小学4年の春、母とデパートに行き、

“ある”階をうろついていると

同じ階にペットショップがあるのに

気づいた。

 

そこを通りかかった時に見えたのは、

鳥カゴのようなものの中に

入っていたたくさんのシマリス。

それがまだ子どものシマリスと

聞いた気がする。

 

まだ子どもなら、育て方次第で

すっかり懐いてくれるんじゃないかと

期待で膨れ上がった私は

どうしても欲しくて仕方なくなった。

 

ダメって言われるかもしれないけど、

怒られるのを承知で母に強請った。

 

当時、動物を飼いたくて犬が欲しい、

猫が欲しいなど、私がしょちゅう

喚いていたからなのか、

渋々とではあったが、

母はその場で買ってくれたのである。

 

今でも覚えているが1匹¥5000で、

理由は確か、“手乗り”

謳っていたからだと思う。

私はこの“手乗り”にすっかり

惹かれてしまった。

 

当時の、リス1匹¥5000は、

今思えば異常な値段だったのだが、

リスを手乗りとして手懐けるには

手間暇がかかることは知っていたので、

仕方ないのかもと勝手に思った。

 

もちろん、私はツガイで飼いたかったが、

その場で1万円も使うわけにいかず、

却下された。

 

しかし、飼育のための

金属製のカゴ(結構大きかった)、

餌箱、水飲み用のボトル、巣箱、

回し車など一式を買ったので、

1万円で済まなかったはず。

 

 

 

店のおじさんは私に、

「オスが良い?メスが良い?」

と聞いたので、メスを選んだ。

 

メス1匹では子どもは生まれないのに、

それでもリスの赤ちゃんが

生まれるかもしれないと

期待を捨てなかった無知な私。

 

おじさんはとりあえず1匹を掴んで

リスの腹部をチェックしてカゴに戻した。

そして、また1匹取り出しては

腹部をチェック。

そんなことを数回繰り返した。

 

おじさんが5・6回目で掴んだリスが

メスだった(らしい)。

 

おじさんは、そのリスなら良い状態だと

言った気がする。

毛並みとか体付きも良かった

(大きかったのかも?)ので、

それにした。

 

 

1週間も経たないうちに、

あのペットショップが

嘘を言っていたことくらい

私にも分かってしまった。

全然手乗りではなかったからだ。

 

自分でどうにか手乗りにしてみせようと、

私はカゴの中に入れた手に餌を乗せ、

リスに与えるようにした。

なるべく触れ合う作戦だ。

 

最初は冷たかったリスの手が、

何度も私の手のひらに触れて

餌を取っていくうちに、

だんだん温かくなっていった。

 

このようにしていくうちに

だんだん懐いてくれることを願った。

 

しかし、手乗りになることはなかった。

 

それどころか、水を取り替えようと

カゴの中に手を突っ込んだ瞬間、

カゴと手の隙間から

逃げられてしまったことがある。

餌をあげ続けていても

懐かなかったのだ。

 

その後、父親の協力があって、

なんとか捕まえることができた。

 

 

秋を迎えるとリスに異変が起きた。

 

キュン、キュン、と、近所にも響くような

甲高い鳴き声を発するようになったのである。

 

どうしたのかと、毎日観察しながら

私は嫌な予感がしていくのであった。