進撃の巨人 完結編 前編 第二章 罪人たち
☆前のお話は → 「完結編 前編 第一章 地鳴らし」
★Part 2 → 「The Final Season 第76話~第87話 あらすじまとめ」
★Part 1 → 「The Final Season 第60話~第75話 あらすじまとめ」
★1期 → 「進撃の巨人 第 1話~第25話」
★2期 → 「進撃の巨人 第26話~第37話」
★3期 → 「進撃の巨人 第38話~第59話」
「燃料が...」
「ああ...半分しか入れることができなかった...」
「スラトア要塞までもつかな...」
「絶対にたどり着いてみせる。ハンジさんが繋いでくれたこの飛行艇...最後の望み...俺が必ず基地まで届けてみせる ! 必ずだ ! 」
「だから...必ず地鳴らしを止めてくれ。何としてでも...」
「ああ。頼んだよ。オニャンコポン」
「じゃあ...作戦を話し合おう。兵長とピークが見た始祖の巨人はこんな形でいい ? 」
「ええ。よく見えたわけじゃないけどね」
「要はバカでかい骨の塊が動いてる。虫みてぇにな」
「普通に考えるなら頭部のうなじに本体はいるけど...」
「戦鎚と同じ手がある限り絶対じゃねぇ」
「つまり...エレンがどこにいるかわからない」
「どこにいるかわからなくても...まとめて吹き飛ばすことはできる。あなたがレベリオ軍港を跡形もなくしたように...あなたの超大型巨人なら」
「確かに...それが一番有効なやり方だ。でもそれはエレンとの対話を尽くしてから...それでも他にエレンを止める術がないときの...最終手段だ」
「最終手段があるに越したことはないがエレンはジークを介して始祖の巨人を支配してんだろ ? 先にジークを殺しちまえば地鳴らしは止まるんじゃないのか ? 」
「確かに...そうかもしれません ! 」
「確証はないがハンジはそう予想した」
「それもジークの位置がわからないんじゃ...」
「探すしかねぇだろ。あの骨の中から獣のクソ野郎を...」
「...ジークは...俺が仕留める。力を...貸してくれ」
「兵長...もちろんです。この飛行艇を飛ばすために仲間を大勢ころしました。あれを...無意味な殺りくにするわけにはいきません...すべては...地鳴らしを止めるため。俺は何だってやります」
「俺は...サムエルとダズを撃ち殺して知ってる顔をめちゃくちゃに斬り刻んだ...裏切り者って言われながら...世界を救うためだって言い聞かせて...なあライナー...お前も...ベルトルトもアニも...辛かったよな...」
「もう贖うこともできない罪だ...残りの人類を救ったって...一生自分を許すことはないだろう...だから...まあ...せめて...残りの人類を救おうぜ...」
「...そうだなライナー。贖うことができなくても...とにかく...やるしかねぇよな...」
「そうだ...俺たちは同じだ...ライナー。お前を責める資格なんてなかったんだ...俺は...人を救うため人殺しになった...」
「ああ...レベリオ襲撃の夜に...エレンに同じことを言われた...俺は...エレンの考えてることが少しわかるような気がする...」
「どういうこと ? 」
「あ...いや...そう思うってだけなんだが...」
「ずっと...疑問に思ってた...エレンはすべての巨人とエルディア人に影響を与えることができる。なのに僕らは変わりなく巨人の力を使えるままだ」
「エレンは意図的に我々を放任してるってこと ? 」
「そう...自由にやらせてる。まるで...僕たちがどうするのかを試すみたいに」
「どうして ? 地鳴らしを止められるかもしれないのに ? 」
「あいつだって...辛いはずなんだ。人類虐殺なんてとても...耐えられることじゃない。俺だったら...もう始祖の力を誰かに任せてしまいたい。それができなければ終わりにしてほしい...誰かに...」
「え ? 」
「何だ...聞いてやがったのか ? 」
