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3月8日は『ミモザの日(国際女性デー)』。僕は昨年、この日のことを「Amebaからのお知らせ」で初めて知りました。このお知らせを読んで、僕の足は隣町に向かっていました。実は、そこで二本の『ミモザ』の木を僕は見つけていたのです。上の2枚の写真はこの2本の木の花を撮ったものです。
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《ミモザとアカシア》
『ミモザ』
(1)オジギソウなど熱帯アメリカに多い「マメ科ネムリグサ属Mimosaの総称」。
(2)豪州原産の「マメ科の常緑高木、アカシア・デクルレンスの俗称」。葉は2回羽状複葉。4月〜5月、黄色で20花〜30 花からなる頭状花を開く。日本には明治初期に渡来、暖地に植えられ、切花ともされる。
『アカシア』
「マメ科の常緑高木」で、オーストラリアを中心とした熱帯、温帯にわたって約500種ある。(中略)花は黄色いものが多いが、まれに白色で、「球形の頭状花序」または「円柱状の穂状花序」をなす。(中略)日本には『銀葉(ぎんよう)アカシア』『フサアカシア』『モリシマアカシア』『サンカクバアカシア』『ヤナギバアカシア』『ウロコアカシア』『ソウシジュ』などが温室か暖地に植栽される。切り花に用いられる。「タンニン」「アラビアゴム」等をとる有用種も多い。
(『カラー植物百科』{平凡社}より)
ちなみに『フサアカシア』の花は「香水の原料」としても利用されます。
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残念なことに僕が愛用している「ポケット版『学研の図鑑2植物』」、「野外植物図鑑2『植物』」(旺文社)の2冊には何と『アカシア』も『ミモザ』も収録されていません。
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植物学上の『ミモザ』は、『オジギソウ』を指(さ)しますが、通称『ミモザ』と呼ばれているのは、「アカシア」の一種の『銀葉(ぎんよう)アカシア』です。この類が本来の『アカシア』で、日本で『アカシア』と呼ばれているのは正しくは『ニセアカシア』です。ちなみに『銀葉アカシア』は、「オーストラリア原産の常緑高木」で、「マメ科アカシア(acacia)属」に分類されます。『銀葉アカシア』が、この植物の「正式な和名」なのです。とにかく生長が非常に早く樹高が5m以上になります。2月から3月の花の時期には、「黄色い球状の花が穂状(ほじょう)に集まってたくさん咲き、木全体が黄色く染まるほど鮮やか」になり、芳香(ほうこう)を漂(ただよ)わせます。早春に「シルバーリーフ(銀色の葉)」と呼ばれる葉は「銀灰色(ぎんかいしょく)【銀色を帯びた灰色】」ですが、その特徴が「銀葉(ギンヨウ)アカシア」の名の由来です。「南フランス」では栽培が盛んで切り花として出荷され、『ミモザ』の名で親しまれています。
一方、日本では庭栽培(ガーデニング)にも適していることから、園芸店やホームセンターでも鉢植えや苗木などでしばしば見かけますが、その多くが『ミモザ』の名でも取引されています。しかしながら、厳密に言うと『アカシア』を『ミモザ』と呼ぶのは間違いなのです。
『オジギソウ』は「南米原産」ですが、古くから世界中に伝播(でんぱん)、繁殖していて、ヨーロッパでは『ミモザ』の名で親しまれていました。しかし、オーストラリア原産の『アカシア』が渡来すると、「両者の混同」が起きました。『アカシア』はヨーロッパに持ち込まれた時に『アカシア』の葉の形が『ミモザ(オジギソウ)』によく似ていたので、ヨーロッパではこの植物を『ミモザ』に似た『アカシア』ということで『ミモザアカシア』と呼ばれました。それが、いつしか「略称」の『ミモザ』の名が定着しました。
もともと『ミモザ』は「マメ科オジギソウ属」で、『オジギソウ』の「正式な学名(Mimosa pudica)」、この植物の「通称」でしたが、『別種の植物であるアカシア』の「通称」となったのです。『ミモザ』は『アカシア属』の「総称」ですが、日本では主に『銀葉アカシア』を呼ぶときの「通称(流通名)」です。また、『ミモザ』は「アカシア属の個々の品種の『別名』」としてもよく用いられる「名称」でもあります。『アカシア』は「マメ科アカシア属」なので異なる植物なのです。ですから、『アカシア』を『ミモザ』と呼ぶのは広まっているものの、厳密には間違っているのです。『アカシア』が「正式名」で、『ミモザ』は「通称」なのです。
ちなみに『アカシア』と『ミモザ』の違いは、「お辞儀をするかどうか」です。『ミモザ(オジギソウ)』はその名のとおり、「触れられるとお辞儀するように葉を閉じる性質」があります。その「お辞儀をするように葉を閉じる様子がパントマイムの元となった古代ギリシアの身振り演劇『ミモス』に似ていたこと」が『ミモザ』の由来です。なお『アカシア』は葉っぱに触れてもお辞儀をしません。『アカシア』は「アカオジギソウ属科に類する別種の植物」で「黄色の花を咲かせる」のに対し、『ミモザ(オジギソウ)』は「ピンク色の花を咲かせる」ところが違います。
日本では、伊豆や房総の暖地で切り花用に栽培されている『ミモザ』の花は、小さなポンポンが集まったように咲く姿が可愛らしく、元気をくれる「春を告げる花」だと言えます。果実は、5cm前後の豆果を多数つけ、6月下旬頃には紫褐色に熟して、裂(さ)けて種子を飛ばします。『ミモザ』は、夏ごろには来年の蕾(つぼみ)が目で確認できるほどに生長し、つぼみの状態から開花まで半年近くかかる花木(かぼく)です。夏以降に剪定(せんてい)すると、翌年の花が咲かなくなるので注意が必要です。
そんな『ミモザ』の代表的な花言葉は「感謝」です。『ミモザ』は、3月8日の『ミモザの日(国際女性デー)』に女性に贈られる、シンボリック(象徴的)な花でもあり、「別れや出会いの季節である春に贈る花」としてぴったりの花だと言えます。
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『ミモザ』を詠んだ俳句の紹介
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水原秋桜子
『ミモザ咲き 海かけて靄(もや) 黄なりけり』
山口誓子
『喪(も)の花環(はなわ) ミモザをはじめ 既(すで)に萎(な)ゆ』
富安風生
『ミモザ咲く 海風春を うながせば』
石田波郷
『祝婚(しゅくこん)や ミモザのもとに 咳(せき)こぼし』