進撃の巨人   #73   暴悪





☆前のお話は → 「第60話~第72話 あらすじまとめ

★1期 → 「進撃の巨人 第 1話~第25話

★2期 → 「進撃の巨人 第26話~第37話

★3期 → 「進撃の巨人 第38話~第59話

☆ニコロが働くレストランでの話の続き。アルミンがガビに「...殺す殺すって君はそればっかりだね。誰かとそっくりだ」と言ったところに、その誰かさんがぬるっと現れて、話がしたくて来たと言い出したところから。



「静かに話したい...エルディアの問題を解決するのに争いは無用だ。ハンジさんたちなら大丈夫。ここから移動してもらっただけだ」



「エレン...君と話したかったのは僕らの方さ。どうして単独でマーレ襲撃に至る選択をしたのか...」



「...本当にジークやイェレナに懐柔されてしまったのか...」



「俺は自由だ」
「...え?...」
「俺が何をしようと、何を選ぼうと、それは俺の自由意志が選択したものだ」
「イェレナと密会した後の行動も、エレンの自由意志なの?」
「そうだ」



「いいえ。あなたは操られている。あなたは敵国とはいえ関係のない人々や子供を巻き込むような人じゃない。そして誰よりも私たちを思い大切にしてきた...そうでしょ。あの山小屋で私を助けてくれたのは...マフラーを巻いてくれたのは...あなたが優しいからでしょ?」
「手はテーブルの上に置けと言っただろ」



「俺はレベリオでジークと話をした。兄弟水入らずでな。ジークは巨人についてマーレが知っている以上の知識を手にしている」
「アルミン。お前はまだアニのところに通っているだろ。それは本当にお前の意識か? 」
「!!...なッ、何を...!?」
「記憶が人を形成するのなら、お前の一部はベルトルトになっちまったんだよ。敵国兵に恋心を抱く。敵国兵にな。アルミン、お前の脳はベルトルトにやられちまった。敵に操られているのはお前の方だろうが」
「エレン、あなたは...」
「ミカサ、お前もだ」



「アッカーマン一族はエルディアの王を守る意図で設計されたんだよ。あの時お前は、死に直面する極限状態の中で俺の命令を聞いた『戦え』と。その瞬間お前の本能が目を覚ましたんだろう。偶然、俺を護衛すべき宿主だと錯覚したことでな」
「違う」
「違う? 何がだ?」
「偶然...じゃない...」



「あなただから...エレンだから...私は強くなれた。それは、あなただから...」
「力に目覚めたアッカーマンは突発性の頭痛を起こすことがよくあったらしい。本来の自分が宿主の護衛を強いられることに抵抗を覚えることで生じるらしいが心当たりは?」
「...ない」
「要するに、本来の自分を失いただ命令に従うために作られた一族。つまりは奴隷だ」
「やめろ、エレン」
「俺がこの世で一番嫌いなものがわかるか? 不自由なやつだよ。もしくは家畜だ」
「エレン」
「そいつを見ただけでムカムカしてしょうがなかった。その理由がやっとわかったよ。何の疑問も抱かずただ命令に従うだけの奴隷が見るに堪えなかった」
「俺はガキの頃からずっと、ミカサ、お前が大嫌いだった」
(原作の「嫌い」が「大嫌い」になってる~(/_;))



「エレン!! よくもミカサを!!」
「...ミカサ?」
「...お前はただそうやって、アッカーマンの血が反応するままに生きてきた」



「ち...違う...」
「お前はただ、それだけだ」





「なあ、アルミン。お前とは昔からケンカしたことなかったよな。何でかわかるか?...お前と俺じゃケンカになんねぇからだよ」



「...もう...やめて」
「最初に言った通り、お前らがジークの居場所を教えるってんなら、俺たちは争う必要はねぇ。だから大人しく付いてこい」
「連れて行け。サシャを殺したガキもだ」



「...それで? 結局何が...言いたかったんだよ...? ミカサを傷つけることが君が求めた自由か...? ...どっちだよ。クソ野郎に屈した奴隷は...」
「ッ...誰が...奴隷だ...行くぞ」
「どこに?」



「始まりの地。シガンシナ区へ」



「冗談じゃねぇ。巨人に食わせるべきクソ野郎は他にいる...ジークの『獣』を他のやつに移す。イェーガー派とかいうのを一人でも捕らえて巨人にしジークを食わせてやれ。エレンが本当にジークに操られているのか知らんがジークさえ失っちまえば連中はおしまいだ。ピクシスにそう伝えろ。行け」
「本気ですか兵長...」
「やつの手足でももいでおけば、じいさんも腹くくるだろ」



「読書は楽しいか?」
「面白いよ。7回も読んだ割には」
「俺たちの会話が気になって集中できなかっただろ」
「7回も読んだ本に熱中しろってか? ところでワインはもう残ってないのか?」
「ひと月もここにいるんだぞ。一滴も残ってねぇよ」
「まったく...ひでぇ拷問を考えるもんだ...」
「読書を続けろ」
「了解だボス」



(ピクシスの返答がどうであろうと奴を切る。完全武装の兵士が30名。この森を上から囲んでいる。獣の巨人になろうと奴に逃げる術はない。やはり髭面野郎は俺たちの敵だった。それが判明した時点で人質に手足をつけとく理由はねぇよな)



(...長かった。エルヴィン...あの日の誓いをようやく果たせそうだ。お前たちの死には意味があった。それをようやく証明できる)



ジークが走り出して、



叫ぶ。





兵士たちが巨人化して落ちてくる...





