先日の「ホテルの予約、なんかオカシイんだけど・・・」の続きである。

 

 

NYにやってきた私たちは、マンハッタンにある大きなバスターミナルに居た。

 

夫も私もそれぞれ中型サイズのスーツケース、リュックサック(バックパック)、小型のバッグを持ち、私は更にペットボトルの水を数本入れた袋を提げていて、大荷物である。当初の計画では、タクシーで南マンハッタンにあるホテルへ移動するつもりでいた。

 

Uberも考えたが、私たちは今まで利用したことが全くなかったのと、NYでタクシーとUberのどちらを使う方が良いのか調べたところ、「Uberだと高くつく」という情報を得ていたので、タクシーしか考えていなかった。

 

しかし、このバスターミナル周辺で待機しているタクシーは、どれもこれも怪しげで、とても乗る気がしなかった。タクシーの運転手たちは車の外に立って、客を捕まえようと待ち構えていた。数人の運転手がたむろしながらバスターミナルから出てくる旅客に声をかけている。

 

その様子を見ていた私たちに一人の運転手が声をかけてきた。びっくりするほど聞き取りにくい英語を話していて、私には理解するのが一苦労だった。

 

その後の夫と運転手の会話はこうである。

 

 

運転手:「どこへ行くの?」

 

夫:「ここから南の方にある○○ホテルなんだけど・・・」

 

運転手:「は?なんだって?」

 

夫:「○○ホテルです」

 

運転手:「○○ホテル・・・、○○ホテル・・・(スマホで検索しながら位置を確かめているみたい)

 

そのホテルはそんなに無名ではないが、この運転手はいかにも“聞いたことがない”という感じの反応。ひょっとして、この運転手はNYの土地勘がそれほど無いのかもしれない、大丈夫なのかと私は疑った。

 

運転手:「うーん、(ホテルがある方向を指して)ここからあっちの方ね・・・。だったら、高速道路を通らないと行けないよ。」

 

夫:「高速道路?」

 

運転手:「ニュージャージーに一度出て、そこからグルっと回って行くしかない。運賃は50ドルだね。」

 

夫:「え?50ドル・・・?マンハッタン内を走れないの?」

 

運転手:「だって・・・、(目の前の道路の混雑した状況を指差し)見てみろよ、これだけ混んでるんだぜ?」

 

確かに、目の前の大通り(8番通り)は一方通行でタクシー専用道路の他に3車線あるが、通行する車が互いに退けろと言わんばかりにクラクションを鳴らし合うほど、ひしめき合っていた。

 

運転手:「ニュージャージーへ出て高速道路を走った方が早いんだってば。」

 

 

しかし、そんなルートを取り、ニュージャージーを回ったりすれば50ドルで済むわけがない。きっと100ドル、いや200ドル近くぼったくられる気がした。

 

車に乗せられてしまったら最後、こちらは人質状態となり、どうしようもなくなる。これは絶対にダメだと私は思った。

 

マンハッタンのバスターミナルから私たちのホテルまでは、車や地下鉄を使っても30分程度であることは分かっていたので、このタクシー運転手が言っていることには納得できなかった。下の地図に大雑把に描いてみたが、南へ一直線に下るだけである。

             

 

しかし、運転手はこのようなルート(青色で描いた線)を取りたかったのである。

             

 

 

マンハッタンの中央にあるバスターミナルからリンカーン・トンネルを通ってニュージャージー州へ一度出て南下し、ホランド・トンネルを通ってマンハッタン南部へ来ると言うルートだ。

 

夫は運転手にどう言い返そうかと、10秒ほど考え込んだ。

 

そこで私は、なんとかその場から離れるために、

 

「ごめん、お腹痛い・・・。トイレに行きたいんだけど・・・。」

 

と、私はトイレに間に合わないと言わんばかりに慌てたふりをした。

 

こうして私たちはバスターミナルのビルの中に戻り、どこできちんとしたタクシーを捕まえられるのか案内係に尋ねることにした。しかし、それは無駄なことだった。

 

ものすごく無愛想な案内係はいかにも面倒臭そうな口調で、先ほど私たちが居た場所を指差して、「あそこでタクシーを捕まえれば?」と言ったと思うと、「Next! (次の客、どうぞ!)」と、私たちの後ろに並んでいた他の客を呼びつけて対応を始めた。

 

この大荷物で地下鉄を使うのは躊躇われたが、いつまでもそこにいるわけにもいかず、少々嫌がる夫を引っ張って、私たちは地下鉄で移動することにした。

 

しかし、まだまだ小さなトラブルが続くのであった。