進撃の巨人   #64   宣戦布告






☆前のお話は → 「第60話 海の向こう側」 「第61話 闇夜の列車」 
         
         「第62話 希望の扉」   「第63話 手から手へ


★1期 → 「進撃の巨人 第 1話~第25話

★2期 → 「進撃の巨人 第26話~第37話

★3期 → 「進撃の巨人 第38話~第59話




「ずっと同じ夢を見るんだ。開拓地で首を吊ったおじさんの夢だ。何で首をくくる前に僕たちにあんな話をしたんだろうって...」
「そんなの、わかるわけないだろ」
「誰かに許してほしかったんでしょ。マンセルを置いて逃げた私たちに何か言えるわけないのにね」
「僕は...なぜかこう思うんだ。あのおじさんは、きっと誰かに...裁いてほしかったんじゃないかな」



「よう。4年ぶりだな。ライナー」
「えーと。あれ? おふたりは古い友人だと聞いたんですが...ですよね。クルーガーさん」
「ああ。お互い積もる話が多くてな...何から話せばいいか、わからないんだ」
(古い友人...まあ嘘ではないねw)



「ありえない...エレン」





「これはこれは。アズマビト家の皆様。わざわざ激励に? ...無様な顔でしょう。すっかり上がってしまいました」
「いいえ。あなた方は勇敢です。我々の一族はよく知ってますもの...健闘を祈りますよ」
「痛み入ります。キヨミ様」



「座れよライナー。ここはいい席だ。ステージの喧騒がよく聞こえる」



「この上の建物は普通の住居だ。ステージの裏側だが、多くの住民が幕が上がるのを楽しみにして待っている」



「このすぐ上でな...」



「あれ、クルーガーさん。手をケガしているんですか?」
「ああ。擦り傷だ...ライナー座れよ」



「では、僕は先に戻ってますね...」
「いいや、ファルコ。お前もここで話を聞くんだ」



「え?」
「ファルコ。言う通りにするんだ」



「さて、行きましょうか」



(会場を後にするキヨミ様。何気に怪しい?)



(右から2人目アニの父。その左隣ライナーの母)
「あら、お久しぶりです。レオンハートさん」
「ブラウンさん。あんたの息子を出迎えた時以来か...そういや、寝たきりだったフーバーさん、逝っちまったんだって?」
(フーバーさんはベルトルトの親ね)
「ええ。息子がすべてをマーレに捧げたことが誇りだと、いつもおっしゃっていました...きっと娘さんも立派に...」
「死んでねえよ。アニは生きてる。帰って来ると約束したんだ」



マガト「しかし、まさかこの収容区で宣戦布告を行うことになるとはな...」



「すごい。カルヴィ元帥まで来てるよ」
「マーレ軍の中枢が収容区にそろうなんて...」
「それに各国の大使や名家の数々」
「あとは全世界の主要な新聞社が全部ってところか」



ピーク「世界の中心にいる気分だね~」
コルト「すごいですね。タイバー家の力って」
ポルコ「同じエルディア人なのにな」



「始まった」
「ファルコとブラウンさんはまだかな」



「マーレの戦士よ。マガト隊長がお呼びだ」



「エレン...どうやって...何しにここに来た?...」
「お前と同じだよ...わからないか? お前と同じ...仕方がなかったってやつだ」
「おっと。幕が上がったようだ。聞こうぜ」



「昔話をしましょう。今からおよそ100年前。エルディア帝国は巨人の力で世界を支配していました」



「始祖ユミルの出現から今日に至るまでに現生の人類が三度絶滅しても足りないほどの命が巨人によって奪われたとされています。巨人によって途方もない数の民族や文化、その歴史が奪われてきたのです。その殺戮こそが人類史でありエルディア帝国の歩んだ歴史でした」



「そして敵のいなくなったエルディア帝国は同族同士で殺し合いを始めました。巨人大戦の始まりです。八つの巨人を持つ家が血を流し合ったのです」



「しかし、この状況に勝機を見いだしたマーレ人がいました。彼こそが英雄ヘーロス。彼の巧みな情報操作によりエルディア帝国は次々と同士討ちに倒れていきました」



「そして彼はタイバー家と手を組み、勝つことは不可能とされたフリッツ王さえも島に退かせることに成功したのです」



「しかしパラディ島に退いた王はいまだに力を持ったまま。世界を踏みつぶせるだけの幾千万もの巨人があの島に控えています。今現在、我々の世界がまだ踏みつぶされずに存在しているのは偶然である...巨人学会はそうとしか説明できません」



