腹が立つ!と思い、夫が不倫していたことを話しました。



私の我慢の上に成り立ついい人はゆるさない!!!という気持ち。



これは、母に感じていたことそのまんま。



母はいつもいい人面をしていると思っていた。

そんな母がゆるせなかった。



家でグチグチ言ってるの知ってるし、

ヒステリックに叫んでいることだって知っている

だらしないことも、家の中が片付けられなくてごちゃごちゃなのも知っている。



でも、綺麗にお化粧して、綺麗な服を着て出かけていく。仕事だってできる。人当たりがよくて、知り合いも友達もたくさんいる。



そのギャップ。

私は知ってるんだ。



医者の叔父はアルコール依存で、飲むと暴れて暴力を振るう。隠すように言われたけど、なんで私が?隠さないといけないの?一家の恥?わたしには関係ない!!と思っていた。



すべてばらしてやりたい!!!

その思いが沸々と湧いてくる。

でも、我慢しないといけない。

誰にも話しちゃいけない。



だって、そんなことしたら、私はつまみ出されて裏切り者〜!!って追い出されちゃうから。



私は夫の不倫のことを、夫の友人や知り合い、仕事関係の人、あらゆる人達にバラしてやりたい!!!という気持ちが収まらなかった。



幼い頃の気持ちが、夫に投影されて、感情が溢れて来たんだ。



夫の不倫のことを、言わないでおこう。と思ったのは、母の反応を瞬時に想像してしまったというのもある。



母はきっと「親の育て方が悪い!よくもそんなことができたわね、信じられない!」というようにきっと夫を批判し、非難するだろうと思ったから。



こんなしんどい時にまたこれかぁ。あなたの価値観でのジャッジを聞きたいわけじゃない。と、落胆したくなかった。



その予想に反して、母はただ泣いた。



私は、そうやっていつも、自分の発言→母の反応→自分の心の反応を想像していたんだろう。



そして、それから言葉が出なくて、お父さんに変わるねと父が電話に出た。



「お前の人生だ。ちゃんと2人で話し合って、これからどうするか決めなさい。」と言われた。



お母さんって、泣くんだなぁ...

母が泣いたのを見たことがなかった。



お父さんって、こんなに力強かったんだなぁ。



でも、決めなさい、なんて、あんたに偉そうに言われたくない。これまで、そんなに決めなさいだなんていうくらい、私に関わってきた??私の何を知っているの??



何も知らないくせに!!!



偉そうに指図されたくない。



偉そう、偉そう...!!

今更父親ぶるな!!

怒りが湧いた。



指図でもなく、別に偉そうに言ったわけでもなく、ただ思ったことを言っているだけなんだけど、私の傷がそう解釈した。



うるせーーーーー!!!

うるせーーーーー!!!

うるせーーーーよ!!!

と思いっきり言ってやりたかった。

思いの丈をすべてぶつけたかった。



でも、言っても無駄と思った。



どうせ、どの口が言ってんだ!とか、育ててもらったくせに!とか、恩着せがましいことを言われるだろうと思った。もしくは、てめーうるせーとはなんだ!!!って殴られるかも。とか。



殴られてそだったわけじゃないけど、父は怖い存在だった。



でも、これ妄想。



しかも、自分のエゴの声なのです。



なんとなく威圧的で、一回親族の前で変な箸の使い方をしたら、蹴られた。一回、兄の家族とバーベキューしている時に父を無視したら、トングを投げられた。それはあったけど。



母には言えた。

本当に言いたいことではなかったけど。



ただ、いつもは吠えている母にそういうことを言うとナメクジのように弱々しくなったから、なんだか色々言うと私が悪者にされているような気持ちだった。弱い者いじめしてると言われているような気分だった。



でもさ、本当に言いたいことって、うるせーよ!!じゃないんだよね。



お父さん、私に興味持ってた?

私に関心あった?私と関わろうとしてきた?



お父さん、寂しかったよ。



お父さん、力になって欲しい。

一人ではどうにもできない。

辛くなったら助けて欲しい。



真っ直ぐに言えたら良かったんだ。



言いたいことを言うって、こういうこと。



言っても無駄。

そうやって、恐れから自分を守ってきたんだろうなぁ。その本当の気持ちは拒否されるかもしれない、受け入れられないかもしれないと思って。



夫の不倫の話をした時、はじめて、

頼りにならない母。

口うるさい父。

そんな風に思えた。



いつも、逆に思っていた。



私が思っていた母と父は、本当は、私が思っていたのとは、違った。



お母さん、ごちゃごちゃごちゃごちゃうるさかったけど、エゴの声をべちゃくちゃと話していたんだろうな。



本当は、娘の悲しみに共感して涙が出ちゃうような人だったんだなぁ。



お父さん、いつもほとんど言葉を発しないけど、溢れんばかりの思いが胸の中にあったんじゃないかな。



何を見ていたんだろう。



見たいように見ていたんだろうなぁ。



本当の父と母って、どんな人なんだろうなぁ?

そう思うようになった。