進撃の巨人   #85   裏切り者





☆前のお話は → 「The Final Season 第76話~第84話 あらすじまとめ

☆  Part 1   → 「The Final Season 第60話~第75話 あらすじまとめ

★1期 → 「進撃の巨人 第 1話~第25話

★2期 → 「進撃の巨人 第26話~第37話

★3期 → 「進撃の巨人 第38話~第59話



「まさかフロックの動きがここまで早いとは...」



「我々はイェーガー派に飛行艇を壊されたらおしまいなのだが...なぜやつらはそうしない?」
「さあねぇ...おそらくはエレンを止めようとする私たちの存在に確信が持てないんだろう」



「船を壊すのは簡単だけど世界が滅べば失われた技術の再現に何十年とかかる。無人の大陸がほしいのなら飛行艇はなおさらほしいはず。港を占拠した一番の目的も船や技術者をもつアズマビトを押さえることだったのかもしれない。だけど...そんな彼らも私たちがここにいるとわかれば...即座に飛行艇を粉々にするだろう」



「その阻止は九つの巨人であっても...困難だ」






「だがここでつまづくようでは到底始祖には敵うまい。作戦を...」









「やつらを一瞬で皆殺しにする。飛行艇を確保するにはそれしかない」






「そのために巨人の力もあんたたちの武器もすべて使う。いいね?」



「...ちょっと待てよ...」
「どうして?」
「港を見境なく攻撃すればアズマビトまで巻き添えになる」
「...そうだ! 」



「あんたの遠い親戚も私たちにとっちゃ故郷を攻撃した敵なんだけど」
「いいや...アズマビトに死なれたら困るの。アニちゃん」



「そうなんでしょ」
「そのとおりだ。飛行艇の操縦だけなら俺だけでも何とかなるだろう。だがアズマビトの整備士がいなければ飛行艇は羽のないボートのままだ」



「現在、飛行艇は海で曳航しやすいように羽が折りたたまれている。無論その羽を伸ばせば飛べるというものでもない。本来の計画なら格納庫に入れて整備、点検、飛行訓練の後にようやく運用に至る手はずだった」



「それは...どのくらい時間がかかる?」
「わからない...アズマビト次第だ」



「そう...つまり...アズマビトを守りつつ飛行艇を整備する時間も稼がなくちゃならない。その上、邪魔をしてくるイェーガー派からは死傷者を出したくない...とでも言うつもり?」
「出したくねぇよ...訓練兵からの同期もいるんだぞ」
「じゃあどうするの? 教えてくれる? どうやって襲いかかる敵から死者を出さずに飛行艇とアズマビトを無傷で守りつつ整備にかかる時間を稼ぐのか...」



「教えてよアルミン。私を追いつめた時みたいに作戦を教えて」



「...」



「そんな作戦はない。一瞬で片がつくか...しくじって飛行艇を失うか」



「...待てよ...俺たちは人を助けるためにここにいるんだぞ!? なのに...まずやることが島の連中の皆殺しかよ!! どうしてこうなんだよ!?」



「そうね...そもそもあんたたちには、こんなことに付き合う義理なんかない。こんな選択を突き付けられることも」



「あんたたちならあの日、壁を壊すことを選ばなかっただろうね。私たちと違って」
「! 」



『やっぱり俺は...お前と同じだ』
(あれは...そういうことか!...)



「お前たち4人は戦わなくていい...ガビとファルコと一緒に安全な所で見ていてくれ。イェーガー派に見つかれば否が応でも選択を迫られるだろう。ただし...何も手出しするな」
「ただ殺し合いを見てろってことかよ...」
「かと言って巨人が暴れてどうにかなる問題か...?」



「私は観客になる気はないよ。イェーガー派ならもう4人殺したことだしね」



「何より...人類にはもう時間が残されていない」



「沖で大量の蒸気を上げながら進む巨人が見えた。その速度から推測するに...すでにマーレ大陸には上陸している。ここから近いマーレ北東の都市は壊滅しているだろう。こんなに早く海を渡れるとは思わなかった...既にどれだけの人々が殺されたことか...」






「エレン・イェーガーの行先を言え!! 」



「言うまで腕の関節を増やし続ける!! 」
「マガト!! 」
「怖がらなくていい。殺しはしない! 」



「それはよかった...気が変わった...この成り行きを見届けるまで...死にたくない。私を連れて行けば...エレンの行き先を言うかも...しれない」



「飛行艇の確保が先だ」



「今、拷問をしている時間はないだろ! 」






「コニー、アルミン、ミカサ、ジャン」



「昨夜の私の態度を詫びたい。我々は...間違っていた」



「軽々しくも正義を語ったことをだ。この期に及んでまだ自らを正当化しようと醜くも足掻いた...卑劣なマーレそのものである自分自身を直視することを恐れたからだ」



「君たちに責任はない。同じ民族という理由で過去の罪を着せられることは間違っている」



「ピーク、アニ、ライナー。お前たちも世界の憎しみを一身に背負ういわれはない...だが...この血に濡れた愚かな歴史を忘れることなく後世に伝える責任はある。エレン・イェーガーはすべてを消し去るつもりだ...それは許せない。愚かな行いから目を逸らし続ける限り地獄は終わらない」






「だから...頼む...我々の愚かな行いに...今だけ目をつむってくれ」



「...断ります。手も汚さず正しくあろうとするなんて...」



「見てくださいよ。あの蒸気を。今日ほど歴史が変わる劇的な日はないでしょう。ヒィズル国ももちろん例外じゃありません。文明の痕跡は跡形もなく消え去り真っ新な土地に生まれ変わる。煩わしいことはもう何もありません」



