夏目友人帳 陸 第8話 「いつかくる日」
☆前のお話は → 6期 1~7話あらすじまとめ
★5期はこちら →「夏目友人帳 伍」

学校帰りに参考書を買いに少し離れた町まで遠出した。帰りの駅のホームで手紙を拾った。

近くに座っていた男性に落としませんでしたかと聞くと。手紙は男性のもので、助かった。あんたが拾ってくれなければ気づかずなくすところだったと言った。高校生かと聞かれた夏目が2年と答えると男性は、じゃあ1こ下かと言い、あんたの学校まで連れて行ってくれないかと言い出した。
「この手紙の主に会いたいんだが、今どこの学校かもわからない。着いたら自力で捜す。頼めないか?」

ふたりで学校に向かう。ジッと見ているので何ですかと夏目が言うと、お人好しだなと思ってと男性。手紙の相手は幼なじみだと言った。
葵:「俺は葵。あんたは?」
夏目:「...夏目」
葵:「素直だな」
夏目:「いけませんか」
葵:「いや、ただ、俺の幼なじみは意地っ張りだったなと思ってさ」
葵はちょっと不思議な感じがする人だなと夏目は思った。

学校に着いて、うちの生徒ともめ事でも起こしたら張り倒しますよと夏目が言うと、そのマッチ棒みたいな腕で? 安心しろ、本当に捜しているだけだと葵。もっとも見つかったとしても、今さら...と言うと、俺はバカか、何をやっているんだと頭を抱えた。
夏目:「もしかして幼なじみって女子ですか?」
葵:「ああ...悪いか」
夏目:「いえ」

西村が校舎から出て来て、今帰りかと言うと、それよりお前、何ひとりでニヤニヤしてんだよと言われた。
夏目:『西村には見えない...妖怪か』
葵:「やっと気づいたか。あんたちょっと鈍いな」

夏目:「人だと勘違いしているときは指摘してくれ。あとで気づくと少し悲しくなるんだ」
葵:「そうか、それは悪かったな」
幼なじみの名前は園川香。確か高3になるはずだと葵。3年はわからないなあと夏目が言うと、たぶんあんたの学校にはいない。あんた程の人が同じ学校にいるなら、あいつだったらきっと接触してるはずだと言った。
葵:「香も見えるのさ。妖がね。と言っても波長の合う妖がたまに見えるってだけだ。俺のことは相性がいいのかガッツリ見えてたが。が、故あって縁を切ったのさ」
そうだ縁を切ったんだったと葵。あんな手紙ごときで動揺して危うく会いに行っちまうところだった。夏目に、声をかけてくれてありがとうと言うと葵は帰ろうとした。手紙には何が書いてあったんだと夏目が聞くと、これは手紙じゃないのさと葵。そこにニャンコ先生が来た。
先生:「お~い夏目。七辻屋の新作の中身は白あんらしいぞ」
葵:「わっ、大狸」

先生:「ん? なんだ、そのカラスっぽいガキは?」
葵:「白い狸は神域に近いお方だと兄者たちに聞いたことがある」
夏目:「葵さん落ち着いて。そしてよく見て、この生き物」

葵:「俺、いや私は、籠目岳で森守りの修行中の身」
先生:「籠目岳といえば超美味な酒の泉があると聞くが」
葵:「泉守も我が師ドウタカ様と門下の役目」
先生:「気に入った。うちで茶でも飲んでいくがいい」
そこに、ドウタカの小僧だと鳥妖怪が現れ、群れていないとは好機。日頃の恨みここで晴らさせてもらうと襲ってきた。

葵は、下がれと夏目の前に立ったが、ニャンコ先生が斑の姿になって追い払った。
斑:「フン、小物が」

先生:「騒がしいことだな。ま、森守など恨みも買いやすいだろうよ」
葵:「今のが白狸様の真のお姿」
先生:「ニャンコ先生だ」

葵:「追い返していただき、ありがとうございます。どうかお礼をさせてください」
夏目:「葵さん、信用しちゃダメ」

葵:「私は元々はカケイワ山の森に住んでいた鳥のような妖です」
先生:「確か隣町の向こうの山か」
葵:「はい。群れで育ったのですが羽をケガし群れは去りひとりになったのです。そんな頃でした。香に出会ったのは」

香:「あなた、いつも木の上にいるけど、この辺の子?」

「はじめは俺が妖だと気づいていなかったようだが」
香:「そっか。葵ちゃんは妖怪ってやつなのね。よかった。私、妖怪が見える力があって本当によかった」

「それからも変わらず森に来て人の世のことを話してくれた。数年が経ったある日、一度だけ町へ行った。あいつが住む町を見てみたくなったんだ。そして気づいた。中学にもなって森に足しげく通ったり友人との約束や関係より俺と会うことを優先する香の行動は周りから見れば奇異で変わり者なんだと。そうだろう」
「離れるべきだとわかった。しかし、次こそは次こそはと思っているうち、香が中学2年になった頃、俺に好意を寄せてくるように...」