「エレン ! 聞いてくれ! もう十分だ ! きっと...これから何百年先、誰もパラディ島に手を出せない ! それほどの恐怖と破壊の限りが尽くされた ! 今なら不可侵条約を結んで終わりにできる ! これ以上誰も殺さなくていい ! 島はもう大丈夫だ ! 」
「僕たちが悪かった ! エレンをここまで追い込んだのは僕らだ ! 」
「エレン...エレン ! 後は俺たちで何とかするから ! もう俺たちのために虐殺なんてやらなくていい ! 」
「ああそうだ...エレン ! サシャのことでお前を憎んだけど...本当はお前だって悲しかったんだよな !? なのにちっとも、お前の立場になろうともしなかった ! 」
「エレン...私は...あなたの罪を一緒に背負いたい。あなたと同じ罪が...私たちにもある。だからもう私たちを遠ざけないで...だから...お願い...帰ってきて ! 」
「だとよエレン。今ならケツに蹴り入れるだけで勘弁してやる...おい ! 何とか言ったらどうなんだ ? 」
『地鳴らしは止まらない。パラディ島の未来を運に任せて放棄することもない。俺は進み続ける』
「エレン ! 」
「子ども !? じゃねぇか ? 」
「でも...あれはエレンだよ ! 」
「エレン ! 」
「なぜダメなんだエレン !? 俺らが信用できねぇってのか !? 」
「どうして僕らが巨人の力を使えるままにしたんだ !? ここならいくらでも話せるだろ !? 話してくれよ ! 僕らはずっと一緒だ ! もうこれ以上、遠くへ行かないでよ ! エレン !! 」
『俺は自由を手に入れるため世界から自由を奪う。だがお前らからは何も奪わない。お前たちは自由だ。お前らが世界の自由を守るのも自由。俺が進み続けるのも自由。互いに曲げられぬ信念がある限り俺たちは衝突する。俺たちがやることはただひとつ。戦え』
「そんな...じゃあ何で...僕らをここに呼んだんだよ」
『話し合いは必要ないと話すため』
『俺を止めたいのなら俺の息の根を止めてみろ。お前らは自由だ』
「どうやら...俺の予想は当たったようだ...」
「どうしても...ダメなのか...」
「交渉の望みは潰えたらしい...どうする ? 団長」
「これからどこへ ? 」
「これから数日をかけてヒィズル国に...ミカサ様一行が地鳴らしを食い止めると信じています。ですが...すでに国としては立ち行かない状況にあるでしょう」
「しばらくは魚しか食べるものがなさそう」
「ヒィズルの魚料理は絶品ですよ」
「よかった...あ...鳥も食えるか」
「ジークとエレンを結びつけたのは私です...この大虐殺を招いた罪を贖う術など存在し得ないでしょう...」
「じゃあ...もしまたやり直せるならエルディア人に干渉せずパラディ島を皆殺しにする ? 」
「時が遡ることはありません...ですが後悔が絶えることはありません。エルディア人の生きる道を私はすべてを尽くして模索したとは言えません...一族の利益と家名を守ることを何よりの務めとしてまいりました...どうして...失う前に気付けないものでしょうか。ただ...損も得もなく他者を尊ぶ気持ちに...」
「でも...もう...遅い」
「アニさん。俺...夢を見たんです」
「夢 ? ガリアードの ? 」
「ジークさんの夢...いや、記憶です」
「確か女型の巨人は他の巨人の一部を取り入れることでその能力が発現するんでしたよね ? 」
「まあ...女型は特に発現しやすいから、いろいろ飲まされたけど...それが何 ? 」
「やっばりだ ! じゃあ ! 」
「じゃあ、もしかしたら何とかなるかも ! 」
「いや...でも、まさかほんとに ! 」
「うるさいガキども ! 石炭でも運んでな ! ...ジークの記憶を見たって言った ? 」
「はい...僕はジークさんの脊髄液で巨人になりました。だから獣の巨人の特徴が発現しているみたいなんです」
「そう...それで ? 」
「一番よく見る記憶は...雲の上を飛んでいた記憶です...そして...それが僕にもできる...そんな感じがするんです ! 」