「あなた方はただこの島に貢献してくれればいいのです」



「幸いにしてヒィズルの優秀な技術者がここにいるわけですし...」



「ね? これ以上部下を減らしたくなかったら、ちゃんと言うことを聞かせてください」



「大変ご機嫌のところ申し上げにくいのですが...」
「え? 」



「一体何が変わったとお喜びなのでしょうか? これでパラディ島は安泰だとお考えのようでしたら...お気の毒に...ただ世間が狭くなるだけのことです。何も変わらず同様の殺し合いを繰り返すことでしょう」



「ご忠告、痛み入ります。確かにそのような気がしてきました。大事なのは身の程を弁えることでしょう」



「ヒィズルの技術など必要ない。飛行艇も航海術も我々の身の丈には合わない代物だと欲を断てば不安の種は摘める...いいですか? 大事なのは身の程を弁えることです。わかりましたか? 」



「フロック!! どこにいる!! アズマビトはどこだ!? 」



「アルミン!? ...今までどこにいた? 何を騒いでいる? 」



「車力の巨人を追ってたんだよ!! やつら鎧と一緒だ!! 海を泳いで逃げた!! 早くしないと逃げられる!! 今すぐ飛行艇が必要だ!! 急いでアズマビトに飛べるようにさせろ!! 」



「...何を言っている? 」



「君こそ何をやってるんだ!? 車力を追ってなかったのか!? 南に逃げるに決まってるだろ!! やつらは...ジャンとオニャンコポンを殺したんだぞ!? 」
「アルミン!! 飛行艇はあそこだ!! 」
「フロック!! 急いでアズマビトの整備士を連れてくるんだ!! 」






「止まれ!! 」
「止まるんだ!! 」
「ダズ!? サムエル!? 何をやってるんだ!? 」



「...ありゃ爆弾か!? 」
「今すぐアレを取るんだ!! 」
「海に逃げたマーレの残党を! その飛行艇で追うんだよ! 」
「待て! 」
「落ち着けよ! ふたりとも! 」



「実は...お前たちがマーレとグルになって...この飛行艇を使って地鳴らしを止めようとしているんじゃないかって...疑いが...」



「...そ...そんなことやるわけねぇだろう!! 」
「そうだよ!! エレンを止めたらこの島はどうなるんだよ!! 」



「...だ...だよな...」
「俺たちせっかく助かるのに...お前らがこの島をまた危険にするわけないよな...」



「...あたりまえだろ!? 」
「よかった...お前らが裏切ってたらどうしていいかわかんねぇし...」



「いいから早く...!! 爆弾を取ってくれよ!! 」









「でもな...お前らなら敵国だろうと...エレンの虐殺を止めるんじゃねぇかって...そんな気もしたんだ」






「...どうした? 起爆装置を外したぞ? 」



(あとは...フロックがアズマビトの整備士を素直に渡してくれれば...完成した飛行艇にどうにかしてみんなを乗せてここを去る)



(すべて成功すれば無用な血は流れない...)






「何か...おかしいと思いませんか? 南へ逃げるとわかっている敵を追うなら機関車を使ったほうが早い。馬を休ませながら移動するよりずっと...やつらがコソコソ動く理由は...いや...確証は持てない...」



「でも...やっぱり不安の種は摘んでおくべきか」






*銃声3発



(失敗した...)



「おい!? 」
「フロック!? 」



「クソっ!! 殺せ!! 」



「ただで死んでなるものか!! 」






「キヨミさん!! 」



「敵襲!! ミカサ!! アルミン!! コニー!! エルディアを裏切った!! 殺せえええぇぇ!! 」






「窓から雷槍を撃ち込まれる!! 地下まで走って!! 」






(始まってしまった...こうなったらもう...イェーガー派を殲滅するまでやるしか...!!)



「ミカサ様!! 」






「こっちだアズマビト!! 地下で攻撃をしのぐ!! 生きたければ付いてこい!! 」






「...おい」
「ダズ!! やめるんだ!! 」



「アルミン!! 」
「動くな!! 」



「サムエル...」
「ダズ...早く飛行艇を爆破しろ...早くやれ!! 」
「サムエル...なあ...」
「裏切ったんだろ? コニー...」



「一緒に土地を増やして...肉を食おうって...言ったのによぉ...ああっ...ちくしょう...何で...こんな...」



「このままでは袋のネズミです!! 時間をかけて殺されます!!」
「これでいい!! 我々が安全ならやつらは存分に暴れることができる!! 」



「地下に逃げたぞ!! もっと爆弾を持ってこい!! 」






(逃げ場のない地下に籠るつもりか!? )



(いや...まさか...!!)












「やっぱりダメか...なぜこうなるんだ...」



「人から暴力を奪うことはできないよ。ねぇ? 兵長」





















「ダズ!! 爆破しろ!! 」



「やめろよぉ...!!」



「アルミン!! 」
「裏切り者!! 」



「何でだよ!? 俺たちは仲間じゃないのかよ!? 」



「お...お前たちは仲間だよ!! でも...俺は...!! 」






『誰かがやらなくちゃいけないんだよ...』(ベルトルト)



「うわぁぁぁ!! 」



「や...やめ...」



*アルミンにもベルトルトの声が...
『誰かが...自分の手を血で染めないと...』



「うっ...うっ...うわぁぁぁー!! 」

★次回 『懐古』

進撃の巨人85-85