【テーマ・こくご】


春、きみは
ふわりとぼくの前にあらわれた

華やいだ香りをまとって

誰もがきみに恋するさまを
ぼくはさくらの木の陰でそっと
おそるおそる眺めていた




夏、きみは
唐突にぼくの前にあらわれた

煮えたぎった狂気をまとって

降りかかる火の粉を払いながら
いつしか業火に焼かれるきみを
ぼくはただ見つめていた




秋、きみは
当たり前のようにぼくの前にあらわれた

見る影もない姿をさらして

渇れ果てた涙の行方をぼくは
探り当てようとしたのだろうか
はじめてきみを抱きしめた




冬、きみは
たぶんきっとぼくの前にあらわれた

かすみがかった哀しみをまとって

誰もがきみを忘れたけれど
さくらの木の陰でぼくは
いつまでもきみを想っている




また、春が巡ってきみは
ぼくの前にあらわれるだろうか

溢れんばかりの愛をまとって

誰にもきみは見えないけれど
さくらの木の陰にはいまでも
きみの香りが漂っているよ