日本では連日の様に与党自民党の裏金問題がニュースになっているが東南アジアの越南(ベトナム)でも越南共産党政権の汚職が大きな問題となっている。越南の国家最高指導者である阮富仲(グエン・フー・チョン)は2016年より「聖域なき反腐敗闘争」を掲げ汚職や腐敗に厳しい処罰を科してきた。

国家最高指導者 阮富仲(グエン・フー・チョン)

【越南を悩ませる深刻な汚職】
 
 越南は建国以来越南共産党による一党政権が続いており政治的に深刻な腐敗が以前より報告去れていた。2014年に非政府NIO組織「国際情報連盟」が発表した汚職度の数値である世界腐敗度認識指数CPIでは、越南は180カ国中、80位と東南アジアの主要国の中で最も汚職が激しい国となった。

 国民の中にも政治家の汚職への不満が募る中最高指導者である阮富仲総書記は「聖域なき反腐敗闘争」と銘打ち越南共産党の内部改革を進めていった。

【聖域なき反腐敗闘争】
  2014年、最高指導者の阮富仲と張晋創(チュオン・タン・サン)越南大統領は聖域なき反腐敗闘争により企業と政界の癒着や民間人の不正を追求、捜査し数百人以上の汚職犯を検挙していったという。

【上層部にも捜査の手】
阮春福(グエン・スアン・フック)

 次第に反腐敗闘争の捜査の矛先は上流階級の中央にも波及するようになる。2022年には越南共産党最高幹部約5人が不正蓄財や資金洗浄などの汚職の罪で粛清された。翌2023年には航空会社と癒着し資金の不正貯蓄などで副首相、保健大臣、首都ハノイ市長らが逮捕され同様の疑惑が持たれていた阮春福(グエン・スアン・フック)大統領が責任を取り辞任し越南共産党から除名された。
武文症(ヴォー・ヴァン・トン)大統領

 阮春福大統領退陣後、最高指導者阮富仲に近い武文賞(ヴォー・ヴァン・トン)が第11代大統領となったがやはり脱税や収賄、不正蓄財などの汚職容疑で今年2月に越南国会で弾劾され越南共産党から除名粛清された。越南では第8代大統領の張晋創以降まともに5年の任期を満了した大統領はいない。
越南国会議長 王延恵(ヴォン・ディン・フエ)
 
 先月2日には越南国会議長の王延恵(ヴォン・ディン・フェ)が収賄や不正蓄財などの汚職の容疑で国会議長及び国会議員を辞任し失脚した。王前議長の側近らは次々と逮捕されており王前議長も検察による捜査を受けている。

 
 なかでも越南のこの「聖域なき反腐敗闘争」で最も重い罰を受けたのが越南四大財閥で世界的大手不動産会社の萬盛開発の社長張美蘭(チュオン・ミー・ラン)である。
警察に拘束される張美蘭(チュオン・ミー・ラン)

 張美蘭は、越南の世界的不動産「萬盛開発」を創業し1990年代には越南国際銀行の最高取締役を務め東南アジア1の富豪といわれていたが2022年に不正蓄財、収賄、資金洗浄などの容疑で逮捕粛清され今年4月に複数の汚職などの罪で死刑判決を言い渡された。

【反腐敗闘争の今後の展開】
蘇林(トー・ラム)大統領

 先月22日には最高指導者阮富仲氏の下で検事総長として阮春福、武文賞両大統領の政権の汚職スキャンダルなどを捜査した蘇林が大統領に就任。蘇氏は反腐敗闘争を更に展開し収賄や不正蓄財、天下りなどの捜査を継続すると宣言している。

【日本が見習う点】
 越南政界は日本と違い政治家や実業家といった権力者でも汚職やスキャンダルが起きれば潔く要職から辞任するし検察の捜査を受けるという特徴がある。また越南は汚職に対する処罰が大変厳しく最高刑で死刑である。

 一方で日本では裏金スキャンダルなど不祥事を起こした政治家は基本的に辞任せずバックレ逮捕されても保釈金を払って出てくる。日本も腐敗汚職などの罪は越南の様に金額の量次第で死刑判決が下せる程に法律を厳罰化すべきではなかろうか?