[家賃の値上げ]

 

 レストランが開店して四カ月目に、二十パーセントの家賃値上げとなった。 契約書に書かれていた値上げ期日が来たからである。 「まあ、仕方がないな」と諦めた。

 

 その一年後に百パーセントの値上げとなった。 そして翌年には、なんと最初の家賃の四倍となってしまったのである。 まさか地価の高騰はないだろうが、本当となったのだ。

 

 日本はバブル経済の最盛期、銀行はいくらでもお金を貸した。 私のレストランの数軒左隣に古い木造二階建てがあった。 一年前に家主が七十万ドルで手放した。 その建物をある日系不動産会社が四ミリオンの値を付けて買いたいと申し出たそうである。 本当に夢のような話があちこちで聞かれたのであった。

 

 日本からは地上屋がやってきて土地買いが始まった。 知合いの入っていた店舗、その建物が売られ無補償で立退きを迫られた。

 

 日本の大手保険会社数社が一等地を所有し、そこにホテルを建てると言う。 日本の有名結婚式場もホテル建築の為、広い敷地を購入したとか、巷からいろんな噂が聞こえてきた。

 

 ところが一向に建築を始めない。 そこでしびれを切らした当時のクィーンズランド州政府は、その着工を促す為に土地税をべらぼうに上げてきた。 その影響をもろに受けたのは、それを払っていた私たちテナントだった。

 

 やがてこの法律は改正され、家主が払うことになった。 ずっと後、1992年3月の事であった。 当然であり、遅すぎたと言えよう。

 

 

 

[横暴な不動産会社]

 

 ところで私のレストランでは、リース書類にマーケットバリューの一筆が入っているので、何の苦情も言えなかった。 そうこうしていると手紙が届いた。 そして大手不動産会社がこの建物のマネ-ジメント(経営管理)をすると言ってきた。

 

 ランドロ-ドが管理していた時には、建物のメインテナンス費用は家賃に含まれていた。 ところが不動産会社はメインテナンス費とマネージメント費の両方を余分に請求すると言ってきたのである。 そしてランドロ-ドに変わって交渉事の一切は、この不動産会社とすることになった。

 

きついランドロードだったから、そうなったので喜んだ。 不動産会社なら職業上、世間の常識をわきまえ、家主、テナントの仲に入って平等に舵取りをするだろう、良いマネージメントをするなら、それらの費用も惜しくはないと思った。

 

 ところが、しばらくして、ランドロ-ドよりも、ずっときつく横暴なことに気付いた。テナントをすべて敵と見なす態度、リース文書の盲点を見付け出しては、それを盾にして数々の要求をし、真綿で首を締めるが如くに圧力を掛けてきたのである。

 

 レストランの支払いは、シティレイツにランドタックス、マネージメント費にメインテナンス費、月に一度の下水漕の掃除費、飲食業登録料、雇用人年金と災害保険料、他に新しい法律が出来たと言っては当局から訳の分らない徴収が来た。 それに要となる、レントと経費、材料費、従業員の給料、そして店舗の火災保険等である。

 

 材料費も安くないレストラン業、純利益からの支出である。 余程、お客さんが入らないと儲けはおろか、その維持すらも困難となる。 それに町の中には、たくさんの日本レストランが出来、大競争となってきていた。