「我が祖国マーレはその脅威を排除すべく4体の巨人を島に送り込みましたが、返り討ちに終わり戻って来られたのは鎧の巨人のみ。つまり暗黒の人類史たるエルディア帝国はいまだ健在なのです」



「聞いたかライナー。あれが壁を破壊した理由だろ? ...お前たちは世界を救おうとした。そうなんだろ?」



「イェーガーはそのまま正門に行け」
「はーい」



「あなたをどこかで見たような気がする。どこの所属?」
「西のラクア基地だが招集を受け参加している...そしてエルディア人の無駄話につき合う気はない」
「それは残念...素敵な顎髭だと思ったのに...」
(ん? この怪しいデカい兵士って女性か?)



「あ、ピークさん」
「パンツァー隊。こんな日までお勤めご苦労」
「何をしている。行くぞ」
(ピークちゃん何か伝えたか?)



「どうした?」
「いや~車力の巨人と運命を共にする彼らとは絆が大事でね」



「今、その絆に亀裂入ってないか?」



「ここだ。入れ」
「マガト隊長はどこに...わあ~!」



(落とし穴~)



(何なんだこれは。何でブラウン副長があんなに怯えて...クルーガーさんは古い友人じゃないのか?)



(古い? 古いって何年前...4年以前なら知り合ったのはパラディ島? ...いや、そんなわけが...)
「ありえない...」
(だって、そんなこと...)



(前からだけど一時停止しないと読めない公開可能な情報w)



「さて、ここまで語った話は誰もが知る事実。ですが真実とは少々異なります。ここからは我々タイバー家が戦鎚の巨人と共に受け継いできた記憶...」



「その本当の真実を今回はじめて公表させていただきます」



「今からおよそ100年前。巨人大戦を終わらせたのはヘーロスでもタイバー家でもありませんでした。あの戦争を終結させ世界を救ったのはフリッツ王なのです。彼はエルディア帝国の残虐な歴史を嘆き同族同士の争いに疲れ果て何より虐げられ続けたマーレに心を痛めておられたのです」



「彼は始祖の巨人を継承すると同時にタイバー家と画策しひとりのマーレ人を英雄と称し活躍させました。名はヘーロス。そしてできる限りのエルディア国民を島に移し壁の門を閉ざしました。その際、安息を脅かせば幾千の巨人で報復すると言い残しました」



「しかしこれは真意ではありません。フリッツ王は自らの思想を引き継がせるために不戦の契りを生み出しました。これによりカール・フリッツの思想は代々受け継がれ今日まで島から巨人が攻めてくることはなかったのです。つまり世界を守っていたのは我々が忌むべき壁の王だと思っていたカール・フリッツの平和を願う心なのです」



「彼の目的は平和です。後にマーレが力をつけ王家の命や始祖の巨人を奪おうとするならそれを受け入れる。それほどまでにエルディア人の犯した罪は重く決して償うことはできない。ただしいずれ報復を受けるまでの間、壁の中の世界に争いのない束の間の楽園を享受したい。どうかそれだけは許してほしい。王は最後にそう言い残しました」
(あ、ウーリとケニーだね。このシーン好き #47 友人) 



(ざわつく会場)
「どういうことだ...これが事実なら...マーレやタイバー家が世界を救ったつてのはすべてフリッツ王のお膳立てだったってことか?...」
「本当に壁の王が世界を侵略することがないなら、パラディ島脅威論とは何だったのか...」

「そう。我々タイバー家は一族の安泰を条件にカール・フリッツと手を組みマーレにエルディアを売った。タイバー家とはありもしない名誉を貪る卑しいコソ泥にすぎない。私がこの場をもって偽りの栄誉と決別したのは、この世界が置かれている危険な状況を理解したからです」



「隊長。兵士たちが...呼びに向かった兵士共々姿を消しました」
「予備隊を動員し捜索しろ...始まったか...」



(からだ修復ちう)
「痛ってえなクソ。何だよこれは」
「戦士を拘束する仕掛けだろうね...古典的だけどこの狭さじゃ巨大化できない。ましてや二人じゃ...」
「ああ。最悪、圧死だ」
「あのノッポの兵士、何が目的だ?」
「わからない。でも、あの兵士どこかで...」



ヴィリー (そこで見ててくれ...)



