最近、相手の映像を見ながら通話ができるアプリが充実している。その代表的なものが10年近く前まではスカイプで、最近ではフェイスタイムだろう。他にも、FacebookのメッセンジャーやLineでも可能だが、このビデオ通話が私はあまり好きではない。時と場合によっては、プライバシーの侵害になると思うからだ。

 

 

義父とその再婚相手である義父妻が、フロリダでのバケーションを控えた先週の金曜日のこと。私たちは突然に義父に呼びだされた。「一緒にディナーはどうか?奢るぞ。」と。

 

義父は勤務中だった我が夫にテキストメッセージ(iメッセージ)を送っていた。夫が夕方に帰宅するなり、「どうする?パパが夕飯に来いって言っているけど?」というので、「いつ?」と私は聞き返した。

 

「今」

 

「今、って今夜のこと?」

 

「そう。」

 

「え…。」と言う私に

 

「分かっているよ(私が金曜日は死んだように疲れていること)。でも、来週からパパたちはフロリダへ行くから、その前にってことなんだろう…」と夫。

 

私はこれから夕食の支度に取り掛かるタイミングで、食材を冷蔵庫から取り出して、ちょうど野菜を刻もうとしていたところだったのだ。

 

「じゃぁ、これ…、明日の夕飯に回すよ?」と言うと、夫は「いいよ。じゃぁ、パパのところへ行くんだね?」と私に確認した。

 

そして、夫はスマホを使ってフェイスタイムで連絡をすると、義父がすぐに出た。夫は通話中、何度もスマホを私に向けて、私の様子を映して義父に見せた。

 

フェイスタイムを使う時、夫はいつもこういうことをするのだが、正直、私を映すのは止めて欲しいと思う。何度か夫に止めて欲しいと言ったことはある。しかし、すぐに忘れてしまうようだ。

 

特にあの日は、掃除や洗濯などの家事で動き易いスウェット上下を着ていて、髪も適当に纏めただけだった。夫から見たら、私がみっともない姿をしているとは思えなかったのか、“映し出されることの何が嫌なのか解らない”ということらしい。

 

他の状況でも“私が嫌がる”ことがあるのだが、夫は普通の人と違って変わっているところがあるので、時々夫は、“普通の人が嫌がる感覚”が分からないのである。

 

よって、夫は「止めろ」と言われた時点で止めることは出来ても、次回には夫の脳がリセットされているようで、再び繰り返す有り様。

 

 

「それで、お前たちはこっちに来るのか?」と義父が訊くと、我が夫は返事をせずに、無言で再びスマホを私に向けた。

 

“なんでこのタイミングで私に向けるんだよ!?”と内心思った。こうなると、すべては“私次第”ということになる。

 

本当は夫の行動が癇に障ったが、私はそれに対して反応をしないようにした。スマホの画面の中では、“どうなんだ?”と言いたげに義父が笑みを見せていた。

 

私は困ったが、それでも無理にニッコリとして、「行くよ」と答えた。

 

「でもこの通り身支度が出来ていないから…。着替えてから家を出るから、そっちへ着くのは40分後になるけど、それでも良い?」と義父にいうと、「ああ、もちろんさ。待ってるよ。」と返した。

 

もともと乗り気で義父の家に行きたいという状況であれば、ノリの良い自分を見て貰えるのは良いことだし、私がどんなに小汚い格好をしていても、自分の姿を映し出されることをそれほど問題だとは感じないだろう。

 

だが、今はカメラに映りたくない時って、誰でもあると思うんだけど。夫にはそれが理解出来ない。

 

毎回、映すなと言わなければスマホのカメラを向ける夫。夫にも呆れるが、フェイスタイムのアプリ、こういう時は、本当に身勝手ではあるが故障してくれと思ってしまうのである。