2月16日金曜日、ロシアから衝撃的なニュースが流れてきた。野党指導者として長年プーチン大統領の強権的な政権と戦っていたナワリヌイ氏が死去したというのだ。


ロシアの著名な野党指導者の一人ナワリヌイ氏

 ナワリヌイ氏は1976年にロシアの中流家庭に生まれロシア諸民族大学(現ルムンバ大学)卒業後、弁護士として社会的弱者を助ける人権派弁護士として活動、2000年に発足したプーチン政権を当初支持していたが一転して批判するようになり2009年に政界進出し2012年に野党「進歩党」を結成2014年には「反汚職基金」を設立し会長に就任した。

 その活躍からナワリヌイ氏は国際社会からも高く評価されサハロフ賞やBBC表彰、更にノーベル平和賞候補にも名が上がるロシアの代表的な野党指導者となった。

政権への抵抗を呼びかけるナワリヌイ氏

●政府への抵抗の象徴的存在
 多くの方々が承知のとおりロシアでは政府(プーチン政権)への批判は厳しく取り締まられており野党などは政権による激しい弾圧に晒(さら)されてきた。

 2012年にはプーチン、メドベージェフ両大統領と与党「統一ロシア」の汚職を追及していた野党共産党のセルゲイ・ウダルツォフが逮捕され疾走(しっそう)、2015年にはプーチン大統領の別荘を巡る汚職疑惑を追及していた野党改革党のボリス・ネムツォフが殺害され2021年には反戦を訴えた野党民主党のイリヤ・ヤシンが逮捕されている。

 ロシアの主要メディアである国営放送やロシア2TVでは野党や反政権派の人物の情報は流す事が許されず反政府派や野党はSNS上で情報発信をしているがSNSも政府の検閲が入るため大多数のロシア国民はプーチン政権の独裁や反体制派への弾圧の実態すら知らない。

 そんな言論統制下のロシアで多くの国民から高い知名度と支持率を誇っていた野党指導者がナワリヌイ氏だった。

 公正な選挙が殆(ほとん)ど行われていないロシアにおいてナワリヌイ氏はモスクワ市長選挙に立候補しなんと与党候補を破り当選した。最終的にプーチン政権の圧力と就任妨害により選挙結果は無効にさせられたものの政権側はナワリヌイ氏の知名度の大きさを改めて実感させられることとなった。

 ナワリヌイ氏は2018年のロシア大統領選挙への立候補を目指したが政権からの脅迫文や暗殺未遂事件などの嫌がらせを受け断念。2020年には何者か(ロシアの諜報部隊と後に判明)に化学兵器ノビチョクを吸わされ瀕死の状態に陥っていた。

 その際ドイツに政治的亡命するという選択肢もあったがナワリヌイはロシアに留まり2021年に国家反逆罪で逮捕、服役していた。国際社会からはナワリヌイ氏を支援する声が多く上がり国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」はナワリヌイ氏を「良心の囚人」に指定した。
 
 しかしその2年後24年2月16日に死去したのだ。つい先日2日にもロシア大統領選挙での反プーチン派への「有益な」投票方法を野党のSNSで呼びかけたばかりだった。
●独裁を固めるプーチン
 ロシアの代表的な野党指導者ワリヌイ氏の死去についてロシア当局は自然死だと主張しているがその可能性は低い。軍閥ワグネルのブリゴジン司令官の殺害やイギリスに逃亡した国家諜報員の毒殺などを見てもまずその可能性は低いだろう。

 メドベージェフ、プーチン政権下で行われてきた野党や反体制派への弾圧は拷問、秘密警察による処刑、暗殺、謀殺、誅殺など反憲法的な手法が用いられてきた。今回のナワリヌイ氏死去の一件も同様と見てよい。

 今回の大統領選挙では反戦活動家のナジェジジェン候補やリベラル派野党の民主党候補で初の女性大統領を目指したいたドゥンツォワ候補などが立候補資格を剥奪されその他の野党候補らもプーチン政権への忠誠を求められた。

●専制支配に抵抗する人達
 

ナワリヌイ氏の追悼集会参加者を逮捕拘束するロシア警察

 ナワリヌイ氏の妻はドイツで開かれた国際会議に急遽(きゅうきょ)参加しナワリヌイ氏への追悼演説が行い独裁や強圧に決して屈しない姿勢を示した。アメリカのバイデン大統領やEUヨーロッパ連合は哀悼の意を表明しロシア政府を批判した。誰かが必ず意志を引き継がなければならない。でなければ抵抗の目はつまれ暴君の支配は永遠に続く事になる。

●弾圧しても抵抗の芽は完全に   摘まれない
ナワリヌイ氏同様中国政府による暗殺が疑われている李克強前国務総理

 ロシアのナワリヌイだけではない。サウジアラビアではムハンマド皇太子兼首相の独裁政治を長年批判してきた反体制派ジャーナリストであるカショギ氏がトルコのサウジ大使館内で殺害された。中国では終身永世国家主席の地位を目指す独裁者習近平国家主席と対立していた李克強前首相(国務総理)が不審な死を遂げた。

 またミャンマーや香港では反政府デモが武力で鎮圧され多数の犠牲者を出しミャンマーの民主活動家や香港の民主活動家らも当局に弾圧され殺害されたり亡命などで排除されている。

●日本も強権的支配政権
 強権的な政権と対峙し命を落としたという例はなにも外国だけではなく日本も同様だ。戦前は社会民主党の創始者である幸徳秋水(こうとくしゅすい)が天皇に反逆したという理由で処刑された(大逆事件)。1924年には治安維持法も制定され社会主義者や共産主義者が逮捕され激しい拷問などで獄中死した。小説「蟹工船」などで知られている著名な小説家の小林多喜二も治安維持法違反で逮捕され拷問死した。

 戦後は自民党主導の憲法違反の日米安保改定に民衆や学生が蜂起し大規模な反政府デモが発生し(反安保闘争)、政府が投入した警察機動隊との衝突でデモ隊に参加した女子大生が死亡する事件が発生した(樺美智子さんの死)。

 そして現在は自民党の岸田が首相に就任し増税や物価高、円安などで日本経済を危機に陥(おとしい)れ国民を苦しめている。更に岸田政権は緊急事態条項(憲法や基本的人権を停止させる措置)の導入を推進している。もし緊急事態条項が成立すれば日本は今のロシアやサウジアラビアのような国になってしまうだろう。

自民党が掲げる緊急事態条項の内容

野党令和新選組代表の山本太郎参院議員

 岸田政権の打倒と国の変革を日本をいや世界を変えるきっかけにしなければならない。まずは高すぎる税金を廃止する事を考えねばならないだろう。緊急事態条項改憲も阻止しなければならない。日本のナワリヌイこと山本太郎議員には是非とも公約に掲げている消費税廃止を実現するために岸田政権と戦い続けて欲しい。