(これが俺のけじめだ)

(ヴィリーがそう言ってるってことは、あの人が戦鎚か...とひとり言w)



「カール・フリッツは始祖の巨人の力で三重の壁を築きました。この壁は幾千万もの超大型巨人で創られており盾と矛として平和を守ってきました」



「しかし近年パラディ島内で反乱が起きました。フリッツ王の思想は淘汰され始祖の巨人はある者に奪われました。世界に再び危機が迫っています...平和への反逆者...その名はエレン・イェーガー!」



(はい、足を治してるこの人です)
「騙した...尊敬してたのに...ずっと騙してた...」
「悪いな、ファルコ。お前には助けられた」
「あの手紙...俺に届けさせたあの手紙は...?」
「家族宛ての手紙じゃなかったが仲間には届いた」
「ああ、そんな...まさか...」
「な...仲間だと!...」(ライナー)



「パラディ島の脅威とは、この超大型巨人群による襲撃、地鳴らしです。先ほど説明した通り王家の血筋は不戦の契りにより始祖の巨人を行使するることはない。しかし現在、始祖の巨人を身に宿すエレン・イェーガーは地鳴らしを発動させる可能性を秘めています。一度、地鳴らしが発動されてしまえば我々にできることはもうありません。人類はただ終末の足音に震え逃げまどうのみ。あらゆる都市や文明は踏み潰され文字通りすべては平らな地表と化すのです」



「その通りだ。ヴィリー・タイバーの言う通り俺は悪者だ。世界を滅ぼしちまうかもしれない。だが俺にもお前たちが悪者に見えた。あの日壁が破られ俺の故郷は巨人に蹂躙され目の前で母親が食われた...俺にはわからなかった...なぜだ? ライナー。なんで母さんはあの日、巨人に食われた?」
「それは俺たちが...あの日、壁を破壊したからだ...」



「なぜ壁を破壊した?」
「混乱に乗じて壁内に侵入し壁の王の出方をうかがうために...」
「その任務とは?」
「世界を救うことだ...」
「そうか...世界を救うためだったら、そりゃあ仕方ないよなあ...」
「あの時言ってたよな...『お前らができるだけ苦しんで死ぬように努力する』つて。そのために来たんだろ?」
「ああ、言ったっけ?そんなこと」
「えっ?」
「忘れてくれ。確かに俺は海の向こう側にあるものすべてが敵に見えた。そして今、海を渡って敵と同じ屋根の下で敵と同じ飯を食った。ライナー。お前と同じだよ。もちろんムカつくやつもいるし、いいやつもいる...海の外も壁の中も同じなんだ...」



「だがお前たちは壁の中にいるやつらは悪魔だと教えられた...まだ何も知らない子供がそう叩き込まれた。いったい何ができたよ。子供だったお前に...なあ、ライナー。お前ずっと苦しかっただろ」
「違う。違うんだエレン。俺はあの日...」



「マルセルが食われて...アニとベルトルトは作戦を中止して引き返そうとしたのに...俺はふたりを無理やり説得して作戦を続行させたんだ...俺は英雄になりたかった。誰かに尊敬されたかった...俺が悪いんだよ。お前の母親が巨人に食われたのは俺のせいだ。もう嫌なんだ自分が...俺を殺してくれ...」



「私はこの血を恨みました。他の誰よりもエルディア人の根絶を願いました...ですが、私は死にたくありません。それは、私がこの世に生まれてきてしまったからです。我々は国も人種も異なる者同士です。しかし強大な敵を前にした今こそひとつになる時なのです。だから死にたくないものは力を貸してほしい。どうか一緒に未来を生きてほしい。皆で力を合わせれば、どんな困難も乗り越えていけるはずです」



「やっぱり俺は、お前と同じだ。多分、生まれた時からこうなんだ」



「どうか私と共に力を合わせて、パラディ島の悪魔と戦ってほしい。私ヴィリー・タイバーはマーレ政府特使として今ここに宣言します!」





「俺は進み続ける。敵を駆逐するまで」









(キターーーー(*'▽')ーーー!!!)





★次回 『戦鎚の巨人』