今年も道端で黄色い可憐な花を咲かせて春の到来を告げる「タンポポ」が、あちこちで見かける季節になった。今年、すでに見た方も少くなくないだろう。僕は、今年の3月22日に、初めて『カントウタンポポ』に出会った。その場所は湯殿川沿いの遊歩道で、僕が「オオバン」と「バン」を観察する所だ。オオバンとバンが僕に『カントウタンポポ』の在り処(ありか)を教えてくれたのではないかと思われた。2回目の出会いは4月6日で、片倉城跡公園に桜の花やカタクリの花や水芭蕉の花を観に行った帰り、同じ場所で『カントウタンポポ』に再会した。ちなみに、日本で見られる「代表的なタンポポ」は外来種の『セイヨウタンポポ』と在来種の『ニホンタンポポ』だが、その雑種もある。ちなみに有名な『ニホンタンポポ』は『カントウタンポポ』だ。

ところで、「タンポポ」は最も代表的な「春の野の花」だが、不思議なことに万葉集・古今和歌集・新古今和歌集だけではなく、中世の短歌にも詠まれていない。『和名抄(わみょうしょう)』に「フジナ」また「タナ」とあるのが「タンポポ」で、その嫩葉(わかば)を食用に摘(つ)んだそうだ。春の野原の最も普通の雑草で、根元から幾重(いくえ)にも重なりあって出る葉は、柔らかくうす緑で鋸歯状(きょしじょう)(のこぎりの歯のような形状)に深く切れこみ、地面にはりついたように生える。茎葉(けいよう)を折ると、白い乳が出る。春の太陽の輝きをさながら吸収して咲き出したといった趣(おもむき)の花だ。西日本には、白、というよりクリーム色がかった花が多い。学者はとくに「白花たんぽぽ」という。いずれの種類の『タンポポ』も、花が終わって実になると白色の冠毛(かんもう)を生じて、『蒲公英』の絮(わた)が風のない日も、どこまでも飛んでゆく。

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『タンポポ・蒲公英』

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被子植物、真正双子葉類、キク科タンポポ属の多年草の総称。原産地はヨーロッパ。常緑性の多年草で日当たりのよい野原や田んぼの畔(あぜ)や道端や草地に生え、根際(ねぎわ)から羽状(うじょう)(羽のようなさま)に深く裂(さ)けた葉を放射状に出す。3月〜4月ごろ、その中心の根生葉から※花茎(かけい)を伸ばし、頂(いただき)に黄色または白色の※舌状花(ぜつじょうか)のみからなる※頭状花(とうじょうか)を開く。小花は全て舌状花からなり、多数の小花が集まって一つの花となっている。種子は上部に白い毛をつけて風に飛ぶ。ちなみに、若葉は山菜として食用とされ、根は民間薬とされて、漢方では催乳(さいにゅう)に用いる。日本では『カントウタンポポ』『カンサイタンポポ』『エゾタンポポ』『シロバナタンポポ』などの雑種が自生し、『セイヨウタンポポ』『アカミタンポポ』などが帰化している。なお、江戸中期にはタンポポの園芸がブームとなり、多くの園芸品種が作られたそうだ。

※ 「花茎」とは、地下茎や根から直接出て、ほとんど葉をつけず、花をつける茎(くき)。

 ※「舌状花」とは、花弁 (かべん )が合着し,上部だけが平らで 舌状に伸び,水平につきだしている 花冠 (かかん) のことである。   

※「頭状花」とは、花軸(かじく)の先端に二個以上の花が集まったもので、短い花軸の先が盤状(ばんじょう)になり、その上に多くの花が集まって付き、一つの花のように見えるもの。

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『ニホンタンポポ (日本蒲公英)』

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「タンポポ属」の中で在来種の、※総苞片(そうほうへん)が閉じている種類のものは、特に『ニホンタンポポ』と呼ばれる。 「繁殖力が高く幅広く分布」する『セイヨウタンポポ』に比べ、 『ニホンタンポポ』は「狭い範囲で繁殖」するため、『カントウタンポポ』や『カンサイタンポポ』など地方によって見られる「タンポポ」の種類が異なる。 古くは、茎(くき)を裏返して鼓(つつみ)を作って遊んだことから「鼓草(こそう)」と呼ばれた。 『タンポポ』の名前は、球形の綿毛の姿が綿を丸めて布でくるんだ「タンポ(短穂・打包)」に似るためや 鼓草の鼓の音を連想して、子供が「タン!ポンポン」とか「タンポポ」とか「テテポボ」とか言い出したためだと言われている。 なお漢字の「蒲公英」は、漢名の『蒲公英(ホコウエイ)』から取っている。

※「総苞 片」とは、花序(かじょ)(1個の花または花の集まり)のもとに多数の苞葉(ほうよう)(花序の基部にある特殊化した葉のこと)が密集したもので、その苞葉の1枚まい1枚まいのこと。

