【テーマ・りか】


ひとにやさしい生理食塩水も
溶媒が蒸発すれば塩化ナトリウムがあらわれる

塩水とあなどるなかれ

浸透圧の変化は細胞を破壊する威力がある


いま
たとえ話という溶液がある

いかなるものも溶かしてしまう
驚異の溶媒である

不安定なしろもので
ころころと性質や濃度が変化するが

なかなかにして
蒸留が難しい



しかし

ある日突然
天変地異が起こるように
こころの持ちようが変わったら

たとえ話の溶媒が
一気に蒸発してしまい
見たくもなかった結晶が
パラパラとあらわれる
かもしれない

たとえ話とあなどるなかれ

その正体には
ひとのこころを破壊する威力がある



浸透圧を等しく保つ

かなしみも
にくしみも

あらゆる感情は
水溶性であると思う


ひとが水を欲する理由には
様々な事情があるようだ


【テーマ・こくご】



ある屠殺場で
肉体は死んだ

十分に血を抜かれ
ほどよく解体され

パック詰めされたかと思えば
金ではかれる価値を与えられ
市場で買われた

おそらくこれからは

鍋のなかで茹であがり
旨味たれにつけられて

咀嚼され飲み込まれるだろう


恨むべき相手もない
恨むべき運命もない


肉体は辿るべき道を辿る


精神は宿るべき所に宿る


看取るべきは肉体だが
新たな血肉に変わったのちは

どう見届ければよいやら




それがわかれば
煮え立つ鍋も
怖くはなかろうに



【テーマ・こくご】


ホントはわかっているんだね
自分がどんな風に生きてるか
どうして棚にあげちゃうのかな
あとからのお楽しみにしたいから?


ホントはわかっているんだね
自分も他人もおんなじだって
どうして棚にあげちゃうのかな
高いところから眺めていたいから?


ホントはわかっているんだね
他人のなかに自分がいること
どうして棚にあがっちゃうかな
一緒になるとツライから?



棚にあげて戸を閉めて
なかったことにしてみたら
急にお利口さんになったと勘違い
向かうところ敵ナシで
あるコトないコト
言いたい放題やり放題


棚にあげて戸を閉めて
なかったことにしてみたけど
一番オイシイところは
大事に仕舞ってあるって勘違い
いつでもご褒美欲しいから
ナンでもカンでも
手当たり次第てんてこ舞い



棚にあげて戸を閉めて
忘れた頃に戸を開けて

棚からぼた餅見つけたら

これ幸いとは食いつけず

ホントはわかっていたことを
思い出してなみだが出るかな