「何だ...」「一瞬、体が痺れて...」「俺も」「俺もだ...」
 アンカ「え...? 私は何とも」
ピクシス「...」



ナイルたち憲兵も。



ファルコ「体中に電気が流れたような...」



ジーク「お別れだ兵長。部下思いのあんたのことだ。多少大きくなったぐらいで何にも悪くない部下を切り殺したりなんかしないよな?」



「ワインだと...? どうして任務中に酒がいる?」
「兵長。これは憲兵の連中しか飲めなかったマーレ産の希少なやつなんですよ」
「少しくらい楽しみがないと...」
「紅茶があるだろ...めんどくせぇな...いいだろう。持っていけ」



「...ジークの脊髄液がワインに...いつから仕込まれていやがった...体が硬直する予兆はなかった。嘘だったから?」
「クソッ、速えぇ...動きが普通じゃねぇ。これもジークの仕業か...」





「...バリス...」



「まだ...そこにいるのか...お前ら...」


 
「決別だ。お互いを信じることができなかった。全世界の戦力がもうじき、この島に集結してしまう。それがどういうことか、わかっていない」



「自分たちには力がある。時間がある。選択肢がある。そう勘違いしてしまったことが...リヴァイ...あんたの過ちだ...まあ、俺の真意を話したところで...わかりっこないだろうがな...」



「なあ、エレン...俺たちにしか、わからないよな」



「この森を抜ければ、すぐお前の元だ...しかし、ちゃんと場所と時間を覚えているんだろうな。エレン」







「何だよぉお。もおおお。またかよぉおぉぉおおおお」





「どこだ? どこに行った? リヴァイ」
「お前の可愛い部下たちはどうした!? まさか殺したのか!? 可哀想に!!」



「枝...」
「必死だな。髭面野郎。お前は大人しく読書する以外なかったのに...」



「何で勘違いしちまったんだ。俺から逃げられるって。部下を巨人にしたからって、俺が仲間を殺せないと思ったのか?」



「俺たちがどれだけ仲間を殺してきたか知らねぇだろうに」







「よぉ、髭面。てめぇ、臭ぇし汚ねぇし、不細工じゃねぇか。クソが。まあ...殺しゃしねぇから安心しろよ。すぐにはな」



「知っての通りザックレー総統が殺された今、兵団内やこの壁内の情勢は不安定な状況にある。だが貴様ら訓練兵には関係のないことだ。109期訓練兵団は予定通り巨人襲撃時のシガンシナ区防衛訓練を行う」



「わかったのか?」
「は、はい」

「今さら剣で巨人のうなじを斬りつける練習なんてな...」
「もう巨人なんて襲ってこねぇだろ」
「敵は壁外の人間なんだぞ」
「それよか、もっと銃火器の訓練して『エルディア軍』を作らなきゃいけないって親父も言ってた」



「時代はとっくに変わったってのに、もう古いんだよ。シャーディス教官は」
「エルディアに希望があるとしたら、イェーガー派が国の実権を握ることだ」
「な...! スルマ...聞こえるぞ」
「でも、みんなそう思っているだろ?」
「みんなエレン・イェーガーにエルディアを導いてもらいたいはずだ。非情な決断も下せるような強い指導者に」



「...な!? ハンジ!?」
「お久しぶりです。教官殿。突然ですが、この兵団支部は我々が占拠しました。イェーガー派? とか言われている我々が」



「これより我々の指示に従い動いてもらいます」
「イェーガー派...」
「身の程をよくわきまえているようだな。フロック...銃口でも向けない限り貴様らのような小便小僧など誰も相手にしないと考えているのなら、それは確かだ」





「フロック!?」
「外した...とりあえず足でも撃って話を早くしようと思ったんですが...」
「話とは何だ」
「いや、あなたには関係ありません。頭の固さしか取り柄のない老人なんて不要なんですよ」



「これからは、訓練兵諸君!! 君たちの時代だ!!」



「我々イェーガー派は、現在滅亡の危機にあるエルディアを救うために心臓を捧げると誓った!! それはこの古い兵団組織のためではなく、この島に住む民のためにだ!! このまま時代遅れの兵団に従属していては、なす術もなく外の世界の敵に蹂躙されるのみだ!!」
「今、君たちに問う!! 君たちは何者だ!? 我らエルディアの指導者エレン・イェーガーと共に生きる者か!? それとも、ここにいるキース・シャーディスと共に古い慣習と心中する者か!?」



「エルディアの未来のために心臓を捧げます!!」



「よし! 君たちの覚悟を見せてもらおう! シャーディス教官を足腰立たなくなるまで痛めつけろ!!」
「...え」
「これこそが我々が淘汰すべき悪習そのものだ!! 粛清してみせよ!!それができない者は牢屋に入ってもらう!!」
「なッ...!?」



「いいかげんにしろフロック!! バカなマネはよせ!!」
「ハンジ。ヒヨッコ共が何人かかってきたところで相手にならん」



「よくやった。君たち全員を歓迎しよう」



「じゃあ...案内してもらいましょうか。ジークの拘留地まで...ハンジ団長...おい...行くぞ」



「目が覚めたか? オイ、待て。動くんじゃない。雷槍の信管を繋ぐワイヤーを、お前の首にくくってある。ヘタに動いたらお前は腹から爆発して少なくとも二つになるだろう」



「こうなると死なねぇってのも難儀だな...同情なんかしねぇが...」



「お、俺の...眼鏡は...どこ...だ?」
「あ? 知るかよ。もうお前に眼鏡なんか必要ねぇよ」



「いいぞ、ジーク。いい球を投げるようになったな」



「将来は野球選手になるか?」



「...だめだよ、クサヴァーさん。僕には...使命が...あるから」

★次回 「唯一の救い」