先生:「んで、逃げたというわけか」
葵:「ええ、恥ずかしながら。共に生きるには無理がある。そのうち俺と香との時間がズレ始める。妖に惹かれている間は人間の恋人もできないだろう。それは不運だ」

それで踏ん切りがついたと葵。香との縁を切りドウタカの門下に入った。妖力が強い方だから兄者たちから見込まれているんだ。修行に夢中で最近まで香のことをすっかり忘れていたくらいだと言った。夏目には、香のことを忘れるために修行に打ち込んでいると言っているように見えた。

ニャンコ先生が、なんだその封筒は。中を見せろと言った。開けてみると『寿』

結婚式の招待状。しかも3日後。でも高校生で結婚て、あまりないような。
夏目:「先生、香さんてもしかして、ものすごく年上の人なんじゃ...」
先生:「ああ、この手紙だって、いつ送られたものか」

葵:「それは廃屋のポストに入っていたんだ。香との連絡用で使ってた。縁を切ると決めてからは一度も見に行かなかったが、でも修行も落ち着いてきて、ふと気まぐれに立ち寄ってのぞいてみたんだ。読む気はなかったけど一番上の真新しい封書だけは、どうしても気になって開けてしまった」

招待状と一緒に手紙が入っていた。葵さんは人の字が読めるの?と夏目が聞くと葵は、ああ、あいつにと答えた。
アオイちゃん、げんきですか?
わたしはもうだいじょうぶです。
わたしをたいせつにしてくれるひとと、
であうことができました。
だからもう、アオイちゃんをまちません。
てがみもこれがさいごです。
ほんとうに わたしのことをわすれられるなら、
せめて、おめでとうくらいは、いいにきてください。

葵:「笑ってくれていい。香のためじゃない。俺のために来た。きっちり祝福して今度こそ忘れようと...悪かったな夏目。世話になった...」
夏目:「捜そう、葵さん。葵さんのためじゃない。俺が会ってみたいんだ」
葵:「そうだな。これが最後だ」

西村:「園川香? ああ、うちの塾に同じ名前の人いるぜ。1こ上だし学校違うから話したことないけど」
夏目:「西村、その人、近々結婚する?」
西村:「はあ? 結婚?」

放課後、塾に行くという西村に同行して香に会わせてもらうことにした。ニャンコ先生もいつの間にかついて来ていた。

西村に教えてもらって声をかけた香は普通の女子高生のようだった。が、葵の名を出すと豹変。

香:「葵ちゃんとどこで会ったの? 君、ひょっとして妖が? まさか今、葵ちゃんも近くに来てる? ねえ...」

俺が確認しに来ただけで葵はここには来ていないと言うと、ほんとに葵ちゃん?と香。廃屋のポストに結婚式の招待状を入れましたかと聞くと、よし、かかったと言った。
香:「罠なのよ、あの招待状。もう一度、葵ちゃんと会うための。いえ、捕まえるための罠なの」

葵ちゃんと初めて会ったのは、ずっと小さい頃だった。
香:「ねえねえ、一緒に遊ばない? アメあげる」
葵:「いらない。下にはヘビや犬がいるから、あまり下りるなってみんなが言ってた」
香:「みんな? みんなって、あなたいつもひとりじゃない」
それ以来、どんなに声をかけても反応してくれなくなった。きっと傷つけることを言ったんだ。今日こそ謝って仲良くなるんだと出かけた。葵の背に羽があった。綺麗... 葵は木の上から飛ぼうとしているようだった。

香:「ダメ、何やってるの。危ないから下りなさい。そんなオモチャの羽で飛べるわけないでしょ」
葵:「侮辱したな、バカ女。上等だ。決闘だ」

香:「人が心配してるのに。かかってこい...」

葵が木から下りてきてふたりはケンカ。

こんなの外しなさいと香が羽を殴ると葵は倒れてしまった。見ると葵の羽は本物で傷ついていた。

香:「大変、どうしよう。ごめんね、痛い? ...ごめん、ごめんね私、仲良くなりたくて...」
葵:「お前は優しいな。俺なんて、ほっといてよかったのに...」

葵:「元々ケガしてたんだ。お前のせいじゃない。それに傷なんていつかは治るものなんだって、みんな言ってた」
それから、だんだん遊んでくれるようになって、みんなの話もしなくなって...