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『ニホンタンポポ(日本蒲公英)』の特徴
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在来の『ニホンタンポポ』は、『セイヨウタンポポ』と違い、自分の花粉を自分のメシベにつけても種はできず、他の株からハチやチョウが花粉を運ぶ必要性があるので、群生していないと種ができないというところが特徴だ。また、『ニホンタンポポ』は1つの花からできる種の数も『セイヨウタンポポ』と比べて少なく、1年中発芽できる『セイヨウタンポポ』と違って、その種は秋まで発芽しない。帰化植物の『セイヨウタンポポ』が在来種を駆逐する勢いにある。ただし、都会において急激に数を減らした原因は、人間が開発したことによって、発芽に時間がかかる在来の『ニホンタンポポ』』より先に『セイヨウタンポポ』が広がる下地を生み出したことが原因とされる。『セイヨウタンポポ』は日本の侵略的外来種ワースト100に選定されていて、環境省の「指定要注意外来生物」となっている。

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『タンポポの花』はどこか?

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「タンポポの花」というのは「小さな花の集合体」で、

その小さな花は全て舌状花からなり、多数の小花が集まって一つの花となっている。1枚の花には、それぞれちゃんと雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)がついている。小さな花の集合体なのでタンポポの種(たね)は丸い形になる。キク科の植物の多くは、このような集合した花を付ける。ちなみに、『二ホンタンポポ』は春に咲き、『セイヨウタンポポ』は春から秋まで咲き続ける。春以降、私たちの暮らしを彩ってくれる黄色い花を時には立ち止まってじっくり観察してみてはどうだろう。

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『二ホンタンポポ』と『セイヨウタンポポ』の特徴

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「在来種」の『ニホンタンポポ』には『エゾタンポポ』『カントウタンポポ』『カンサイタンポポ』など22種類がある。種子は比較的少なめだが大きくて、風に乗って飛ばされ、地上に落下しても秋までは発芽しない性質を持っている。夏場は自らの葉を枯らして根だけを残した休眠状態「夏眠」になり、秋に再び葉を広げて越冬する。このようなたくましさは、日本の自然環境に合わせた生活サイクルを身につけているからだといえるのではないだろうか。
「外来種」の『セイヨウタンポポ』はいろいろあるが、海外から入ってきた黄色いタンポポはすべて『セイヨウタンポポ』と総称されている。個体と花粉を交雑(こうざつ)しなくても種子をつくることができるため、繁殖力が極めて強いのが特徴だ。また種子が小さく発芽するときの芽も小さいので、他の植物が生えないような都市化された環境でも生育でき、豊かな自然環境が残るところでは生息が難しいといわれている。

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『二ホンタンポポ』と『セイヨウタンポポ』の見分け方

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『二ホンタンポポ』と『セイヨウタンポポ』は、どこを見れば見分けられるかと言うと、その最大の違いは、花のつけ根にある総苞片の形だ。『セイヨウタンポポ』は総苞片の外片が下に反り返っているが、『二ホンタンポポ』は上向きで内片に付いている。
『セイヨウタンポポ』の総苞片⇒下に反り返っている  (2024年4月11日)

タンポポの総苞片が明らかに下に反り返っている⇒『セイヨウタンポポ』(2024年4月11日)

『セイヨウタンポポ』とその総苞片(2024年4月12日)⇒総苞片が下に反り返っている

『カントウタンポポ』とその総苞片(2024年4月12日)⇒総苞片が下に反り返っていない

タンポポの花を包む総苞の形のちがい(学研の図鑑『植物』)

「タンポポ」を外で見つけることがあったらちぎって確認してみると良い。花の見た目は、ほとんど変わらないが、裏をひっくり返してみて、「反り返っている」のは『セイヨウタンポポ』、「反り返っていない」のが『ニホンタンポポ』だ。ふつう目にするほとんどの「タンポポ」が『セイヨウタンポポ』なので、めったに見ることのない『ニホンタンポポ』を見つけることができると、本当に嬉しくなる。

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『ニホンタンポポ』と『セイヨウタンポポ』が、それぞれ良く見られる場所
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繁殖力が強い『セイヨウタンポポ』は、ほぼ日本全域に分布している。都市化によって造成された土地に、よく見られる。里山のような昔ながらの土地に分布しているのが『ニホンタンポポ』だ。昔から環境が変化しにくい寺社仏閣の境内や昔からの田畑で見られる。

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「在来種と外来種の雑種」の存在
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最近では「在来種と外来種の雑種」が、非常に多くなっているということだが、環境省が行った「緑の国勢調査(2001年)」で全国の市民から集められたサンプルを調査したところ、「雑種のタンポポ」が全国に広がっているという結果が得られた。これらの「雑種のタンポポ」の中には総苞片の反り返り具合が弱く、「在来種と間違いやすいタンポポ」もあるそうだ。こうした「反り返りが弱いタンポポ」は、より在来種の特徴が出ている雑種で、「反り返りが強いタンポポ」は、より外来種の特徴が出ている雑種であると言われている。 

寺田町のセイヨウタンポポ(2024年3月22日)

大船町のセイヨウタンポポ(2024年4月7日)