「あれがスラトア要塞...本当に飛行船はあるのか ? 」
「さあな...あの岩山を登らなきゃわからないが本当に飛行船を奪って逃げられると思っているのか ? お前らエルディア人が...」
「口に気をつけろよマーレ人。お前がまだ踏み潰されてないのは誰のおかげだ ? 」
「飛行船がダメならお前の家族も地鳴らしで死ぬ。お前が裏切っても撃たれて死ぬ。家族全員で生き残るにはこれしかない...望みが低かろうと関係ない。必ず生き残るぞ」
「大丈夫だよブラウンさん。あの子たちは強い...きっとコルトとライナーと一緒に...」
「私たちの子は悪魔の島にいるんだろ !? とても生きていけるわけがない ! 」
「戦士なんかになろうとしなければ...最期まで一緒にいられたのに...」
「フィンガーさん...その腕章、窓から捨てろよ」
「これは娘が俺なんかのために、すべてを犠牲にして得た腕章だぞ...」
「そんな...飛行船が...」
「急げ ! 1機でも残っていればいい ! 」
「わかってる ! 」
「おい...何だ... ? あの煙...」
「地鳴らしだ...ついに...追いつかれた...」
「ダメだ ! 1機も残ってない ! 」
「そんな...ここまで来たってのに...」
「何で...」
「もう終わりだ...」
「待てよ...あの飛行船...巨人どもに向かっていくぞ ! 」
「どういうことだ !? 」
「爆撃だよ ! 巨人の手が届かねぇ空から吹っ飛ばすんだ ! 人類すべての命運を懸けるつもりだ ! 」
「爆撃だって...? 」
「俺たち助かるのか !?」
「飛行船部隊とこの要塞にいるすべての兵士に告ぐ」
「ここが人類に残された最後の砦となる ! 諸君らの双肩にのしかかる重圧は計り知れない...だが...結果がどうあろうと決して諸君らだけの責任ではない ! 」
「この責任は...我々すべての大人たちにある ! 憎しみを利用し憎しみを育み続け憎しみに救いがあると信じ...我々が至らぬ問題のすべてを悪魔の島へ吐き捨ててきた...」
「その結果...あの怪物が生まれ我々が与え続けてきた憎悪を返しにきた...もしも再び未来を見ることが叶うなら二度と同じ過ちは犯さないと...私は誓う」
「私は...あの子をずっと...復讐の道具に...」
「まだ...母親らしいことを...何も...」
「俺もだ...」
「皆もどうか誓ってほしい。憎しみ合う時代との決別を」
「飛行船部隊、隊列整いました ! 」
「目標高度に達し次第、爆撃開始します ! 」
「互いを思いやる世界の幕開けを...」
「ここで...私たちの怪物との別れを ! 」
「進撃の巨人に動きが ! 」
「爆撃を開始しろー !! 」
「落とせー ! 」
「高度が高く集弾率が低いようです ! 」
「続けさせろ !! この攻撃にすべてを懸ける !! 」
「飛行船部隊...全滅...しました」
「すまない...」
「罪のない子供たちよ...」
「ねぇ...お母さん...巨人がこっちに来るよ...怖い...」
「ごめんね...」
「きっと...アニもライナーもパラディ島で生きている」
「ええ...」
「あれ...」
「何だろう ? 」
「見えた ! 飛び降りる準備を ! 」
「オニャンコポン ! お前も早く来い ! 」
「まだだ ! 始祖の真上まで舵を取る ! 俺はその後、不時着してみせる ! だから確実に始祖の元に降りろ ! わかったな !? 」
「チッ... ! いやがるな...」
「獣のクソ野郎が ! 」
「探す手間が省けた ! 攻撃目標、獣の巨人 ! これにすべての力を用いて撃滅 ! 地鳴らしを食い止める ! 」
「鎧の巨人に...車力の巨人まで !? ...あれは立体機動装置...まさか !? パラディ島勢力が地鳴らしを止めに !? 」
「エレン...もう一度、質問させてくれ。君のどこが自由なのかって」
「そこから引きずり出した後...」
【完結編・後編 2023年 秋】