香:「ねえ、一週間もどこに行ってたの? 花火大会、一緒に観たかったのに」
葵:「ああ、隣山からチラチラ見えたぜ」
香:「何それ、腹立つ。ポストにメモ入れといたのに。もう」
葵:「香、そういうのの相手は俺じゃなくていいんだぜ」

葵:「お前にはお前の生きるべき場所があるはずだ」
香:「何言い出すの...葵ちゃんは私が嫌いになったの? だったら仕方ないけど...」
香:「葵ちゃんこそ、まだわからないの? 私はね、葵ちゃんと、ずっといたいの。だって、だって私はずっと、ずっと...」
それっきり、その日から消えちゃったの。何も言わずに。ひどすぎない? と夏目に話す香。もう一度葵に会いたいから招待状が罠だというとこは黙っていてくれと言った。
香:「たぶんこれが最後の賭けなの。ボコボコにするにしろ説得するにしろ捕まえる。もう一度会えたら...私に心が残っていたなら、もう離さないの」

夏目:「すごいな、香さんて」
先生:「恐ろしいやつだ」
夏目:「人に惹かれる妖をいっぱい見てきたけど、みんな去って行ったよ。先生、香さんの作戦うまくいくかな」
先生:「さあな」
夏目が家に戻ると葵が、昼間ドウタカの兄者たちが心配して様子を見に来たと話す。用を済ませて帰って来い、待っていると言われたと。
葵:「夏目、ちょっと付き合ってくれないか」

葵:「もうここに来ることはない。応えられない俺が目を通すことはできないが残しては行けない」




夏目:『きっと、きっとうまくいくよ。香さん...』

夏目:「突き当たって右が式場だ。ほら早く」

葵:「あんた、何か隠してないか?」
夏目:「葵さんが素直になってくれたらいいなと思ってさ」
葵:「何をわけのわからんことを。俺は幸せそうに笑うあいつを見れたらそれでいい。そしたらきっと、どこへでも行ける」

この前はよくもやってくれたなと鳥妖怪が仲間を連れて来た。

夏目に下がれと言う葵に、下がるのはお前もだと斑。だが斑の光は鳥どもにはあまり効かないようだった。

葵が羽を出して戦おうとすると、夏目がパンチで鳥妖怪を攻撃した。
夏目:「ここは何とかするから、葵さんは早く行ってくれ。もう戻れないなら、きちんと別れを。やっぱり忘れられなかったら、そう伝えればいい」
『行けばきっとわかる。会えばきっと本当の気持ちがわかるよ。葵さん』

葵:「間違えたのかな」

葵:「香、お前、結婚は?」

葵:「離せ、バカ女」
香:「離さないわよ。離すもんか、二度と」
香:「もう逃げないで話をしようよ。妖でも葵ちゃんがいい。葵ちゃん、葵ちゃん...」

香:「そばにいて...」


葵:「きっとあとで、もっと泣くことになるのに」
香:「そんなことない。私がきっとそんなの、追い払ってやるわ」

葵:「わかってないな香。だから嫌なんだ。だから...」



夏目:「ごめんな葵さん。俺、本当は招待状のことを...」
葵:「いいさ。笑ってくれていいんだぜ。決意を通せなかったやつだって」
夏目:「葵さんには悪いけど、俺は何だか嬉しいよ」

葵:「これ香から、あんたに礼だって」
先生:「おお、それは七辻屋期間限定のおはぎの包み」
葵:「ええ。人の作るものの味を覚えると面倒です。ご苦労されますね。ニャンコ師匠も」
先生:「アホめ~感傷などまだまだガキだな。私は面白おかしく暇つぶしを楽しんでおるのだ」

葵:「では私はこれで。ドウタカ様に挨拶に行ってきます」
先生:「やりたいように生きるがよい。出会ってしまったのならば」

葵:「はい。夏目、またな」
夏目:『葵さんの言った「泣くことになるだろう」は、いったいどちらのことだろうとふと思った』

『俺もいつか、別れに怯えることより、一緒にいられることを思えるようになれるだろうか』
夏目:「ああ、またな」
☆次回 「ながれゆくは」
【感想】
ちょっとビックリ。人と妖の恋の話だから悲しい結末かなと思ってた。ハッピーエンドでよかった。まあ人と妖じゃ寿命も違うだろうし、見えなくなるってこともあるかもだし、あとでもっと泣くことになるのかと思うけど、いつかくる日に怯えるのではなく、ふたりの意志で今、一緒にいられる幸せを選べたのは素敵なことだと思う。
ニャンコ先生が今回はすごく働いたし、ほんとに先生していたね。自分とも重ねていたんだろうか。「やりたいように生きるがよい。出会ってしまったのならば」って言葉、いいね。