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『セイヨウタンポポ』
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多年草。葉や茎を切ると白いゴム質の乳液が分泌(ぶんぴ)され、これによって虫に食べられるのを防いでいるが、これはアレロパシー作用(植物が放出する化学物質が影響して、他の生物に何らかの作用を及ぼすこと)を持っているからだと言われている。根茎(こんけい)による繁殖力が強く、どの部分の切片からも出芽する。日本では、在来種の『ニホンタンポポ』と違って、ほぼ一年中見ることができ、暖地では真冬でも花や綿毛も見ることができる。『セイヨウタンポポ』には「有性生殖」を行う2倍体と「無融合(ゆうごう)生殖」を行う3倍体があり、日本に定着した『セイヨウタンポポ』は3倍体で、「単為(たんい)生殖」で種子をつける。「単為生殖」、つまり「花粉に関係なく、種子が単独で熟してしまう」のだ。そのため繁殖力が強く、都市部を中心として日本各地に爆発的に分布を広げた理由の一つとされる。『セイヨウタンポポ』は、現在ではほぼ日本全国に広がっているが、古くからの田園風景の残る地域では在来種の『ニホンタンポポ』が勢力を持っている。そのため、「都市化の指標生物」になると言われている。『セイヨウタンポポ』は、あまり季節を問わず、黄色い舌状花を長い期間にわたって咲かせる。萼(がく)(花びらの外側の緑色のもの)のように見える部分「総苞片」が「開花時に反り返る」ことで、「花に沿って固く閉じる」在来種の『ニホンタンポポ』とは区別できる。ただし、在来種も「花の盛りを過ぎると総苞が反り返る」ので注意を要する。花は天気が良いときに開く。タンポポの特徴である綿毛・冠毛は開花時からすでにあり、花が咲き終わってから花が閉じ、花茎がいったん倒れたときに長く成長する。綿毛の根元には刺状(しじょう)(こぶ状)の突起(とっき)が付いた褐色(かっしょく)の果実がつく。この突起は、果実が綿毛と一緒に風に乗って飛ばされて、地面に着地したときのブレーキの役目をするという説がある。葉は鋸歯状(きょしじょう)に※深裂(しんれつ)するが、変化が大きい。※生育型(せいいくけい)は、※ロゼット型(がた)となる。   
※「深裂」とは、葉の形などで、緑が深く切れ込み中央近くまで達していること。

※「生育型」とは、生活型の一つで、植物を茎や枝の形状によって分類すること。

※「ロゼット型」とは、冬も緑色の葉を放射状に広げて地面にぴったりつけた状態で過ごすもの。この状態のことを、形が似ていることからロゼット(バラの花の意味)と言われている。

湯殿川沿いのカントウタンポポ(2024年3月22日)

湯殿川沿いのカントウタンポポ(2024年4月6日)

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『カントウタンポポ』

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『カントウタンポポ』は、関東や中部地方(静岡・山梨)を中心に生息するタンポポ。別名「アズマタンポポ」。日本に昔から在来する種類で、高さは10~20cm。茎は中空で、切ると白い乳液が出る。3月〜5月頃(春)になると黄色い花を咲かせる。「タンポポ」の中で開花時期が早いのが『カントウタンポポ』だ。野原、道ばた、草地、丘陵などに生える。「帰化種」が増えて「在来種」が減ってきている植物の中で減少が著しいのは否(いな)めないが、絶滅危惧種への指定はない。とにもかくにも『カントウタンポ』は数が少ないため摘み取らないようにしなければならない。花は黄色の舌状花からなる。花序の総苞(そうほう)が直立して閉じており、内片と外片に角状の突起があるのが特徴だ。※根生葉(こんせいよう)はロゼッタ状に生え、※倒披針形(とうひしんけい)で深く切れ込みがある。種子は少ないが、大きく重いのが特徴だ。この『カントウタンポポ』は花が咲き終わったら、2週間程度でフワフワの白い綿毛になる。

※「根生葉」とは、地面に広がって立ち上がっていない葉。

※「倒披針形」とは、植物の葉などの形を表わす語で、披針形(植物の葉などで平たくて細長く、先のほうがとがり、基部のほうがやや広い形)を倒立させた形。

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『セイヨウタンポポ』と『カントウタンポポ』『カンサイタンポポ』、『エゾタンポポ』との違いと見分け方

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『セイヨウタンポポ』は帰化種。『カントウタンポポ』、『カンサイタンポポ』、『エゾタンポポ』は日本の在来種。『在来種と帰化種の違い』は、「総苞(そうほう)の外片(がいへん)が反(そ)り返っているかどうか」で見分けることができる。「タンポポ」の花の下をのぞき込んで、花の付け根の部分が反り返っていれば『セイヨウタンポポ』で外来種の可能性が高いが、『在来種』はが外片が反り返っていない。『カントウタンポポ』は、この部分が全く反り返らない。

『カントウタンポポ』と『カンサイタンポポ』の見分け方は、『カンサイタンポポ』は「比較的に小型で舌状花(ぜつじょうか)の数が少ない」のが特徴だ。

『カントウタンポポ』と『エゾタンポポ』の見分け方は、『エゾタンポポ』には「総苞の外片に角状の突起(とっき)がない、あるいは小さい」のが特徴だ。