日本と比べると、アメリカのカスタマーサービスの対応は決して褒めらるものではないと思う。
客を神様扱いする必要はないが、時々、こちらの店員の対応を見ていて、これが日本だったら有り得ないと思うことがある。
先日、“ある店”のカスタマーサービスへ行く羽目になり、少しばかりであるが、久々にガッカリすることがあった。
その店のセールが始まってまだ2日目のこと。
その日は食料品・日用品の買い出しに行く予定で、3軒の店を梯子することになっていたので、ついでに“ある商品”を買ってきてくれと、我が夫に頼まれた。
頼まれたその品はセール対象でもあり、通常より4ドル安くなっていた。
そして店へ行ってみると、“ある商品”がどこにも置いていなかった。
セール対象品だから、もしかしたら特設ブースにでも移動になったのか?
だとしたら、それはどこ?
店員に聞きたくても店内をウロウロしているスタッフは殆ど存在せず、大抵はレジ、カスタマーサービスに居るくらいである。
買い物途中で店員にちょっと質問したくても、これでは不便である。私はしばらく歩き回って探した。
と、その時、店の入り口付近にあった張り紙のことを思い出した。
“本日の在庫切れの品物リスト”があったことを思い出し、私は入り口に戻って確認したのだが、そのリストには“ある商品”は載っていなかった。
ということは、やっぱり、店内のどこかにあるのか?
他にも買い出しで行かなければならない店があるのだから、この店だけであちこち歩き回っている時間など私には無い。
困っていると、ようやく若い1人の女性の店員がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
私は彼女に声をかけ、その品の在処を聞くと、
「それなら薬局の付近にあるはずですけど。」
と言われた。
もう散々探したが見当たらないことを告げ
「まさか品切れじゃないですよね?」
と言うと、
「それはないですよ。昨日からセールが始まったばかりですから、どこかにあるはずなんですけどね…。もう一度、あの辺を探してみて、それでも見つからなかったら、カスタマーサービスで聞いてください。」
あぁ・・・・・。
念のためにもう一度、この店員に確認したのだが、まさに、“もう一度あの辺を歩き回って探して来い”と言うのである。
これ、日本だったら多分、この店員がどうにも出来なければ他のスタッフに連絡を取り、私の問題を解決しようとしてくれると思うのだが、ここはアメリカ、そんな親切な人は居ない。
私は仕方なく言われた通り、もう一度、売り場を見て回ったが結果は同じ。とうとう、カスタマーサービスで聞くことにした。
カスタマーサービスには4箇所の窓口があるものの、スタッフは2人だけしかいなかった。1人は返品対応に専念し、もう1人はそれ以外に対応していた。
列に並び、私の順番が回ってきた。
早速、その“ある商品”を探していること、その品の特徴、その品が昨日から行われているセール対象品であることを言い終えると、すぐさま、
「正しい商品名は分かります?」
と聞いてきた。
「…いいえ」
と答える私に、
「じゃぁ、商品コード番号は?」
「分かりません」
「それじゃぁ、こちらでは何も出来ないですね。」
「どうしてですか?」
「(コンピューターで)調べるためには、正しい商品名かコード番号が分からなければ調べられません。」
と言う。
まぁ、そりゃそうかなと思った。検索するためのキーワード・コードが分からなければ、いくら便利なコンピューターがあってもどうにもならないのは理解できる。
しかし、商品が見つからず、私は困っていた。
このカスタマーサービスのスタッフの態度が悪いとは言えなかったが、あることが気になった。
カスタマーサービスで今月のセール情報が載った広告を何部か余分に、スタッフの手元に置いていないことである。少なくとも、私から見た範囲には最新の広告を余分に備えていなかった。
普通なら、2、3部くらいはカスタマーサービスに置いておくものだと思うのだが。
私と同じような質問をしてくる客は他にもいるだろうから、そのための対応に備えるのが当然だと思うが、それって、私だけの常識なのか?
いろいろ疑問に思いながら納得できなかった私は、こう続けた。
「ごめんなさい、家に広告は届いていますが、今は持ってきていませんし、商品名もコード番号も正確にお伝えできませんが、昨日からのセール対象品の1つになっている物ですから、広告を見て頂ければすぐに分かると思います。そちらに同じ広告は用意していませんか?」
と言ってみた。
「えーと・・・・・、こちらには無いみたいですね・・・・・。」
そう言って、スタッフは受付窓口付近をザーッと見回した。
本当に、ザーッと、である。
セール対象品を探して来店するなら、私も広告を持参すべきだっただろう。その点については、私の用意が悪かったと言えると思う。
でも、商品名もコード番号も分からなければ、
なーんにもしてあげられない、
と言いたそうな顔で、私を黙って見つめるスタッフ。
なんか、すごく嫌な対応だ。
そこで、
「そうですか。では、ここではどうにもならないのですね?」
と言ってみた。
すると、少し困ったように、
「…、お客様が商品名あるいはコード番号を言ってくだされば、お手伝い出来るんですよ。」
「では、私は他の誰に聞けばいいのでしょう?」
「店内にはスタッフがいますから、誰でもいいので聞いてみてください。」
私は思わず鼻でため息をついてしまった。
「あの、これまで売り場を10分近く歩き回り、ようやく捕まえたスタッフからカスタマーサービスへ行けと言われて来たのですが。」
私は努めて冷静に言った。
カスタマーサービスのスタッフが私の後ろに並んでいる客たちの視線が気になったのかどうかは分からないが、
「…、その商品って、一体どんなものですか?」
と、態度を一変させて私に尋ね出した。
いやいや、さっき、散々説明したじゃないかと心の中で私は思った。
あの時、スタッフは私の説明を全く聞いておらず、とにかく私が商品名またはコード番号を告げるのを待っていただけだったようだ。
でも、まぁいい。
スタッフがやっと、どうにかして調べようという気になったらしいので、私は再び、その商品について説明した。
スタッフは何度か商品名を挙げ、「これですか?」「じゃぁ、これは?」と言うふうに私に尋ねてきたが、どれも違った。
そして、
「通常価格は幾らのものですか?」と私に聞くので、
「19ー20ドルくらいだったと思います。」と答えた。
更に、今回のセール期間中は4ドル引きになっているなど、もう一度伝えたところで、スタッフはようやく、別の窓口にあった広告を手に取ってきて、商品を探そうとした。
私は思わずツッコミそうになった。
あなた、嘘をついていたんですか!?と。
さっき、カスタマーサービスには広告を置いていないと言っていたじゃないか…
スタッフは私が欲しい物がどれなのかよく分からないまま、広告のページを捲りながら探し出そうとした。
「多分、4ページ目か5ページ目あたりに載っていたと思うのですが。」と私が言うと、スタッフは諦めてしまい、広告を私に差し出した。
「どれか教えてくれます?」
と、言われ、私は広告の中の商品を指して見せた。
早速、コンピューターで検索を始め、
「あー、昨日のうちに品切れになったみたいです。既に発注をかけてありますが、次回の仕入れがいつになるか、こちらでは分かりません。」とのこと。
品切れになっているのなら為す術は無い。
もう、ここまで分かれば十分だったので、
「いろいろとありがとうございました。」
と伝えると、スタッフは
「いいえ、どういたしまして。」
と、笑みを見せたが、それが何を意味していたかは分からない。
面倒臭い客だなーと言う皮肉を込めたメッセージだったかもしれない。
でも、とりあえずは状況が分かったので、それで良しとした。
しかし、まさかの、セール2日目で品切れには驚いたが、やっぱりな…と思わずにいられないカスタマーサービスの対応であった。