【年長児の保育】お泊まり保育が不安だったA君 | 小金井市立けやき保育園 父母の会

小金井市立けやき保育園 父母の会

東京都小金井市にある認可保育園
「けやき保育園」に子どもを通わせる保護者の有志団体です。

こんにちは。今日はこれまで取り上げてきた年長児の保育、なかでもお泊まり保育についての最後のエピソードとなります。

 

※以下の内容は、第12回小金井市公立保育園運営協議会で市側の委員より発表された内容・資料を再構成したものです。

正式な資料・会議録は市のHPからご確認ください。

■お泊まり保育が不安だったA君
 
●不安→心の中がパニックに!
 
5歳児クラスに進級すると、子どもたちがお泊まり保育を楽しみにしている様子が見られます。しかし、お泊まり保育は「保護者と離れて保育園で寝泊まりするということ」。当然、楽しみな気持ちだけでなく、不安や緊張も抱えます。そういった不安や緊張を解きほぐし、楽しみな気持ちを高めていくためにも、7月に行うお泊まり保育に向けた取り組みを、4月から進めて行くというわけです。
 
A君は、不安になると心の中もパニックを起こしてしまい、大人に同じ事を何度も質問してしまうというタイプです。そのほか、大人と1対1でしか遊べなくなってしまったり、やりたくないことは「明日やる」と言ってしばらくやらないといった特徴もあります。「5歳なのでどんどんやらせてください」とA君の保護者は言いました。保育士さんたちは、どうすればA君がお泊まり保育に楽しんで参加できるかを考えながら計画を立てました。
 
●「わんぱくだん」からの手紙が怖い
 
その年のお泊まり保育のテーマは、絵本の「わんぱくだん」でした。みんな大好きなわんぱくだん。わんぱくだんから手紙が来たり、わんぱくだんの絵本と同じことを体験したりするうちに、子どもたちはわんぱくだんが実在していて「わんぱくだんが自分達を見てくれているんだ!」と信じるようになりました。
 
しかし、A君は姿の見えないわんぱくだんから手紙が来るということが不安でなりません。
「手紙が届いたよ」
そう大人が言うと、他の子ども達は「わあっ!」と飛びついてくるように喜びます。一方、A君は全く関心を示しませんでした。A君はたくさんの人が一斉に集まって賑やかになる状況も苦手。そこで、先生方は大人と1対1になって、A君の気持ちが落ち着いているときに一緒に手紙を読むようにしました。
 
●次から次へと進む活動に不安が募る
 
4月。子どもたちは、小金井公園へ遠足に行った時に1通目の手紙を発見しました。
お返事をみんなで書き、大人が小金井公園に手紙を置いてくると、また返事が来ました。
 
5月。お泊まり保育の夕食で食べる野菜を育てはじめたら、「育て方のコツ」についての手紙が届きました。続いて、お泊まり保育のときに着るおそろいのTシャツの染め粉と一緒に手紙が来ました。
 
このように、手紙は活動のサポートの役割も果たしているわけですが、A君にしたら、次から次へと活動が進む中で不安が募るばかり……。保育士さんがA君の保護者に尋ねると、「家ではお泊まり保育の話を一切しない」とのことでした。
 
6月後半になると、日中の活動でプールが始まります。そういえば、A君はプールが大好き!保育士さんたちは、「プールとわんぱくだんを絡められないか?」と考えました。
 
5歳児の特別行事のひとつとして、プール掃除があります。そのためにプールへ上がると……わんぱくだんからの手紙がありました!初めて手紙に反応して喜ぶA君。A君はわんぱくだんを信じるようになり、お泊まり保育に向けての活動にも積極的に参加してくるようになりました。
「家でもお泊まり保育の活動の話をするようになったんです!」
A君の保護者からもうれしい報告がありました。A君が不安になって嫌になってしまわないように、保育士さんたちは保護者と密に連絡を取り合って、「その日の様子から見た家でのフォローのポイント」などを話して協力してもらうようにしました。
 
●「泣かないで泊まれたよ!」
 
いよいよ、お泊まり保育の当日を迎えました。朝からやる気満々のA君。一方、保護者の方を見ると、「無理そうならお電話ください……」と不安顔です。
 
始まりの会を迎えると、A君はちょっと緊張した様子。担任の先生は常にA君のそばで声かけをし、見守ることで楽しんで参加できるように配慮しました。
 
お泊まり保育のメインイベントのひとつである「夜の探検」。ここまでうまく乗り切ってきたA君も、さすがに不安な気持ちが高まり、表情がこわばってイライラした様子に……。
「次は何が起こるの?」
「なんでこうなるの?」
「早く終わらせて!」
A君は矢継ぎ早に訴えてきましたが、保育士さんたちは何とか乗り越えてもらおうとサポートしました。
無事に乗り越えることができたA君は、それまでとは打って変わって生き生きとした表情。探検に参加していない大人にも、とても嬉しそうに報告していました。
 
保護者と離れて初めての就寝。担任の先生は、A君が安心して眠れるよう、添い寝をしました。夜中に目が覚めても不安にならぬよう、ずっとそばにいました。だから、トイレのために途中で目覚めたときも、落ち着いてもう一度入眠することができました。
 
そして迎えた朝。A君はとても自信に満ちた表情を浮かべていました。
「泊まれたよ!泣かないで泊まれたよ!」と少し興奮気味に話すA君。
泣いていたのは、お迎えに来たお母さんのほうでした……。
 
●いろいろな事をやってみたい!
 
このお泊まり保育は、A君に大きな自信をもたらしました。
「またお泊まり保育したい!」とよく言うようになったA君。
いろいろな事をやってみようという気持ちが芽生え、遊びの中でもお友だちに対して積極的な様子が見られるようになりました。
「Aがとても成長したように感じています」と保護者の方も語るほど。保育士さんもA君の今後を楽しみに見守っています。
 
いかがでしたか?保育士さんたちが、いかにそれぞれの個性を大切にしてくれているのかが伝わってくるエピソードでしたね。また、保育園は保育園、家庭は家庭と切りはなすのではなく、連続性を持った対応をしたことが、A君の不安を取り除く決め手のひとつになったこともよくわかりました。こうしたサポートの甲斐あって、何倍も大きく成長したA君。思わず胸が熱くなりました。
 
・参考