先日、我が家の近所のオーガニック・スーパーで買い物をしていて、ふと思い出したことがあった。それは、私がアメリカに来て間もない頃、どうしても日本と比較して、ある食べ物について文句を言っていたことだ。

 

まず、寿司。

 

日本の普通のスーパーの総菜コーナーで買えるように、現在、こちらのオーガニック・スーパーでもパック寿司が売っている。

 

17年前、私がアメリカで暮らし始めたころ、自分で運転して出かけられる状態じゃなかったため、あまりお店の探検をすることが出来ず、パック寿司が普通のアメリカのスーパーにあったのかどうかは確認したことがない。なので、あの頃、既に出回っていたのかどうかも分からない。

 

当時、私がアメリカのレストランの料理に疲れを感じ始め、いろいろなことでストレスを溜めていると、夫が電話帳(!)で調べては、あちこちの和食レストランに連れて行ってくれた。

 

レストランでは普通の家庭料理ではつまらないので、寿司を頼むことが多かった。普段のアメリカ料理で疲れた胃腸をリセットするなら全く違う料理が良い、それなら寿司だろうと勝手に思っていたのだ。

 

夫が頑張って連れていってくれたにもかかわらず、残念ながら当時は美味しい寿司はどこにも無かった。

 

漁港が近いとか海が近いとかリベラルな人が多いという地域以外では、寿司ネタの鮮度が悪いのは仕方ない。ただ、シャリの味が殆ど無いのがどうしても気に入らなかった。

 

多少は寿司酢が使われていたのだろうが、その味はよく分からないほど、ただの白いご飯を丸めただけという感じで、論外だと思った。

 

有難いことに最近では、ネタもそこそこ良いものが使われているケースが増え、酢飯の味は段々ハッキリした感じになり、美味しいものに変わってきていると感じる。

 

現在、一般的にスーパーのパック寿司には、握り寿司があるとしたらかなり優秀であるが、大抵の場所ではカリフォルニア・ロールを中心に巻物が多くなり、玄米を使った巻物、胡麻を振りかけたもの、天かすを沢山使って唐辛子を散りばめたような寿司(キュウリ、カニカマ、海老やマグロが芯になった巻物)が多い。

 

しかし、日本から来たばかりの厳しい目でジャッジすると、これらはどうしても紛い物に見えてしまうらしい。そして、昔の私のように、「こんなの寿司じゃない!」と言うのかもしれない。

 

 

それから、苺。

 

日本の苺は進化を続け、果肉は軟らかくて糖度が高く、とても美味しいものが沢山ある。それに比べるとアメリカの苺は劣る。あんなに美味しい苺に慣れていたら、外国産が不味く感じるのも無理はないだろう。

 

それでも、私の渡米当時に比べたら各段に良くなっていると思う。あの当時はどんなに見定めて買って来ても、どれもガジガジとして硬く、酸っぱかった。生食用には向かず、スムージーにしたりジャムにするしか使い道が無かったような気がする。これでは苺のショートケーキなんか作れるはずもなかった。

 

現在では、普通にカリフォルニア産の苺を買い、生食、ケーキのデコレーションにも使っている。昔に比べたら果肉が軟らかく潰れやすくなっているので、店で買う時はパックの中をよーく確認してから選ぶようにしている。ちょっと酸っぱいものに当たることもあるが、昔の酷い状態を知っている分、申し分ないと言う感じだろうか。

 

でも4~5年前、以前、日本人が多く暮らす街に居た時、日本から移住してきたばかりの人は、アメリカの苺を扱下ろしていた。まるで私が昔、アメリカの寿司を貶していた時のように。

 

昔は美味しくなくて不満が一杯だったが、今は慣れたせいなのか、あるいは、食そのものの改良が進んだからなのかは分からない。でも、美味しくなったなと思えることは、ある意味で幸せである。

 

実は最近、あるレストランで意外な美味しいものに出会ったのである。

 

それはまた次回。