三つの衆院補欠選挙(28日開票)が迫っている。東京15区、長崎3区、島根1区の3つの選挙区で衆院議員が選出される。この内、既に東京15区、長崎3区での与党自民党の敗北が、ほぼ確定的となっており残る島根1区を死守する事が自民党の戦略的な課題となる。


【歴史的保守王国 島根1区】

 

 島根1区は、歴史的に見ても自民党が圧倒的に強く山口県鳥取県といった他の山陰地方の県と共に保守政党である自民党の有力な地盤とされている。


自民党最大派閥 細田派(清和会) 細田博之会長 2023年没

 特に島根1区では、自民党が圧倒的に強く1960年から1990年までは運有大臣などを歴任した細田吉蔵氏が、1990年からはその息子で自民党最大派閥元会長の細田博之氏が2023年に他界するまで島根選出衆院議員を務めた。

 自民党の細田父子が合計63年に渡って支配したこの島根1区は、保守王国や自民王国と揶揄された。しかし細田氏は統一協会との癒着疑惑自身が会長をつとめた最大派閥細田派(清和会)の裏金汚職事件などが影響して晩年は有権者の厳しい非難に晒されていた。
 
【与野党一騎打ちの構図鮮明】
衆院補選 島根1区の与野党候補
 
 最大野党の立憲民主党を中心とする野党連合は元衆院議員の亀井亜紀子氏を擁立、自民党の地盤の切り崩しを狙う。

 一方自民党も細田博之議員の統一教会との癒着疑惑裏金汚職事件などのスキャンダルのイメージを刷新する為、細田一族から候補者を擁立させず新人の錦織功政氏を立て地盤死守の構えを見せた。
 
 ただ当の島根県民の自民党に対する評価は冷やかだ。故細田氏に対し「ええ加減にせぇっちゅう気持ちだ」「地元に何も貢献しとらん」「所詮親の七光りで登り詰めただけのダラズ(山陰地方の方言で馬鹿の意)じゃけぇ」などといった冷やかな声が挙がっており後任の錦織氏に体しても「何も期待しとらーせん」など長年地元を裏切ってきた自民党に対し地元民は我慢の限界がきているようだ。もし島根1区で自民党の地盤が崩れるような事があれば山口県鳥取県といった他の保守地盤も崩れる可能性があり次の衆院選での自民党議席減となってしまう。その為自民党もかなり躍起になっているのだ。

【首相も現地入りの総力戦】

島根で街頭演説に望む岸田首相

 岸田首相ら自民党幹部らが総出で21日に島根選挙区へ応援演説に入った。文字通り総力戦での選挙区死守の構えを見せる自民党だが保守市民からも歓迎されていない。ある自民党員が「党員として恥ずかしい」「自民党は変わらなければならない」と発言したと朝日新聞や産経新聞などの主要メディアが伝えた。

 一方最大野党の立憲民主党の泉代表も現地入りし亀井候補を全面的に応援した。

 結果は28日に開票されるがこの選挙が島根県の変革、政治体質の変化に直結する事を願うばかりだ。